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蜜月
ようやく本番
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三者面談にも来てくれなくて、先生がすげえ困ってたのは申し訳なかったな。それでも先生は「絶対に誰かが見てくれているから頑張りなさい」と行ってくれたっけ。それを真に受けた訳じゃあないけど、いつか母さんがオレを思い出した時に、がっかりさせないよう必死で受験を続けていたんだ。
それから……二年の半ばだったかな。塾の帰りに、母さんが知らない男と楽しそうに腕を組んで歩いているのを見て、さすがのオレも諦めた。
塾も学校も行かなくなって、でも暇だから街をブラついてたら、同じ学校だとか言って声かけて来た奴らがいて、いつの間にか連むようになった。その頃の事はあんまり覚えてないんだが、そいつらが集団万引きとかやってたのかな? オレがなんか気にくわなかったのか、警察に追われた時に囮にされたんだ。んで、警察に補導された。派手に逃げ回ったせいか、なんか大事になって大変な目に遭った。
ちょうど親の離婚話がまとまりかけてたらしいんだけど、オレが警察のお世話になったせいで白紙に戻ったと、母さんを激怒させた。父さん……というか夷川の家がオレを引き取るという条件だったらしいが、警察沙汰を起こすようなガキは引き取れんと、そちらも激怒したのだとか。オレが原因で離婚話は泥沼化したって訳だ。で、どっから聞いたのか問題児を放り込んでおける学校があるって知った両親は、折衷案としてオレを圏ガクへ放り込んだ。この三年でオレが無事に更正したら、晴れて父方に引き取られ離婚は成立するらしい……心底どうでもいいけどな。
「つまんない話してごめん」
ざっと話し終えて、オレは先輩に謝る。すると、頭をぐっと引き寄せられた。
「セイシュン。俺、絶対に赤点回避するから」
「いや、赤点回避なんて目標低すぎだろ。満点とるからって言い直せよ」
即座に訂正を入れると、先輩は飲み込めないと言いたげな顔をした。
「絶対に……五十点以上の点数を取るから」
「いや、それ一緒だからな。赤点回避と意味同じだぞ」
「いいんだ! 冬休みに学校に残れたらそれでいいんだ!」
先輩が拗ねてしまった。なんで自分の限界を最小に設定してしまうのか! オレとしては納得いかなかったが、つまらない話を長々としてしまった手前、それ以上は黙っておく事にした。
「絶対に楽しい冬休みにしような。いっぱい遊ぶぞ」
オレが黙ると、先輩は嬉しそうに小指を突きつけてきた。もちろん、その予定なので、オレは叩きつけるような勢いで小指を絡め返した。
先輩の生来の真面目さが発揮され、試験週間に入る前に遅れていた授業に追いついた。なんとか、試験対策も出来るとホッとしていると、何故か先輩が心配そうな顔でオレを見ていた。
「心配しなくても大丈夫だよ。基礎は十分に学べたはずだから、これで試験に向けて対策を立てられる。絶対に良い点数取れるよ」
無駄に心配している時間がもったいない。試験対策用に準備した課題を取り出しながら言うと、先輩は違うと首を振った。
「ここの所、ずっと俺の事ばかり見て貰ってただろう。もう十分だ。ここからは、セイシュンはセイシュンの勉強をしてくれ。お前だって試験があるんだからな」
自分の心配ではなく、オレの心配か。先輩の中に余裕が生まれているらしい。それは進歩でもあり、油断でもある。
「オレの試験対策は授業中に終わってるから問題ないよ」
「え?」
「授業中に完結してるから、試験の為に勉強する必要はないよ」
「え……え?」
違う言語で話され理解出来ない、みたいな顔をされた。
「だから、先輩はオレの心配なんかせず、自分の試験だけを考えてくれ。試験に向けては今からなんだぞ、この程度で気を緩めんな」
言うだけ言って、オレは先輩の試験対策を練る。今までの赤点答案を大事に取っておいた先輩に感謝だ。試験内容の傾向を知る重要な手がかりになる。図書室に過去の試験問題のアーカイブはなかったからな。
「セイシュンは化け物だな」
「なんでだよ。もう、いいから早く準備しろって」
遠い目で妙な事を言い出したので、せっついて鉛筆を持たせる。
「今日からは試験対策用の練習問題を解きまくってもらうからな」
大人しく机に向かう先輩の横で、オレは全力で三年の教師を丸裸にしていく。授業内容とこれまでの試験問題、あと参考書で良さげな問題をピックアップしていく作業は、実にやりがいがあった。
「先輩、五分考えて分からなかったら声かけて」
素直な先輩は、分からない所をうやむやにしないので、本人の苦手箇所もハッキリ分かり、対策が立てやすいのもありがたかった。
先輩と過ごす時間は濃厚で、オレは確かな手応えを感じていた。
そして、運命の試験週間に突入。
オレの方はいつも通りにこなしたが、先輩に全力だったので身内にまで手が回らず、一人(皆元)は全教科補習が確定してしまった。すまん。意外だったのはスバルで、オレのやらかした私塾で勉強する癖が付いたのか、ほぼ赤点を回避していたのは驚いた。
後で聞いた話だが、どうやらオレが地下牢に反省室にぶち込まれてから、寮長がスバルの勉強を見て下さったらしい。良いのか悪いのか分からんが、これによりますます寮長に頭が上がらなくなってしまったような気がするのは気のせいか……。
それから……二年の半ばだったかな。塾の帰りに、母さんが知らない男と楽しそうに腕を組んで歩いているのを見て、さすがのオレも諦めた。
塾も学校も行かなくなって、でも暇だから街をブラついてたら、同じ学校だとか言って声かけて来た奴らがいて、いつの間にか連むようになった。その頃の事はあんまり覚えてないんだが、そいつらが集団万引きとかやってたのかな? オレがなんか気にくわなかったのか、警察に追われた時に囮にされたんだ。んで、警察に補導された。派手に逃げ回ったせいか、なんか大事になって大変な目に遭った。
ちょうど親の離婚話がまとまりかけてたらしいんだけど、オレが警察のお世話になったせいで白紙に戻ったと、母さんを激怒させた。父さん……というか夷川の家がオレを引き取るという条件だったらしいが、警察沙汰を起こすようなガキは引き取れんと、そちらも激怒したのだとか。オレが原因で離婚話は泥沼化したって訳だ。で、どっから聞いたのか問題児を放り込んでおける学校があるって知った両親は、折衷案としてオレを圏ガクへ放り込んだ。この三年でオレが無事に更正したら、晴れて父方に引き取られ離婚は成立するらしい……心底どうでもいいけどな。
「つまんない話してごめん」
ざっと話し終えて、オレは先輩に謝る。すると、頭をぐっと引き寄せられた。
「セイシュン。俺、絶対に赤点回避するから」
「いや、赤点回避なんて目標低すぎだろ。満点とるからって言い直せよ」
即座に訂正を入れると、先輩は飲み込めないと言いたげな顔をした。
「絶対に……五十点以上の点数を取るから」
「いや、それ一緒だからな。赤点回避と意味同じだぞ」
「いいんだ! 冬休みに学校に残れたらそれでいいんだ!」
先輩が拗ねてしまった。なんで自分の限界を最小に設定してしまうのか! オレとしては納得いかなかったが、つまらない話を長々としてしまった手前、それ以上は黙っておく事にした。
「絶対に楽しい冬休みにしような。いっぱい遊ぶぞ」
オレが黙ると、先輩は嬉しそうに小指を突きつけてきた。もちろん、その予定なので、オレは叩きつけるような勢いで小指を絡め返した。
先輩の生来の真面目さが発揮され、試験週間に入る前に遅れていた授業に追いついた。なんとか、試験対策も出来るとホッとしていると、何故か先輩が心配そうな顔でオレを見ていた。
「心配しなくても大丈夫だよ。基礎は十分に学べたはずだから、これで試験に向けて対策を立てられる。絶対に良い点数取れるよ」
無駄に心配している時間がもったいない。試験対策用に準備した課題を取り出しながら言うと、先輩は違うと首を振った。
「ここの所、ずっと俺の事ばかり見て貰ってただろう。もう十分だ。ここからは、セイシュンはセイシュンの勉強をしてくれ。お前だって試験があるんだからな」
自分の心配ではなく、オレの心配か。先輩の中に余裕が生まれているらしい。それは進歩でもあり、油断でもある。
「オレの試験対策は授業中に終わってるから問題ないよ」
「え?」
「授業中に完結してるから、試験の為に勉強する必要はないよ」
「え……え?」
違う言語で話され理解出来ない、みたいな顔をされた。
「だから、先輩はオレの心配なんかせず、自分の試験だけを考えてくれ。試験に向けては今からなんだぞ、この程度で気を緩めんな」
言うだけ言って、オレは先輩の試験対策を練る。今までの赤点答案を大事に取っておいた先輩に感謝だ。試験内容の傾向を知る重要な手がかりになる。図書室に過去の試験問題のアーカイブはなかったからな。
「セイシュンは化け物だな」
「なんでだよ。もう、いいから早く準備しろって」
遠い目で妙な事を言い出したので、せっついて鉛筆を持たせる。
「今日からは試験対策用の練習問題を解きまくってもらうからな」
大人しく机に向かう先輩の横で、オレは全力で三年の教師を丸裸にしていく。授業内容とこれまでの試験問題、あと参考書で良さげな問題をピックアップしていく作業は、実にやりがいがあった。
「先輩、五分考えて分からなかったら声かけて」
素直な先輩は、分からない所をうやむやにしないので、本人の苦手箇所もハッキリ分かり、対策が立てやすいのもありがたかった。
先輩と過ごす時間は濃厚で、オレは確かな手応えを感じていた。
そして、運命の試験週間に突入。
オレの方はいつも通りにこなしたが、先輩に全力だったので身内にまで手が回らず、一人(皆元)は全教科補習が確定してしまった。すまん。意外だったのはスバルで、オレのやらかした私塾で勉強する癖が付いたのか、ほぼ赤点を回避していたのは驚いた。
後で聞いた話だが、どうやらオレが地下牢に反省室にぶち込まれてから、寮長がスバルの勉強を見て下さったらしい。良いのか悪いのか分からんが、これによりますます寮長に頭が上がらなくなってしまったような気がするのは気のせいか……。
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