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5 幼女時代

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3歳になって言葉が話せるようになった私は3歳なりの話し方でうまく偽りつつも両親に対して魔力が高いのをアピールした。

魔力はカラダから蒸気のように流れ出る。大人は普段、魔力を抑えるものだが私はその逆の方法を取った。

理由はふたつ、ひとつは魔力の高さを認めてもらって、幼少期から魔法を学べる環境を親に用意してもらうため。ふたつ目は家にいる限り危険はないので、常に魔力を放出しつづけて絶対量を増やしても安全だから。

魔力は向こうの世界では、常に大声を出しているようなもの。大衆の前で魔力を全力で放出したら迷惑な目でみられる。このランバート家は郊外にあって、すぐ隣の家まで距離があるので、家にいる間に少しでも魔力の底上げをしておきたい。ゲームの世界では主人公が授業を通して習った知識として〝透明な魔力インビジブル・センス〟という高位の魔法使いが使いこなせる魔力の放出法がある。その技術を習得できれば、魔力放出トラブルは無くなるので、いつか必ず習得したいと考えている。

両親には魔力をどんどん見せてるが魔法は見せない。魔法は正しい詠唱と頭のなかでのイメージが一致しないと暴発してしまう。なので遠隔操作や水魔法が使えるのは秘密にしている。

私──シリカには1歳違いの弟がいる。弟はまだ魔力に目覚めておらず、言葉もそれほどしっかりしていない。両親は2番目の子どもで初めて親の大変さを味わっていた。

髪の毛がクルクルしていて、まつ毛が長くて女の子みたいに見えてとてもかわいい。

ある日、2歳になった弟の腕にアリが這っていて大声で泣いていた。自分で取ればいいのにアリですら、この子にとっては強敵らしい。私がヒョイと指でつまんで取り除いてあげたら、それから私のあとをついてくるようになった。

弟が私のまわりをウロチョロするようになって私の魔法の秘密特訓が昼間はできなくなってしまった。まだ2歳だが、記憶が残るかもしれないし、ふと両親にでも話されたら面倒なことになる。

それから1年くらいはひたすら魔力を放出し続けていた。両親も魔法学園の中等部でも通用しそうなに私の魔力にようやく魔法が習える初等部への入学を検討し始めてくれた。普通は7歳から入学できるが、4歳から入れるように手配を進めてくれていた。

いつものように家で弟が私の背中にくっついてお昼寝をしているので、弟を起こさないように遠隔魔法の練習をしていた。魔法を覚えたての頃はコインを一枚、数センチ動かす程度だったが今では複数の本を空中でクルクルと回すのも造作もない。

「クシュ」「ひゃっ」

──しまった。弟が私の背中でくしゃみをした弾みで空中でクルクル回していた本のコントロールを失ってしまった。5冊のうち1冊を2階の窓から外へ落ちてしまった。

そっと弟から離れて毛布を被せてから、下に降りて玄関のドアを開ける。

「これは君のものかね?」
「あ、はい……」

玄関の前に白く立派な髭をたくわえた老紳士が立っていた。

家の前の道路には馬車が止まっていてこの老人のものだと思われる。家の本を手に持ち私に差し出してきた。

「ありがとうございます」
「いくつかね?」
「先月で4歳になりました」
「ずいぶんと流暢に言葉を話す幼子じゃの」

やってしまった──両親以外のひとと滅多に話さないので、急な訪問者に対して普通に受け答えをしてしまった。

「ふむ、ご両親のどちらかを呼んできなさい」

どういうこと、私が魔法を使うところを見られちゃった?

食事の準備をしていた母親を玄関まで呼ぶと老紳士が話を始めた。

「ワシはバロア・デニエール。この魔法王国エブラハイムに世話になっているものじゃ」

この魔法王国エブラハイムは魔法文化交流というものを行っている。別大陸から魔法に優れた優秀な人材を客人かつ魔法研究員としてもてなし、さらなる魔法の深遠に至る研究を実施しているとゲームのなかでの記憶を思い返した。

「この子はとても聡く、魔力量も目を見張るものがある」

国から招致されるほどの実力者、この国でも指折りの魔法学校の高等部で学ぶよりるものが多いだろう。母親は父親に相談してから連絡しますと返事をした。
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