ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。

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# 38 豆丸、若返る!

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「あそこね!」

夜明けを迎えた。
水平線の向こうに朝陽が少しだけ顔を出す。

最初に倭の地にやってきた連絡橋の中央辺り。
橋の下は海になっているが、ぼんやりと光る渦潮に雨が狛犬ごとダイブした。続いて、カグヤ、歩茶と続き、豆丸がモリ達と殿しんがりを受け持っていた。連絡橋の中央に来るまで、数十体の警備ロボットをハガネが斬ってきた。彼がいなかったらこの脱出劇は序盤で捕まるというバッドエンドは避けられなかったと思う。

豆丸もアベベと一緒にダイブして、石橋のところへ戻ると、急いで軽トラに向かってダッシュした。

「──んなっ⁉」

軽トラをUターンさせている間に石橋の向こうから絶世の美女が現れた。
着物が赤紫に光り、青黒いオーラのようなものを纏った姿。両目は白く光っており、すごく怒っているのが伝わってきた。両手の手の平にはそれぞれ黒い球体が浮かんでおり、何かつぶやきながら、その黒い球を軽トラとSUVに向かって放とうとした。

「アベッ!」
「ぬぁああっ! アベベーーーーーっ!」

あろうことか、アベベが軽トラの荷台で振りかぶって、黄金の果実、瑞果を絶世の美女の頬に当てた。頬に当たった瞬間、パンっと爆竹のような音が鳴り、美女はよろめいた。その間に軽トラとSUVは向きを変え、アクセル全開で深い霧に包まれた平原を脱出した。

「いったい何のために危険を冒して倭の地へ行ったんだろう……」

トンネルから数キロ離れた廃墟となった道の駅で、一休みすることにした。

壊れて中が開いた自販機から飲み物を頂戴して、お茶を飲みながらため息をつく。

「馬鹿ね。あんたの葉っぱが瑞果を当てなかったら、皆あの場で死んでたわよ」

カグヤが呆れた顔で豆丸を叱る。
確かにあの場でアベベが機転を利かしてなければ、危なかったかも。でも瑞果がなければミカドを助けられない。すでに倭の地では、侵入者に対して最大限の警戒網を敷いているだろう。もう一度、戻るなんて自殺に等しい行為。

わかっちゃいるが、精神的に来るものがある。

「アベッ!」
「わかってるよ、アベベ。お前は悪く……って、それは?」

アベベが豆丸が着ているジャケットのポケットに勝手に手を突っ込んだかと思えば、瑞果が6個も出てきた。いつの間に豆丸のポケットに忍ばせた? 一個一個が苺くらいの大きさだから全然気づかなかった。

でも、良かった。
これでミカドを救うという当初の目的が達成できる。

「えっ? 目を瞑って口を開けろ? あーっ、むぐぅ⁉」

駐車場にたまった砂を紙代わりにメッセージを書いたアベベ。よくわからず言う通りにしたら、瑞果を口に放り込まれて思わず飲み込んだ。

「食べちゃったよ……。どうすんの? って、おーい!」

アベベは雨、歩茶、カグヤにも実を食べさせていた。

――――――――――――――
No00000812
レベル:3
個体スキル:4【積みゲー:Type:モリモリ】
等級スキル:2【エリアコマンダー】
ステータス:32(16Up)
――――――――――――――

おお⁉
身体が嘘みたいに軽い。

両腕を見ると皺やシミが無くなって、弾力がある。

ステータスを確認したら、元々16しかなかったステータスが倍の32まで上がっていた。

「おじい……ちゃん?」
「うん? 歩茶、どうしたの?」
「あら、オジ様、すごく若返っているわよ!」

歩茶が戸惑うのも無理はなかった。
ストレージから鏡を出すと、30代前半くらいの豆丸がいた。白髪も生えておらず、お腹も出ていない頃の自分。写真はほとんど残っていないが、若い頃の自分を思い出す。そういえば痰も絡んでいないし、近くの物もよく見える。

でも雨や歩茶、カグヤの見た目に変化はない。若返りは年寄りにだけ効果があるのかもしれない。ただ、ステータスは激変していると思う。豆丸でさえ、倍になったぐらいなので、元々ステータスが高い若い子たちは、さらに上昇していると思う。

急に緩くなった腰回りをベルトを短くして調整し直しながら、そろそろ出発しようと声をかけた。








嵐かな?
高速道路で南下中、雲行きが怪しくなってきた。

行きの北上中に橋が落ちていた場所もそろそろなので、最寄りのインターチェンジで降りて、国道を南に向かって走行する。

たまに車道に放置された自動車があるため、避けながら走っていると、横断歩道の上に20代前半の若者が3人立っていた。

「検問でーす! 食いモンと飲みモンとそこのネーちゃん達を置いて、とっとと消えてくださーい」

手に持っているのは、大口径のリボルバーとショットガン、そして手榴弾らしきものを持っている男もいる。

「オジ様」
「あっ、はい……」
「スゲェいい女……でもそこで止まれ!」

SUV車から降りた雨は、豆丸に向かって、ひと言告げ、彼らの前に歩み寄る。
だが、男たちの一人に制止を求められた。

しかし……。

「すぐに止まれ、じゃないと撃つ!」
「食べ物がなくて困ってるの分けてくださらない?」
「──ちっ、死ね!」

雨は両手を上げたまま、甘えた声を出しながら男たちへ近づいていく。だが、この世界を曲がりなりにも渡り歩いてきたPlayer。強めの警告の後、リボルバーを構えた男が雨に向かって発砲した。

「ダメじゃない。レディに向かって銃を撃つなんて」
「──こっ、コイツ⁉」

男の一人の足元に日本酒の入った一升瓶が置かれていた。雨の能力は水じゃなくても液体なら扱えるらしく、酒を使って、弾丸を受け止めていた

焦ってショットガンの男と手りゅう弾を持った男が、雨を迎え撃とうとしたが遅かった。3人とも水の刃で両腕をがれ、悲鳴を上げる。手りゅう弾を持っていた男に至っては安全ピンを抜いた後に水の手で、口の中に手りゅう弾をねじ込まれた。

一人は手りゅう弾で上半身が破裂し、残り二人は喉を掻き切られ、ヒューヒューと息をして事切れた。

雨は手りゅう弾の破片や血しぶきやらが自分にかからないように3人との間に薄い酒でできた幕を張っていたが、それを解除しながら呟いた。

「高い授業料だったわね。もう、学ぶこともできなくなったわけだけど……」

雨に頼まれていたのは、歩茶の目を塞ぐこと。

それにしても、雨って怖すぎる。
いったい何者なんだろう?













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