アマドーラ帝国の雫

空うさぎ

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皇子レオナルシス

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「カタドール、見つけたぞ」
 瞬間移動を終えて、書斎の一角に佇んだまま、ノックをしたドアの向こう側にいる執事にレオナルシスは静かに告げた。
「左様でございますか…それは喜ばしいことでございます」

 落ち着いた声に安堵が混じる。
「ああ…」

 ドアを開けて部屋に入ってきた執事のカタドールは深く頭を下げた。
「本当に喜ばしいことでございます…」
  静かに頭を上げたカタドールは何やら急に方向を転換して、またドアに向き直る。
「皇子、只今、シャンパンをお持ち致しますので…」そう告げると直ぐに部屋を出ていった。

 幼き日より聞かされてきたアマドーラの雫の存在をこの身に感じることができた瞬間、気づけば迷いなく感じた場所に瞬間移動していた。
 場所は第3の都ルシア。
 100年に1度の雫…あの娘は全く状況を理解していない様子だったが、さぞや…驚いた事だろう。愛らしい紫色の瞳にロングゴールドの髪は雨に濡れてしっとりとしていた。
 
 一目見た瞬間から、懐かしいような安堵感と自分の体の一部でもあるかのような錯覚を覚えた。これ程影響力のある存在を今まで感じた事はない。
 ―これがよく聞く運命(さだめ)か?

 傘がほしいと言うので、私の外出用の黒傘を一本置いてきた。
 そこにアルカサンドラ家の家紋「ドラゴン アルカサンドラ」が印されていたとは…少々、計算外であったが。
 まあ、いい…いずれは分かる事だろう。

 冷静沈着で、何事にも動じないと言われている第1皇子レオナルシス カーラ アルカサンドラは珍しく、うっすらと目元を緩ませていた。
 私を怪しいと思いながらも、帝都アマドールの騎士と想像するとは…なかなか面白い。

 レオナルシスは満足そうに深呼吸をして、ソファーにもたれ掛かかると目を閉じた。久しぶりに500kmを超す瞬間移動は少しの疲労を感じた。

 とりあえず…あの娘があの石を身に付けている限り、私はその身に起きている事を感じ取る事ができる。また、あの石は私と繋がったことで本来の力を取り戻して、いついかなる時もあの娘を守るであろう。

 その夜、レオナルシスは何年かぶりに暖かな温もりを感じ、安眠を得る事ができたのだった。
      
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