インスタントフィクション 400文字の物語 Ⅰ

一言革命「100万円しか貰えない」

　老政治家は議長であった。
　いつもの通り議会中に舟を漕いでいると、議長に発言を求める展開になっていた。
　議員の給与に関する話題であって議長は私見を論じ始めた。

「議長になっても100万円しか貰えない。上場企業の社長なんかは月に1億貰っている。それなら議席を増やしても罰は当たらない」
　
　議会でこの話は流されたのだが、マスコミとＳＮＳにも話が流れた。
　
　議長が妻に朝食を作らせている時、日本の至る所で暴動が起きた。雪の様に積もった多くの不満が遂に雪崩となって押し寄せたのだ。
　
　老人や金持ち達が襲われた。
　閣僚も殺され、首相も死んだ。
　議長の家にも若者たちが押し寄せて、議長の腹をナイフで刺した。
　
　激痛と共に目覚める議長。全ては夢であったのだ。
　
　失言はせぬと決意した議長。
　しかしまた同じ発言をしてしまった。
　
　老政治家の失言は日本で革命を起こすため、運命的に発動された。
　日本はもう、破壊しなければ再生しない。歴史はそう判断したのだ。