『雨天殺人事件』

篠崎俊樹

文字の大きさ
上 下
23 / 34

第23話。

しおりを挟む
     23
 俺も、正直なところ、苦しいと思えることがある。新聞店の仕事には慣れてしまったが、やはり、疲れるのだ。睡眠導入剤を服用しても、寝付けないときは、ゆっくりと、ベッドの中で、瞑想に更けるのだ。そうやって、過ごしていた。実際、新聞店はきつい。仕事としては、大変であって、いつ首になっても、おかしくない。
 俺は、その日の夜、目が覚めてから、例の雨天殺人事件のことを考え始めた。考え始めると、ノイローゼになる。だが、俺自身、気を付けて、考えていた。実際、眠れるときは、寝たいし、もう、秋吉亮太の遺体は見つかっているのだから、何も気に掛けることはないだろう。そう思っていた。別に、俺は、順三が死んだことも、重大事とは考えてない。元々、父親とは仲が悪かった。いてもいなくても、喧嘩別れしていただろう。そう思うと、死んでくれて、清々するのだった。別に、あんなのがいても、意味ねえ、と思えていて、軽く考えていた。実際、俺は、順三の通夜にも、葬式にも出席しなかったのだ。
しおりを挟む

処理中です...