死後の世界も生きづらい?

蓮見 七月

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悟の世界

サトル。Ⅱ

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「折角だから最初から話そうか 僕が死を選んだところから これについては本当に謝らないといけないね」

サトルは悲しげな表情で話し始めた。

「僕達が元居た世界に僕の居場所は無いと思ったんだ もちろん君が居るから、そこは楽しかった でも、とても生き辛かった 僕には右へ倣えが難しかった 出る杭が打たれる風潮も苦手だった だから孤独を感じていたんだ そんな寂しい社会に生きていても、希望なんて無いんじゃないかって。将来を悲観していたんだね。 そして遂に、限界が来たと思ってしまったんだ。 それで死んだ」

ミノルは彼の”死”を思い出し悲しくなった。死後の世界で今、彼は生きていると言うのに、やはり親友の彼の”死”の話しは悲しかった。しかし、詳細に聴かなければならなかった。

「しかしサトル、お前は微笑んで死んだ そこがずっと不思議だった 死んだ方がマシだと思って逝ったんじゃないかと俺は2年間、悩み続けた」

サトルが応答する。

「本当に悪かったよ でも、僕が胸にハサミを突き刺したとき、この世界が見えたんだ 僕はこの世界に希望を抱いた 君がファンタジー小説に希望を抱くのと同じかな それで、死ぬのも一興だ。 そう思ったら微笑んで死んでいたんだ」

ミノルは渋々納得せざるを得なかった。過ぎた現実をやり直すことはできない。アイコンタクトで続きを促した。

「そして、この世界に降って来たんだ これも君と同じだよ そして知っていると思うけど、ナオミさんに助けてもらった そこで信念ある、娼婦との出会いもあった 僕にとっては幸運だった この世界で会う人が、元の世界で言う社会から軽んじられている人だったんだから しかもナオミちゃんのお母さんは信念を持って働いていた そんな社会に魅力を感じた でも、話を聴くとまだまだナオミちゃんのお母さんのような人は少なかったらしい その事実は僕を落胆させた」

ミノルはサトルがナオミの母と会った事が決定打となってこの世界で生きることを決めたのではないのだと思った。

それにまだ、ユタカに会っていない。 サトルは続けた。

「しばらくはナオミさんたちにお世話になったよ そしてこの世界で生活した 今から2年前だから、ホームレスものさばり、ケンも荒れていたし、精神疾患の先生なんかこの世界で死のうとしていたよ このこともまた僕を落胆させたよ この世界にも希望は無いのかと思った。結局はこの”死後の世界”でも生きづらいのだと思った。 もう一度死のうかと思い始めていた。 でも、一つの出会いが僕を徐々に変えてくれることになるんだ」

ミノルはそれがユタカだとすぐに分かった。遂にサトルがこの世界で生きようと思い始めたきっかけが分かる。そう思うと緊張した。

「ユタカと会ったんだ その時、僕は富裕層の多い隣町に出かけていた そこでユタカは花を売っていたんだ 耳の聞こえない彼女がどうやって花を売っていたと思う?」

いわゆる、ろう者と今日はじめて会ったミノルには想像できなかった。

サトルが続ける。

「手話と筆談で必死に売ってたんだよ 生活費を稼ぐためだね この世界にはいわゆる、障がい者を保護する制度は無いからね 自分の力で生きようとしていたんだよ 僕は感動した 僕もろう者と出会ったのは、初めてだったから特別驚いた 自分の力、知恵を出して、自力で生きていたんだ そんな彼女を見て僕は、自分が如何に矮小な人間か思い知った」

サトルの顔が徐々に真剣になっていった。

「僕はただ、世の中を悲観していただけだった 世の中が悪いのだと思って、何もしなかったし、しようとも思わなかった、厭世家を気取って、自分で生きるのを諦めてしまったんだ。本当はきっと、ユタカのようにやり方次第で僕にも居場所はあったんだよ」

ミノルはサトルが元の世界でのことを反省しているのに驚いた。彼があの元の世界で、自分で何かしようと思っただなんて。しかし、それは思っただけに過ぎない。この後、彼はどうしたのだろう?そう思った。

「僕も、ユタカのようにやり方次第、工夫次第で、自分の力を使って生きて行きたいと思ったんだ だから、彼女に話しかけた 最初はさっきの君のようにどう接していいか分からなかったから筆談だった けれど、しばらくすると手話でやり取りできるようになったよ それで、二人で花を売り始めた。それがこの世界で初めて生き始めた瞬間だったと思う。自分で考え、感じ、行動し、責任を取る。僕は人生で、いや、この”死後の世界”にまで来て、やっと生きる事ができたんだ」

サトルの話は続いた。
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