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04 塔の入口
しおりを挟む「では初めてなので、軽いものを受けましょうか」
各列の黒板を順にみていくと、メレーザがある列で止まった。読むと「低層での薬草採集」と書かれている。「これにしましょう?」とメレーザに勧められるまま、初級者の列、先に座って待機している三人組の後方に座った。
「あの私たちふたりなのですが……」
メレーザがそう呼びかけると、前に座っている三人が振り返りこちらを見る。
「えーっと魔法使いさんが「赤票」で男の子が「白票」ね……オッケー、いいよ」
男性ふたりに女性ひとり。その中でガタイのいい男が、首に提げている登録証をみながら返事をした。
「俺はポーター、斧使いで前衛を担当している。後ろのエルフがナーテル、もちろん精霊使いで、その隣にいるのがアンカー、斥候だ」
ポーターと名乗ったガタイのいい男が、メンバーを紹介していき、こちらも自己紹介をするよう求められたのでメレーザが、さらっと答える。戦士と答えると、ポーターから剣と盾を持っていて金属系の鎧を着ていない者は軽戦士という職業にあてはまると教えてもらった。
「じゃあ、さっそく出発と行きたいが、メレーザさんは知っていると思うけど、塔が開くのは三日に一回で今回は明日なんだ……見たところ道具も揃えてないようだから明日の朝六時に街の噴水前広場で待ち合わせでどうだ?」
ポーターからそう提案を受け、それで了承した。
ポーターたちと別れ、そのまま塔の登頂専門店へやって来た。
テルマは、剣と盾、皮鎧とメレーザからもらったポーション以外は何も持っていない。
メレーザに冒険で必要なものをすすめられ、そのとおりに購入した。
リュック、保存食と水筒セット、大型のナイフ。
買い物が終わり、お店を出るとメレーザも用事があるので、明日朝六時に噴水広場で約束し、店の前で別れた。
それから、夕方まで街をあちこち廻って土地勘を養う。日が傾いてから最初に目覚めたあの宿屋兼酒場に戻った。
「五シルビ、前金払いです」
朝に会った男性の店員ではなく若い女性が受付をしている。
今日一日街中を回ってだいたいの相場観を掴んだところ、五シルビは日本円に換算すると、約五千円、格安のビジネスホテルの相場よりも安めに感じるくらいなので良心的な価格といえる。
初日に捕まったり、男たちと殴り合いになったりとか、二千五十年代の日本ではありえない体験に興奮してなかなか寝つけなかったが、カラダの疲労が上回っていたのか、いつの間にか眠ったらしく、外が明るくなって寝たことに気がついた。
一階の酒場は、朝食を提供する食堂を兼用していて、そこでパンとスープだけの質素な朝食を済ませ、宿屋をあとにした。
待ち合わせ場所である噴水広場に向かうと、まだ日もちゃんと昇っていないのにもう全員揃っていた。この世界の時間は地球と同じで、一年は三百六十五日で一日は二十四時間となっている。中世の設定だが、振り子時計は一階の酒場にあった。宿を出る前に時間を確認したが、この噴水に約束の六時になる十五分前に到着するよう宿を出たはずだが。
「おう来たな。じゃあ塔に向かうぞ」
パーティーのリーダーである斧使いのポーターがそう言うと、塔の真下まで移動を始める。
遠目からでも大きかったが、その真下まで来るとその存在感は途轍もない。見上げると上空にある雲に突き刺さっており、頂上がみえない。
塔の入口は十か所あり、今日これから入っていく一階層の入口の他、転移装置が各十階層ごとにあるそうで、七十階層から上は、もうここ数か月の間、挑戦するものが現れていないそうだ。ちなみに低い階層の入口ほど冒険者の数が多く、現に一階層の入口はかなりの行列が出来ている。
行列の理由は、一気になだれ込むと中で混乱するからという理由で、一分おきにグループごとに冒険者たちが塔の中へと入っていく。
だいぶ待たされたが、ようやく自分たちの番が回って来た。
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