『ウエルカム トゥー ヘブン』

第1話。

　　　　　１
　後頭部を、誰かから、思いっきり殴られた。呻いた後、俺は、前に倒れ込んだ。そして、意識が途切れ、着いた場所があの場所だった。そう、天国だ。ここは、天国。空の彼方だった。俺は、天に召されたのだ。昇天したのだった。
　天国にある王の居宅で、俺は、その日、王と面会した。王が言った。
「そなたは、どこから来たのか？」
「日本です」
「日本とは、アジアにある、あの国か？」
「ええ、そうです」
　俺が答えると、王がすぐさま、切り返した。
「遠いところから来たな？」
「ええ。遠いところですよ」
　俺が平然と答えると、王が、
「ここは天国だ。何があるか、分かってるだろうな？」
　と言った。その言葉に嘘偽りはないだろう。俺が、
「天国ですから、永遠の幸福と安住の保証です。そう思っています」
　と答えて、軽く息をついた。そう、ここにあるのは、永遠の幸福と、平和、それに、安住の保証だ。俺にも、それが分かる。王が、
「そうだ。……そこの、王の池に行ってみよ。そこの水を掬って飲むと、長寿が得られるぞ」
　と言って、笑った。俺が、王の池に行って、水を手で掬い、飲むと、美味しい。王の池の水は、不老長寿の薬だ。俺は何杯でも、掬って飲んだ。飲めば、飲むほど、美味しいし、寿命が延びる。ここは、極楽だ。苦痛も、差別も何もない。地上で、散々苦しんだ俺にとって、まさに安住の地そのものだ。（以下次号）