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第二章 まさかのんびり生活からの……地獄!?

利用できるもんは利用するのが当たり前

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「さて……今からユトには『魔力測定』と『属性審査 』をしてもらう」

「……今から?」

 朝食が食べ終わり、父さんは俺に対してそう言う。

 どうやら、母さんとも話は進めてあったようで、母さんからも……

「えぇ、一応準備はしてあるから、今からここで始めるのよ」

 と、優しい声で言われた。

 俺を不安にさせないためだろう。

「ねぇーねぇー」

 すると、ユリが頭を傾げながら聞いてくる。

「兄さま、まりょくそくてい……ぞくせい……何とかって言うの、なにー?」

 どうやら、父さんが言ってたことが気になったようだ。

 興味を持つことは大切だ。

「魔力測定と属性審査だよ」

 俺はユリの頭を撫でながらそう言う。

 魔力測定、それは人の体内にある心臓から血液と共に流れ込まれるもう一つのエネルギー『魔力』という不思議な力をどれだけ所持しているかを調べる透明な水晶玉だ。

 それは五歳になると行われる儀式的なものだ。

 ちなみに大体の五歳の平均魔力量は『1000』。

 俺の魔力は……実質『無限』。

 これをどう隠すか、それはもう決めてある。

 属性審査はこれとはまた別であり、透明な水晶玉に血を垂らす。

 すると、その血の持ち主の適正属性が水晶玉が表す次々の色で判別できる。

 最後に、色では判別できない特殊属性を持つ者は、文字として伝えられる。

 基本属性は炎、水、雷、風、氷、地、闇、光。

 特殊属性は時、空間、聖、邪、無、創造、破壊となる。

 特殊属性に関しては、この世界でも数百人ぐらいしか持ってなく、扱えるのは一握りの者たち。

 魔法の強さは初級→中級→上級→最上級→神級→禁忌→終焉で決まっている。

 と言っても、魔王や勇者でもギリギリ禁忌魔法を使えるぐらい。

 予測だが、魔王と勇者が協力でもしなければ、終焉魔法なんてものは使えないだろう。

 終焉だぜ? 名前的に絶対世界滅ぼせるだろ。

「ユリも五歳になったらやるんだから」

「兄さまと一緒?」

「あぁ、一緒のを受けるんだ」

「えへへ~」

 何処でニヤけることがあったのかは分からないが、可愛いから良き良き。

 俺は顔が緩まないようにユリを撫でる。

「ガグラ様、お持ちしました」

「お、きたか」

 すると、執事のセバスが水晶玉を二つ持ってリビングの中へと入ってくる。

 テーブルの上へと置くと、水晶玉はまるで固定でもされているかのように転がらず、ピタっと止まる。

 なんだ、マジックか?

 お、ちなみにガグラってのは俺の父の名前だ。

「ほれ、ユトよ測ってみなさい」

「触ればいい?」

「あぁ」

 まずは魔力測定の水晶玉に触れる。

「ふむ……5000とは平均魔力の五倍だ、さすがは俺とマリアの息子だ!」

 父さんは俺の頭をガシガシ撫で、笑顔になる。

 やはり、自分の息子に素質があれば親は嬉しいものなのか。

 前世の俺でも、こんな風に撫でられたことはないな。

「あら、やっぱりユトは天才ね~」

 母さんも微笑んでいる。

「兄さま、てんさい~!」

 手をパチパチして喜ぶユリ。

 やだ、やっぱり俺の妹天使すぎない?

 それと、みんなも気になっているだろう。

 どうやって、無限の魔力を持つ俺が、ここまで魔力を抑えられたのかをだ。

 簡単な話だ、水晶玉の性質を利用したんだよ。

 この水晶玉は本で見た通り、俺の魔力をほんの僅かだけ吸い取り、その魔力を元に俺の魔力量を予測した。

 だから、その魔力の質を最大まで下げた魔力を、水晶玉にそれだけを吸い取らせた。

 その結果、その質が最大まで下がった魔力を水晶玉は、俺の中にある魔力を予測してあんな数字になった。

 つまりだ、質さえ下げれば魔力測定の水晶玉を自由自在に操れる。

 簡単に創造魔法を使って魔力制御をするブレスレットとかネックレスを創った方が良かったが、家族や使用人に見つかった時の説明がめんどくさい。

「ふむ、次は……」

 そういや、俺は自分の属性に関しては教えられていないな。

 まだ2歳の時、自分の適正属性の一つは分かった。

 偶然、俺は家族の目の前で、雷魔法を発動させていた。

 だから、父さんも母さんもこのことは知っている。

「適正属性か……雷は確実だな」

「えぇ、うちの子ですもの……その他に何を持ってるんでしょうね」

 親二人はワクワクしながら、俺を見ている。

 不意に、俺の中の何かが警告を出す。

 なんだ、人の……気配か?

「……マリア」

「あら、アナタも気づいた?」

 ふと、顔を上へと向ける。

 父さんと母さんが、真剣な顔で外を見ていた。

 どうやら、俺と同時に二人も気づいたらしい。

 何か気配察知スキルを持ってるのだろうか?

 俺はまだそのスキルは持ってないため、ただの勘で気づいたのだろう。

「……俺が行こう」

 父さんは母さんにそう言い、中庭へと出る。

「……母さん、どうしたの?」

 大方、攻撃的な来客だろうな。

 俺は何も知らない風に、そう尋ねる。

「ふふ、ユト……パパの勇敢な姿を見ていなさい。何故……あの人が『雷王神』と呼ばれているのか、分かるわよ」

「らいおうしん?」

 ユリは首を傾げる。

 ……え、何その厨二病的な名前、初耳なんだけど。

 ていうか、中学生とかが考えそうな単純なネーミングセンスだなおい。

「そろそろ出てきてくれたら嬉しいんだが……な!」

 すると、言葉が言い終わると同時。

 父さんを中心に、風が巻き起こる。

「魔法……じゃない!?」

 一応、わざとらしく演技をしてみる。

「あの人のスキル『威圧』は鍛えすぎて、あんな風に周りにまだ影響するのよ」

 なんだよ、鍛えすぎてるって。

 どっかの鍛えすぎてる未来予知できた巨人じゃないんだから。

「夜までここで待機するつもりが……すぐにバレてしまうとは」

 まるで最初からそこに居たかのように、父さんから10メートル離れた場所に、一人の……魔族がいた。

「はっ、だったら……もう少し鍛えてから来た方が良かったな、魔族……!」

 白く長い髪に、紳士的な顔立ち、身の整った服装。

 まるで、ロンドンの殺人鬼を思い出す容姿だ。

 俺、あぁいう人好きなんだけどな。

 父さんは殺気を飛ばしながら、右手に……あれ、いつの間に剣なんか持ってたの?

「おや、それが……貴方の『相棒』ですか?」

 魔族は、ニヤッと笑いながら小さなナイフを取り出す。

「アンタの『相棒』も、中々似合ってるぜ」

 そして……戦闘は唐突に始まる。
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