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しるし ☆

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 窓掛けカーテンの隙間から差し込む朝日に目を開けたローゼの前には、彼女の顔を覗き込むユリアンの姿があった。
「よく眠っていたな」
 ユリアンは微笑みながらローゼの髪を撫でた。
「あの……おはよう、ございます……」
 ローゼは、昨夜、彼の寝室で愛し合った後、そのまま眠りについたのを思い出した。
「少し汗でべたついてるな……一緒に湯浴ゆあみするか?」
 そう言ってユリアンは寝台から抜け出すと、大きく伸びをした。
 一糸まとわぬ彼の姿は、筋肉質で程よく引き締まっており、ローゼは屋敷の玄関に飾られている彫刻を思い出した。
湯浴ゆあみ……二人で、ですか?」
「偶には、いいだろう?」
 二人は、ユリアンの寝室から続いている、彼専用の浴室へ入った。
 一人用とはいえ、二人で使っても余裕のある広さだ。
 浴槽には魔導具の力で常に適温の湯がなみなみと張られている。
 ローゼは長い髪が濡れないようにまとめると、洗い場にしゃがみ込み、海綿かいめんで石鹸をたっぷりと泡立てて身体を洗い始めた。
「どれ、俺が洗ってやろう」
 不意に、ユリアンが背後からローゼを抱き寄せた。
「だ、大丈夫です……自分で、できます……!」
 ローゼの言葉に構わず、ユリアンは彼女に密着して、その身体に石鹸の泡を塗りたくった。
 石鹸のぬめりが加わって滑りの良くなった彼の手が、ローゼの豊かな胸の膨らみから下腹までを往復する。
「……あぁッ」
 その思わぬ快感に、ローゼはこらえきれず声を漏らした。
「だ、駄目……です……こんなところ……で……」
「そうか? だが、お前も、欲しくなっているんだろう?」
 ぬるぬると乳房を揉みしだかれていたローゼは、腰の辺りに固いものが当たるのを感じた。
 ユリアンの言う通り、彼女の身体の奥には、切ない疼きが生まれている。
 浴槽のへりに掴まって膝をついたローゼの後ろから、ユリアンは彼女の腰を抱え、蜜を滴らせている蜜壺に怒張した逸物を挿し込んだ。
 ゆっくりと焦らすような抽送で、的確に弱い部分を攻められたローゼは、やがて、その身体を震わせて昇りつめた。
 寝台の上以外の場所で交わることなど彼女は想像すらしておらず、恥ずかしさと背徳感がぜになっていたが、それが更に快楽を強めた。
「もう……ユリアン様は……」
 ローゼは喘ぎながら、恥ずかしさに顔を赤らめて呟いた。
「怒ったのか? ここなら、すぐに洗い流せるし便利だろう」
 ユリアンが小さく笑って言うと、唇を少し尖らせていたローゼも、釣られて微笑んだ。
「ん?」
 と、ユリアンは、ローゼを再び抱き寄せ、彼女の右肩あたりを凝視した。
「どうか、しましたか?」
「ちょっと、ここを見てみろ」
 首を傾げるローゼに、ユリアンは浴室の壁に掛かっている鏡と手鏡を合わせ鏡にして、彼女が自分の右肩の後ろを見られるようにした。
「ここに……何か模様のようなものが浮き出ていないか?」
 合わせ鏡を覗いたローゼも、自分の右肩の後ろに、白い花のような模様が浮き出ているのを確認した。
「どうやら、体温が上がって皮膚に赤味が差すと浮き出て見える……刺青……なのか?」
 ユリアンが首を捻った。
「わ、私……全然気付いていませんでした」
 ローゼは、自らの身体の中に全く知らない部分があったのに気味悪さを感じて、不安になった。
「だが、お前の身元を探る手掛かりになるかもしれないな」
「身元……ですか」
 ユリアンの言葉に、ローゼは俯いた。
「私は……自分が何者なのかとか、気にならなくなりました。以前は、何もない自分が不安定なものに感じることもありましたけど……ユリアン様が愛してくださるなら、それでいいって……」
「お前は、可愛いな……」
 ユリアンはローゼを抱きしめた。
「……そうだ。お前は俺の妻になる女、それでいい。アインホルン家の養子になったことと、俺との婚約を合わせてのお披露目をするから、その時に着るドレスもあつらえなければな。皆が、お前の美しい姿を見て驚く顔が楽しみだ」
「お披露目……沢山の方が、いらっしゃるのですよね。上手くできるか心配です」
 クラウスの養子になったことと、ユリアンとの婚約の発表……ローゼが貴族の社会で認められる為の「お披露目」が近付いていた。
「貴族の社会というのは付き合いだの何だのと面倒だが、お前のことは俺が守るから、何も心配するな」
 ユリアンの腕の中で、彼の力強い言葉を聞きながら、ローゼは胸の内にあった不安が薄らいでいくのを感じた。
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