転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

自己否定をしてやりました。

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「奇跡の力で人を癒やして殿方を誑かすお人のことでしょう?」

 私はユリア様の問いに率直に答えました。

「それになりたいと貴女は言うのね」

「えぇ、その通りでございます」

 聖女としてエイダンの旅に同行して、私から彼を奪うのです。あら、こうして改めて考えると実に倒錯的ですこと。私は私からエイダンを奪うのですね。

 思う所がないと申せば嘘になります。しかし、そんな些細なことが爆走する私のブレーキになれるはずもありません。

 なんせ、私、彼と結ばれる為ならばと、得体の知れないトカゲの紳士が寄越した心の臓をゴクリとやってしまったのですから。

 転生というか、乗っ取りですね。それすら許容出来てしまうくらい、その願いは切実なのでございます。

「確かに、マザーは女神の加護によって奇跡の力を行使出来るとされているわ。でも、それが本当かは眉唾よ。なんせ、彼女が加護を授かったのは八十年以上前の話でね、ここ数十年その力が使われた記録はないの」

「ま、お伽噺のようなもんさ。死人を蘇らすなんざ、神様のするこっちゃないね」

 サリー様が二本目のボトルに手を伸ばしながら口を挟んで参ります。

「世間で知られる聖女伝説は死者蘇生とセットで語られることが多いんだけど、教会に残っている資料によれば、死者に対する措置はどれも失敗に終わっているの。けれど、死にさえしていなければ、どんな状態の人間も復活させられたらしいわ」

 とても便利なお力でございます。是非とも頂きたく思います。

「けれど、女神の加護ってのが曖昧でね。そう語っているだけで、マザー自身のお力ではないかっていうのが教会のスタンスなのよ」

「なら、手っ取り早いですわね。早速、マザー様にそのお力を贈与して頂きましょう」

 パンと手を叩いて、さぁさ案内して下さいなと急かしますと、ユリア様は被っていた猫が逃げ出したのか「まだ話は終わってないよ」とどすの利いた声で制止しました。
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