陰陽絵巻お伽草子

松本きねか

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藤の檜扇葵の小筆

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これは今からおよそ1000年前のおとぎ話

時空の中の夢まぼろし




人びとが怨霊亡霊妖怪などを

本気で信じていた時代


陰陽師と呼ばれる方々がおりました


表向きの仕事は内裏内にある

陰陽寮でお仕事をするお役人


そして

日が落ちて人びとが家路を急ぐ

逢魔が刻になると


あらわれる妖たちに

立ち向かう裏稼業


昼と夜、

ふたつの顔を持つ

だれそかれ


人の心は移ろいやすく

この世に闇があるかぎり


今宵も迷いを消し去りに

月を頼りに参りましょう





季節は4月、藤の花が開花し始めた頃…

藤の香りが辺りに漂って、春も真っ盛りといった風情のある日。
中流貴族在御門家のとある一室にて。
庭に面した部屋には年若い男と女が二人、向かい合って座っておりました。
御簾は捲し上げられていて、藤の花がよく見えるようにしてあり、花びらが一片、一片、ひらりひらりと頭上から落ちてきては香りと共に漂うのでした。

座している男の方は、在御門家嫡男、在御門忠保、対峙している女人は、母の義妹。
年の差は10余り。

先に口を開いたのは忠保の方。

「いつか…いつか、私と妹背になってください」

はっきりと言い放ちながら手にしていた、藤の花飾りが付いている檜扇を差し出す。

「きっと官位は上げてみせますから」

「……」

何も言わずほほ笑みながら、ただこくりと頷く女人。
名を葵という。

葵もまた手にしていた包みを開けて、忠保に差し出した。

「わたくしからは、これを」

二色の組紐が巻き付けられている小筆であった。

「…ちぎりきな…」

藤の盛りは始まったばかり、春の優しい陽光の中、微笑み合う二人の周りには藤の花びらがひらひらと舞っておりました。


それから2月ほどたった頃、忠保は父の部屋、当主の間に呼び出された。

「入内?」

難しい顔をしている父憲忠に向って、忠保は険しい表情になった。

「何故、そのようなことになったのですか?」

一語一句が重くなる。

「此度の葵祭の折、お目に留められたそうだ…」

憲忠の口調が重々しく響いてきて、忠保の体がカッと熱くなった。

「あの人は!」

父に食って掛かるように語尾は荒々しかった。

憲忠はため息をつきながら、

「ご承知の上だ、お前も諦めなさい」

と、諭すように呟いた。


その年の秋。
いよいよ入内ということになり、葵は牛車に乗り込もうとしていた。
その矢先、駆け寄ってくる男が一人、忠保であった。
守備の者たちが駆け寄る中、葵に向かって叫んだ。

「葵様…どうして…?」

葵は立ち止まったが、何も話さなかった。
忠保は取り押さえられながらなおも続ける。

「あの…あの小筆と、約束は…」

すがるように声掛けると、

「陰陽師の家系になど、嫁ぎませぬ…」

葵はそのままの姿勢で振り返りもせずにそう言い放つと、牛車に乗り込んだ。

牛車が動き出すと取り押さえていた者たちは、忠保を離れて連れ立っていった。
後に残った忠保は、独り、涙がつうと頬を流れていくのを感じながら、その場に座り込んでしまった。
懐の小筆を片手の平で抑えて、目をぎゅっと瞑る。

…守りたかった約束…

葵を乗せた牛車は遠くなり、忠保はとぼとぼと屋敷の自室に戻ると、葵からもらった小筆を真っ二つに折ってしまった。


その年の冬には更衣として入内した葵の寵愛深い話を聞くことになり、その度に忠保は耳をふさぎたくなるのだった。


それから、年も明けて少しまだ肌寒さの残る3月初め。
当主の間に書物を運んでいた忠保はあるものを見つけてしまった。

「父上…それは…」

憲忠は隠す素振りも見せずに、ただ黙していた。
なおも忠保は続ける。

「どなたの呪詛依頼でしょうか?」

何も言わず憲忠は、その文を机に広げて見せた。
文には、

『葵の更衣殿、失脚願い申す』

とだけ書かれてあった。

忠保は体を乗り出すと、

「父上、その呪詛、私にやらせていただけませんか?」

と懇願した。

「できるのか?」

「父上よりは確実に…」

父の問いに淡々とした口調で受け答えた。

『その運命は、私がお引き受け致します…』


そして再び藤の花が咲き始める4月
内裏の後宮で、葵は突然喉を抑えた。

『声、が…』

出したくても声が出ないのだ。
そこへ部屋の外から声をかけられた。

「葵の更衣殿」

振り返ると数人の女官達が部屋の外に集まってきていた。

「帝の御寵愛が深かろうと、いくら待てども子はできぬ、さらに後ろ盾を失ったとあらば…」

葵はその言葉を聞いて悟った。
父が死んだのだ。

『さすがは藤の花房誇る場所…見事な呪詛よの…どこもかしこも藤の香ばかり…』

居場所が無くなれば、どこかに身を寄せるしかなくなる。

『愛でるために手折られた花も、いつか枯れてしまうであろう。野に捨て置いてほしい花であればこそ…罪作りなことをなさる…』

薄く笑みを浮かべながら、葵は何も抵抗もせずに心の中で呟いた。
後日、誰一人気が付かないうちに、ひっそりと葵の更衣の姿は後宮から消えてしまった。


ギシギシと粗末な牛車に揺られながら、葵はふと考える。

『自分を身請けした人間のことなどどうでもいい。どこに連れていかれようとも、何をされようとも、後宮に上がった時点で自分は死んだも同じだと思っていたから』

内裏を出るときに出ていた三日月も雲に隠れてしまっていた。
暗がりの中、人目を忍ぶように牛車は進んでいき、都を離れてだいぶたった頃、とある小さな屋敷の前で止まった。
すると、その屋敷から出て来たであろう若い男が話しかけてきた。

「どうぞご案内致します」

葵は聞き覚えのある声にハッとした。
馬で付き従ってきた男達が数名、馬から降りて、牛車の御簾に手をかけた。

「更衣殿こちらへ」

半ば強引に牛車から連れ出される。
仕方なく顔を袖で隠しながら男達に従って歩くしかなかった。
牛車から降りると、葵の両脇に付いている男の一人が、先ほど話しかけてきた案内人に声をかけた。

「これはこれは忠保殿、此度の件では世話になり申した、因果でしょうかな?」

その男は下卑た笑みを浮かべながら、なおも続ける。

「ああ、これは失礼した…確か…陰陽師とは、呪詛…などはおやりになるのでしょうかな? いやいや、噂話ですよ、お気になさらず」

「!」

気にかかる事があり、葵は袖の隙間から、つと目を上げた。
その視線の先には、松明の灯りに半分影になった横顔を向けた忠保がいた。

「月の出ぬ間に、どうぞ…今夜は、黒い霧が立ち込めそうですから…」

案内された屋敷は、見覚えのある在御門家の別邸であった。


一ヶ月後―
屋敷の一室から男が二人、衣服の乱れを正しながら出てきた。

その一人は言う。

「さすがは寵愛を受けるほどのおなごじゃったの、だが、お声は出さぬし、そろそろ飽きた…わ」

もう一人も言う。

「まあ、楽しませて貰えたとも言えるかな…あとはそちらで好きにすればよい、それ、取っておけ」

「宮中の高貴な方には御不満でしょうけれど、お気にならなければ、またお立ち寄りください」

酔狂な男達はジャラリと金の入った小さな袋を忠保の手に手渡すとさっさと屋敷を出て行ってしまった。
忠保は二人を丁重に見送ると、すぐに部屋に戻ってきた。

部屋に入ると、几帳の横に、葵はすでに居住まいを正して座っていた。
忠保は葵を見下ろす姿勢で立ったまま口を開いた。

「あなたの呪詛依頼は私がお受け致しました」

「…」

「お子が授からぬように、そして、お声が出せぬように、と」

「…」

「御父上の方も…」

「…」

二人の間にしばし沈黙が漂う。
その沈黙を破ったのは、葵の方からであった。

「忠保様…」

「…」

呪詛が解けた今、忠保は何も言わずただ薄く目を開いて葵を見つめていた。
葵は忠保の前に両手をついて深々とお辞儀をして言葉を続けた。

「お願いがあります」

「…」

「わたくしを、抱いてくださいませ」

「それは?」

忠保は怪訝な顔になった。
葵はなおも続ける。

「浮世の辛さ苦しみ悲しみを忘れたいのです」

「…」

忠保は複雑な表情をした。

「お願いでございます…忠保様?」

言い切った葵の真剣な瞳を見て、忠保は一度目を瞑り、意を決したように目を見開くと、

「あなたを私のお屋敷にお連れ致します、身の回りのお品は後で届けさせましょう」

と伝えた。

そっとかがみこむと、葵が申し立てをしてきた。
葵が歩けなさそうなので、忠保は抱きかかえるつもりでいたのだ。

「あ、今一つだけ持ち出したいものがございます」

「どれですか?」

葵は一つだけ部屋の隅に置いてある唐櫃の箱を指さした。

「あちらの唐櫃の中にある浅緋色の包みです」

すぐに忠保は、唐櫃の蓋を開けて浅緋色の包みを取り出し、葵に手渡した。

「こちらで」

葵は包みを受け取ると、胸に抱き、ぎゅっと握りしめた。

「よろしいでしょうか?」

忠保は頷く葵をそのまま抱きかかえて、用意させた牛車にお乗せし、自らも一緒に乗り込んだ。

『私が…忘れさせて差し上げますよ、あなたの憂いも、二度とお袖を濡らさぬように、いつまでも、いつまでも…』

そう、声にならぬ声を心に思いながら葵をそっと抱きしめた。
忠保が指示を出すと牛車は静かに動き出した。
葵は懐かしい香の香りに包まれながら、忠保の腕の中でウトウトとしていた。

『子供の頃はよく慕ってくれた若君』

今は自分を支える腕の逞しさを感じながら、夢うつつをまどろんでいた。

牛車にしばらく揺られていたが、

「若殿、着きました」

という牛飼い童の声で目が覚めた。
外はさらに夜も更けて、天頂に月だけが真ん丸に輝いていた。

抱きかかえられたまま、そのまま忠保の部屋に連れていかれる。
忠保が人払いしておいたらしく、屋敷内は静まり返っていて誰も見かけることがない。
門をくぐり、渡殿を抜けて、格子戸をそっと開け、御簾をくぐると、ふうわりと忠保の香と同じ香りがした。
葵は几帳の影になっている褥にそっと下ろされた。

葵と向き合うように忠保が腰を下ろす。

「私にはまだ跡を継ぐ子がいなくてね…」

葵は持ち出した浅緋色の包みを開けて、中身を取り出した。

それは、あの時の藤の檜扇、

「あなたとのお約束と共に…」

「…」

忠保は目を疑った。
葵は少し微笑みを浮かべながら続ける。

「色褪せぬまま、持ち続けておりました」

「…」

忠保は何も言えないままじっと檜扇を見つめていた。
檜扇の藤飾りは鮮やかで、あの約束の時のままに見えた。

「私は…あなたの小筆を…折ってしまいました…」

目を伏せてやっとのことで言葉を紡ぐ。

「あなたが御道具を大切にしてきたことは、よく存じております。いつかまたお役にたちますように…」

気が付くと、忠保は葵を固く抱きしめていた。

外では傾きかけた月が、いつまでも輝いて影をさらに濃くしていくのでした。


月日が経ち、葵の体に一つの命が宿った。
その頃忠保は、臨月までに幾度となく卜占する日々が続いておりました。
しかし、出産の事をいくら占っても思わしい結果が出ないのでした。

いよいよ出産の時がやってきた。

忠保は部屋から立ち去るときに、葵の耳にそっと声をかけた。

「どうか…人の心のひとかけらでもお残しください」

と。

葵は薄く微笑んでいた。

それから数刻が過ぎた頃、おぎゃあ、おぎゃあと、元気な産声が聞こえてきた。
男の子だと報告を受け、急いで部屋に向かうと、消え入りそうな気配の葵が不思議な表情をしていた。

「ごめんなさい…忠保様…」

どうやら気をやられてしまったらしく、そのまま意識を失ってしまった。

「どうして…」


それからさらにひと月が経ったある夕暮れ時のこと。

「クックックッ…お金がこんなにたくさん! ここから逃げ出してやるわ」

女は金の入った袋を持ち出すと、裸足のまま部屋から飛び出した。
忠保が気が付いた時には、その女、葵の姿は消えていた。

「しまった…いない…まさか」

洛中ではちょっとした騒ぎになってしまった。

鬼が暴れている…と

忠保は急いで身支度を整え騎乗で駆けつけた。
そこでは、もはや葵の姿形のかけらもない、角のある鬼女が人々を怖がらせていた。

「葵殿!」

馬を降りて忠保が声をかけると、その鬼女は振り返った。

「ふふふふふ…あら、忠保様…どうされました?」

「あなたを…調伏…します」

絞り出すように言葉を紡ぎ、腰の剣に手をかける。

「できるのかしら~?」

鬼女はニタリと笑うと、その場から逃げ出した。
忠保は、尋常じゃない速さで逃げる鬼女を追いかけた。

気が付くとそこは人気のない河原だった。
骸骨も転がっていて薄気味が悪い場所だ。

少し離れた距離で対峙する二人。
もはやここには忠保と鬼しかいない。

忠保は剣を抜いて鬼に突きつけた。
剣には鈴が二つ付いていて、動かす度にシャランシャランと音が鳴る。

「葵殿…このままあの世に逝かれるか?」

「まだまだ楽しみたいわ~」

忠保は調伏するために剣を振るった。
煌めきと共に…
鈴の音がシャランシャランと鳴り響いていく。

鬼はなおも抵抗して長い爪で応戦してきた。
かわしながら、さらに剣を振るっていく。

「かさね折り、色変化!」

剣は振るう度に鈴の音が響き、様々な色の光の軌跡の帯が、折り重なっていく。

「臨兵闘者皆陣列在・・・」

色とりどりの光の帯が一つの光になって鬼を包み込んでいった。

「前!」

「忠保様…ありが…と…う…」

か細い小さな言霊と共に、段々と光が小さく消えていく。
最後に聞こえたのは鬼では無くて葵の声だったのだろうか…。

「調伏終了!」

剣を納めると、後には抜け殻となった肉体だけが横たわっていた。

「葵殿、一緒に歩んでいきたかった…あなたも…私も…愚かだよ…ね…雨? か…な…」

亡骸に背を向けて、シトシトと、空から落ちてくる雨を受けながら、忠保はその場から立ち去った。
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