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第10話。
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もう一つ言っておくと、紘一に小説は書けない。まず無理。人間を見切れないから……。俺はこのことも痛感するようになった。というより、俺や舞子のように、記憶の中で生きてきた人間だけが、小説や文章などを書ける、唯一の存在だと思うようになった。そして、俺にとって、小説家は、天職だと思えるようになった。俺自身、妻以外はどの人間の顔も同じに見える状況下で、付き合えるのは、舞子だけだと思えた。俺にとって、次なる悟りだ。これが、俺の出せる全部の結論かもしれない。記憶の中で生きてきた人間が、渾身で主張することだ。俺にとって、もう世間一般など、どうだっていい。自分の大切なものさえ、手元に確保できていれば、それでいい。そう思えてきた。このことに気付いたのは、『希望の家』の梅沢と話をしてからだ。俺の意識が悟りになり、全てを許すというより、投げ打つという風な意識になったのは、俺自身、大事なことだった。ここに至って、俺にとって、改めて言えるのは、全ての人間の顔が同じということだ。そして、信頼など、到底できないということも。
梅沢と形だけ話をしたことで、俺は世間一般の人間を投げ打つということを覚えた。必要でなければ、口を利く必要はないんだなと思えるようになった。俺が人が好過ぎたのだ。そう思えた。別に、こういったことは、人間、年を経て来れば、おのずと分かってくる。俺自身、大切なものだけ、手元に確保していようと思えるようになってきた。ここまで来れば、さっきも言った通り、人間の顔は全部同じに、歪んで見える。妻、舞子以外は。俺にとって、これでいいと思えた。俺が小説を書くのは、紘一や西川さん、梅沢のためじゃない。まず、自分のため。そして、次が、舞子のため。俺にとって、意識はここまで先鋭化した。もう、俺にとって、誰と会っても、楽しくない状況となるが、それはそれで構わない。俺にとって、これが結論だった。院長に話してもいいのだが、院長も人間なのだし、やはり、同じ顔に歪んで見えるだろう。でも、早くこういった状況にたどり着けて、よかった。俺にとって、再度強調する通り、これが結論だ。俺が小説を書くのは、動機が不明になるのだが、一つは自分のため。自分が、この世に生きた証を残すため。そうなる。俺にとって、ここまで来れば、大抵の人間の憂さも、どうだってよくなる。もう何もない。そう思えてくる。そして、これで完全に悟りだ。記憶の中で生きてきた経験が全て生きる。俺にとって、もう一回強調するように、どの人間と会っても、楽しくない状況となる。俺自身、これが出せる結論だ。また、これでいいのだった。人間不信じゃない。人間をよく見て、よく考えて、出した結論だ。俺の小説も、ここまで来れば、かなり深い内容のものとなる。そう思える。俺にとって、全てが同じ結論となるのだ。また、それでいいと思う。俺にとって、大切なものさえ、手元に確保しておいて、あとは投げ打つ――、それでいい。用のない人間とは口を利かない。俺の対人処世術が徹底してきたらしい。これで俺としては、もういいのだった。最高だ。これ以上ない。有り得ない。そう思える。繰り返すように、これが結論だ。(以下次号)
もう一つ言っておくと、紘一に小説は書けない。まず無理。人間を見切れないから……。俺はこのことも痛感するようになった。というより、俺や舞子のように、記憶の中で生きてきた人間だけが、小説や文章などを書ける、唯一の存在だと思うようになった。そして、俺にとって、小説家は、天職だと思えるようになった。俺自身、妻以外はどの人間の顔も同じに見える状況下で、付き合えるのは、舞子だけだと思えた。俺にとって、次なる悟りだ。これが、俺の出せる全部の結論かもしれない。記憶の中で生きてきた人間が、渾身で主張することだ。俺にとって、もう世間一般など、どうだっていい。自分の大切なものさえ、手元に確保できていれば、それでいい。そう思えてきた。このことに気付いたのは、『希望の家』の梅沢と話をしてからだ。俺の意識が悟りになり、全てを許すというより、投げ打つという風な意識になったのは、俺自身、大事なことだった。ここに至って、俺にとって、改めて言えるのは、全ての人間の顔が同じということだ。そして、信頼など、到底できないということも。
梅沢と形だけ話をしたことで、俺は世間一般の人間を投げ打つということを覚えた。必要でなければ、口を利く必要はないんだなと思えるようになった。俺が人が好過ぎたのだ。そう思えた。別に、こういったことは、人間、年を経て来れば、おのずと分かってくる。俺自身、大切なものだけ、手元に確保していようと思えるようになってきた。ここまで来れば、さっきも言った通り、人間の顔は全部同じに、歪んで見える。妻、舞子以外は。俺にとって、これでいいと思えた。俺が小説を書くのは、紘一や西川さん、梅沢のためじゃない。まず、自分のため。そして、次が、舞子のため。俺にとって、意識はここまで先鋭化した。もう、俺にとって、誰と会っても、楽しくない状況となるが、それはそれで構わない。俺にとって、これが結論だった。院長に話してもいいのだが、院長も人間なのだし、やはり、同じ顔に歪んで見えるだろう。でも、早くこういった状況にたどり着けて、よかった。俺にとって、再度強調する通り、これが結論だ。俺が小説を書くのは、動機が不明になるのだが、一つは自分のため。自分が、この世に生きた証を残すため。そうなる。俺にとって、ここまで来れば、大抵の人間の憂さも、どうだってよくなる。もう何もない。そう思えてくる。そして、これで完全に悟りだ。記憶の中で生きてきた経験が全て生きる。俺にとって、もう一回強調するように、どの人間と会っても、楽しくない状況となる。俺自身、これが出せる結論だ。また、これでいいのだった。人間不信じゃない。人間をよく見て、よく考えて、出した結論だ。俺の小説も、ここまで来れば、かなり深い内容のものとなる。そう思える。俺にとって、全てが同じ結論となるのだ。また、それでいいと思う。俺にとって、大切なものさえ、手元に確保しておいて、あとは投げ打つ――、それでいい。用のない人間とは口を利かない。俺の対人処世術が徹底してきたらしい。これで俺としては、もういいのだった。最高だ。これ以上ない。有り得ない。そう思える。繰り返すように、これが結論だ。(以下次号)
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