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第一話 生ける玉座
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玉座が燃えている。
黒煙をあげる炎が玉座を燃やす。焼かれた屍体が絨毯のように広がる玉座の間には、焦げた死肉の煤と、むせ返るような死肉の焼ける臭いが充満し、そして新たな戦いで飛び散った鮮血と臓物が無造作に積み重なる。
今や王城にかつての栄華は微塵もない。焼け焦げた廃城の石壁は瓦礫と化し、崩れた天井から覗く空からは、しとしとと血の雨が降る。
燃える玉座には誰もいない。その無人となった玉座の前に、一人の騎士が近づく。
まだ小刻みに動いていた肉塊をグレートメイスですり潰す騎士が、虚空を仰ぎ、玉座の前で膝をつく。
膝から崩れ落ちた〈鉄の騎士〉を、血の雨が赤く染める。面頬の閉じた騎士の兜は殴打痕に歪み、傷だらけの紋章が刻まれた甲冑は黒く焼け焦げ、手に握る血塗れのグレートメイスには、真新しい肉片と臓物がこびりついている。
膝をつく〈鉄の騎士〉は息も絶え絶えで上体を起こすと、玉座を見上げた。玉座は燃えている。そして兜の覗き穴の先、燃える玉座の向こうに、〈影の女王〉の姿が揺らめく。
どこからか、血に濡れた足音が聞こえてくる。〈影の女王〉とは別のそれを確かめようと〈鉄の騎士〉は頭を振るが、しかしその姿を捉える前に、〈鉄の騎士〉の眼前に鋭利な鎧通しが煌めき、そして刃がその眼球を刺し貫いた。
声にならない悲鳴が兜の中にこだまする。血塗れの面頬をかき毟る〈鉄の騎士〉の兜の覗き穴から、虚しく鮮血が噴き出る。
悶絶する騎士に呼応したかのように、玉座を燃やす炎が一際大きく燃え盛る。それはまるで生きているかのように蠢き、そして目を潰されもがき苦しむ〈鉄の騎士〉の頭上に降り注いだ。
かつて、〈呪いの雨〉とも〈祝福の雨〉とも呼ばれた未曾有の力の暴走により、ある王国が滅びた。王侯貴族も平民も、人々は老若男女等しく焼かれ、そして死に絶えた。
だが神の気まぐれか、運命のいたずらか、それとも単なる偶然か、焼かれてもなお死なぬ者たちがいた。
彼らは光に群がる羽虫のように、燃える王城の玉座を目指す──ある者は力を、ある者は復讐を、ある者は運命を求めて──火の魅せる幻想に踊るように。
焼かれた玉座に座る者は待ち続ける。血の雨が炎の罪を清める瞬間を。
炎をまとい、血を流す玉座。無数の死により築かれたその玉座は、生きている。
黒煙をあげる炎が玉座を燃やす。焼かれた屍体が絨毯のように広がる玉座の間には、焦げた死肉の煤と、むせ返るような死肉の焼ける臭いが充満し、そして新たな戦いで飛び散った鮮血と臓物が無造作に積み重なる。
今や王城にかつての栄華は微塵もない。焼け焦げた廃城の石壁は瓦礫と化し、崩れた天井から覗く空からは、しとしとと血の雨が降る。
燃える玉座には誰もいない。その無人となった玉座の前に、一人の騎士が近づく。
まだ小刻みに動いていた肉塊をグレートメイスですり潰す騎士が、虚空を仰ぎ、玉座の前で膝をつく。
膝から崩れ落ちた〈鉄の騎士〉を、血の雨が赤く染める。面頬の閉じた騎士の兜は殴打痕に歪み、傷だらけの紋章が刻まれた甲冑は黒く焼け焦げ、手に握る血塗れのグレートメイスには、真新しい肉片と臓物がこびりついている。
膝をつく〈鉄の騎士〉は息も絶え絶えで上体を起こすと、玉座を見上げた。玉座は燃えている。そして兜の覗き穴の先、燃える玉座の向こうに、〈影の女王〉の姿が揺らめく。
どこからか、血に濡れた足音が聞こえてくる。〈影の女王〉とは別のそれを確かめようと〈鉄の騎士〉は頭を振るが、しかしその姿を捉える前に、〈鉄の騎士〉の眼前に鋭利な鎧通しが煌めき、そして刃がその眼球を刺し貫いた。
声にならない悲鳴が兜の中にこだまする。血塗れの面頬をかき毟る〈鉄の騎士〉の兜の覗き穴から、虚しく鮮血が噴き出る。
悶絶する騎士に呼応したかのように、玉座を燃やす炎が一際大きく燃え盛る。それはまるで生きているかのように蠢き、そして目を潰されもがき苦しむ〈鉄の騎士〉の頭上に降り注いだ。
かつて、〈呪いの雨〉とも〈祝福の雨〉とも呼ばれた未曾有の力の暴走により、ある王国が滅びた。王侯貴族も平民も、人々は老若男女等しく焼かれ、そして死に絶えた。
だが神の気まぐれか、運命のいたずらか、それとも単なる偶然か、焼かれてもなお死なぬ者たちがいた。
彼らは光に群がる羽虫のように、燃える王城の玉座を目指す──ある者は力を、ある者は復讐を、ある者は運命を求めて──火の魅せる幻想に踊るように。
焼かれた玉座に座る者は待ち続ける。血の雨が炎の罪を清める瞬間を。
炎をまとい、血を流す玉座。無数の死により築かれたその玉座は、生きている。
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