異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天

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第五章 迷宮都市

第四十話 紅い化け物

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 迷宮の第十一階層まで来た。【身体強化|《フィジカルアップ》・極】と【俊敏超強化】の無属性術式を使ったので、意外とあっという間についた。第十一階層は草原で木々が所々に生えている平和な場所だった。

 魔獣の種類も増え、遭遇した新しい魔獣として、下位吸血鬼レッサーヴァンパイアや黄金狼。【五階層階層主フィフスエリア・フロアマスター】の緑子鬼王ゴブリンキングなどだ。特に【五階層階層主フィフスエリア・フロアマスター緑子鬼王ゴブリンキングは初めての階層主フロアマスターだったので、手こずった。ノーリスクで家来|《ゴブリン》を呼び出せるのはチートだと思う。まぁ、勿論、技能スキルは奪ったんだけどね。

 第十一階層からは地図が売ってなかったので、【状況解析】を使いながら移動している。おかげで、行軍速度は鈍っている。恐らく、今夜はここで一夜を過ごすことになるだろう。

 「敵発見…前方、左右に三匹、真横に五匹、後方、左に三匹。囲まれた」

 考え事をしていたら、雄牛人ミノタウロスに囲まれたらしい。

 「【転移テレポート】」

 俺は王女様と一緒に空中に転移した。

 雄牛人たちは俺たちの気配が急に無くなったことに驚いている。俺は【虚空庫之指輪リング・オブ・アイテムボックス》】から 【金聖剣エクスカリバー】を取り出し、久しぶりに【形状変化】を使う。

 「【形状変化:形態フォルム超長剣ウルトラロングソード】」

 長すぎる剣を作り出す。長剣というには長すぎる。剣と呼ぶことすらできないような代物。

 俺はそれを振るう。

 「【疑似武技・旋風斬】ッ!」

 剣が旋風を纏い、それを解放する。爆撃でも起きたのかと思わせるほど、辺りが爆音と衝撃で染まった。ただ、それでも一匹残った。

 「よろずの素よ。炎と風の混合。渦巻き、踊り狂うは螺旋となり、敵を穿て。【炎嵐】」

 王女様の詠唱と共に炎の嵐が飛んでくる。……ってここも範囲じゃんか!

 「【転移テレポート】」

 俺は間一髪で炎の嵐を避け、王女の隣に戻った。

 「当たりそうになったんだけど」
 「すみません。コントロールが難しくて」

 雄牛人の群れは可哀想に上からの強烈な風の斬撃と炎の嵐に焼かれて消えた。蹂躙劇といった方が正しい。
 俺たち二人は余裕すぎて、魔獣の群れを処理するだけになっていた。

 「雄牛人は十匹追加で、一匹は燃えたから回収不可だし」
 「すみません。雄牛人は五十七匹目であってますか」
 「うん」

 俺は頷く。ここまで雄牛人の群れに三回あって、全滅させた。

 「第十二階層に降りる階段がありませんね」
 「うん。そろそろ見つけてもいい頃なんだけどな」

 一時間近く、走っても見つけれなかったため、空中からの【状況解析】でも見つけれなかった。

 なぜだろう。

 「もう隠蔽術式でも使われてるんでしょうか」
 「幻惑術式かもしれないぞ。隠蔽術式なら技能|《スキル》でわかるし」

 幻惑術式なら闇属性の魔獣が使えないこともないかもしれない。

 「うん?」

 俺は直感的にあることを思った。

 「【反響エコー】」

 無属性魔術の【反響】で物理的障害物を探査する。ただ、物理的障害物はない。恐らくは術式による阻害。

 「【空間探査】」

 うん? 空間が歪だ。空間がねじ曲がっているのか?

 「しかも、一つの地点に収束している」
 「魔術的にだまされていましたか」

 【術理】で術式の解析を図る。

 「取りあえず、魔獣か魔者だな。とりあえず、倒してしまおう」
 「そうですね。しかし、魔者だとすると、一体どうしてこんな低階層にいるのでしょうか」
 「確かに。五十より下でもいいはずなのに……」

 などと話していると解析が終わった。

 【空間偽装】Ⅴ~Ⅶ『空間属性』+『闇属性』
  空間ごと変化させ、隠蔽する。最低でもⅤの超難解な合成術式。隠蔽範囲によって難度変更。解除方法は術者討伐か術式を壊す。

 
 「は?」
 「どうしたのですか」

 王女様が俺のうっかり漏らした声に反応する。俺は王女様にこの内容を伝える。

 「最低Ⅴランクの魔術? 御伽話のような話です」
 「迷宮の階層を丸々偽装したと考えるとⅦランクの魔術かもしれない」

 とすると、これより下の階層に何か隠蔽したいものでもあるのか……

 「とりあえず、術式を壊す。【形態フォルム:】」

 俺は【金聖剣】に魔力を集中させる。術式が一カ所に収束している点を細剣レイピアで貫く。

 「ハッ!」

 かけ声と共に収束点を突く。

 パキンッ

 ガラスが割れるような音が響いた。

 「なっ、下等生物如きが術式破壊を行っただと!?」

 少女? 黒と紅のドレスを身に纏っている姿は可愛らしい。しかし、その姿は異質だ。黒い気配の様なものを身に纏い、紅く流動性のある―恐らくは血だろう―球体を八つほど下僕のように浮かせている。
 魔者。恐らくは超高位の吸血鬼ヴァンパイア|。

 「【原祖オリジン】? いや【神祖デウス】?」
 「まずい。攻撃が来る」

 勘が告げる。不味いと。

 しかし、彼女は俺らが戦闘体勢をする前に声を発す。

 「永久の安寧を!【血鎖夜想曲ブラッディチェインノクターン】」
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