偉大なる父親

変色したハムカツ

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モッキンバード

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 パトカーが止まっている、なにか家であったに違いない。私はそう気づき急いで家まで走る。パトカーの近くには二人の警察官がいた。

「おい、民間人は立ち入るな!」

 そう言って警察官が私を制止しようとする。私はなにがなにかわからず叫んでしまう。

「私はこの家の父親なんだ、なにがあったんだ!」

 息を絶え絶えに私は叫んだ。警察官は私に落ち着いてくれという。落ち着けるものか、家に警察が来てるんだ。

「わ、わかった、なにがあった教えてくれ!」

 深呼吸をしてゆっくりと気持ちを整理する。しかし、焦りや不安を完全に取り除けない。ひとまず警察官から話を聞かなければと思い、はやる気持ちを抑える。

「とても申し上げにくいのですが…」

 バツが悪そうに警察官は帽子のつばをつかみ深く被り直したあとに口を開く。

「あなたの奥さんと娘さんは殺害されました…」

 頭をなにかとてつもなく硬いもので殴られたような感触が走った。そして、その場に無意識的に膝を落とす。今の状況をあまり理解できないまま私は言葉を絞り出す。

「ど、どういうことですか?妻と娘が死んだ?」
 
 警察官は申し訳なさそうにこちらを見たあとに続ける。

「我々が駆けつけたときには、あなたの家族は殺されていました」

 頭が遅れて理解した現実を私は受け入れることはできない。次の瞬間、怒りと悲しみで混濁した言葉を叫んでいた。

「嘘だろ!アンナとエレナが死んだ?嘘だと言ってくれ!頼む…」

 警察官は黙ってしまった。私は警察官のエリをつかむ。すると、他の警察官が急いで私を取り押さえた。

「落ち着け、落ち着くんだ!」

 警察官は大声を出しながら私を羽交はがい締めする。私は三人の警察官におさえられて警察署に連行された。

「…以上が我々が現状説明できる事件の内容です」

 一時的に落ち着いた私は目の前に座る警察官から警察署内で説明を受けた。いまだにこの状況を現実だとは信じることが出来ない。

「なにか質問はありますか?」

 私は今できる最大限の思考を使い警察官に質問する。

「犯人は捕まったんですか…?」

 それを聞かれた警察官は下唇を噛み締めた。とても悔しそうな様子だ。

「犯人はわかりません、おそらく逮捕も困難でしょう」

 私は込み上げてくる涙をおさえて震えた声で警察官を問いただす。どういうことだ、なぜ捕まえれないんだと。

「犯人はおそらく移民です。そして、おそらく不法移民」

 警察官が言うにはこの国には移民政策によって千万を超える数の移民がいる。そのうち政府が認識していない不法移民がおり、不法移民が犯罪を犯しても正確な情報がないため、逮捕することが困難のようだ。

「それじゃあ、このまま泣き寝入りしろと言うのですか⁉︎」

 私は警察官にやり場のない怒りをぶつける。どこかで生きている犯人に罰を与えさせることが出来ないのかと怒号を飛ばす。警察官は終始、申し訳なさそうにしていた。本来なら彼らにはなにも罪はないのだ。ただ、職務を全うしているだけなのだ。

 しばらく怒鳴ると私の怒りは風船のようにしぼみ、悲しさが私の胸を刺した。どうしようもない起きてしまった出来事と己の無力さに私は立ち尽くしてしまった。けれど、こうしている暇はない警察が保護したという息子のエミールを迎えに行かねばいけない。よろよろ私はエミールのいる部屋へ向かった。

「おとうさん…」

 エミールはよほど怖い思いをしたのか声が怯えていた。二年越しに会う我が子は少しだけ大きくなっていた。

「無事だったんだな…エミール」

 私はエミールを抱きしめる。エミールも細く短い腕で私を抱き返した。エミールは少し震えて泣き出してしまった。私もつられて涙を流す。妻と娘を失った悲しみと二年の年月を超えて息子のあった喜びで私の心はかき混ぜられた。

 私とエミールは警察が用意したホテルで一晩泊まる。それで、明日からしばらくは妻の母親の家に居させてもらうことになった。

「怖くないかエミール」

 私は強がってか、それとも父親としてかエミールに聞く。ベッドのなかでエミールは呟くように話す。

「こわくないよ、だっておとうさんがいるもん」

 息子の言葉でどうにかおさえていた涙がこぼれてしまう。父親として強くあることができない自分を情けないと思ってしまった。少しでも今はこの子のそばにいてあげたいと思った。

「おとうさんないてるの?」

 エミールは私に心配の言葉をかける。私は右手で涙をぬぐう。

「泣いてないさ、父さんは強いんだ」

 息子を安心させたいという気持ちで私は強がった言葉を言う。しかし、エミールはその嘘を見抜いていた」

「うそだよ、おとうさんないてるよ」

 エミールは私の顔を指さしてそう言った。

「…」

 私は黙ってしまう。なんて息子に言えばいいかわからないからだ。

「ぼくはだいじょうぶだから、しんぱいしないで」

 えみーるはそう続ける。幼いながらも大きく成長している息子に驚いた。そして、この年齢で自分の母親と永遠に会うことのない息子の人生に酷く悲しみを覚えた。

「ありがとう、エミール」

 完全に塞いでいたものがなくなってしまった私は泣き出してしまう。大人なのに子どものように泣いてしまう。そうすると私の隣で眠るエミールは私に近づいて私の頭を撫でた。

「こうするとね、げんきがでるんだっておねえちゃんがいってたの」

 私はうつ伏せていた顔を息子の顔に向けた。その顔は今にも泣き出しそうだった。けれど、唇を噛み締めてエミールは泣かないようにしていた。たった四歳の子どもが父親を心配させぬようにと自分の涙をこらえていたのだ。私は申し訳なさと悲しみで胸がいっぱいになり、エミールを抱き寄せた。

「すまない、お父さんがそばにいるからな、だから心配しないでくれ」

 エミールは精一杯の力で私を抱きしめ返した。
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