上 下
2 / 10

第2話。

しおりを挟む
     2
 俺は、王の池から離れると、王の居宅にもう一度赴いた。王が、
「どうだ?水は美味しかったか?」
 と訊いてきたので、
「ええ。美味しかったです。……不老長寿の薬なのですよね?」
 と問い返すと、王が笑って、
「ああ、そうだ。不老長寿が得られる。そなたも、永遠に生きられるぞ」
 と太鼓判を押した。実際、俺の体は、何か漲るものが出てきた。散々苦しんで、人間としての生を終えた俺にとって、ここ天国は第二の場所となる。そう思えた。俺の苦しみは、地上であった差別と苦痛と、痛いほどの苦しみだった。今はそれがない。はっきり言って、いいものと思えた。王が、
「これから走れ。そして、二十四時間以内に、この居宅に戻ってこい。天国一周レースだ」
 と言って、俺に発破を掛けてくる。実際、このレースは面白そうだった。王の居宅を出て、一周レースを開始した。まず、向かったのは、極楽の丘だ。ここには、天国にある極楽が詰まった、勾玉がある。これを探さないといけないらしい。一仕事だ。そう思えた。勾玉は、碧玉のようだった。それは、予め、知らされていた。(以下次号)
しおりを挟む

処理中です...