幻獣カフェのまんちこさん

高倉宝

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まんちこさん下着を買う 2

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 おしゃれ好きなユニカは慣れた様子で、すぐに店員に声をかける。
「すみません、この子採寸お願いします~」
「かしこまりました」
 店員さんはきょとんとしたメルシャを連れて試着室に入る。
 採寸の間、ユニカとポエニッサは陳列してある下着を楽しそうに手に取り始めた。
 しかしなぜかミノンとアルルは、征矢の隣から動かない。
「どうした? 好きに見てきてかまわないぞ」
 征矢が声をかけると、ミノンは照れくさそうにうつむく。
「いえ、うちは……」
「おれに気を使ってるなら……」
「いえ、そうではなくて……うちのサイズは、ふつうのお店には、あんまり……」
 あ。征矢は思わず、ミノンの人並み外れた爆乳へ目を落とす。
 大きすぎるのも大変だな。
 征矢はアルルの方へ顔を向けた。
「アルルは?」
 幼い顔に達観した笑みをたたえて、アルルが答える。
「アルルにはまだ必要ないのですねーブラジャーとか大人向けのおぱんつとか。サイズ的にもう少し成長しませんと」
「そ、そうか。でもすぐ成長するさ」
 急いで征矢はフォローを入れる。
「そうですねー。あと五百年くらいしたら、ちょっとはふくらむかもです。はは」
 乾いた笑い。
「……なんか、ゴメン」
「お気遣いなくなのです。なにぶん植物ですので」
 突然、試着室のカーテンからメルシャが顔だけ突き出し、でっかい声をあげる。
「征矢どの! オレ、じーかっぷなんだそうだ!」
 G!? なかなかパンチの効いた数値に、かすかにざわつく女性客たち。
「いちいち報告要らん!」
 叫ぶ征矢の横に、ポエニッサがやってくる。
「ふん、お下品ですこと。自分のお胸のサイズをあんな大声で」
「まったくだ」
「だ、だ、だいたい、Gカップなんて品数も少ないしお値段は高いし、ろ、ろくなことがありませんわ……」
 征矢はあることに気づいて、ぎょっとなる。
「どうした鳥子! すごい涙目だぞ!」
「くっ! 羨ましくなんてありませんわ!」
 どう見てもAカップであろう胸元を腕組みで隠し、唇を噛みしめたポエニッサはじっと天井を見つめている。
 一方ユニカは、試着室でメルシャの正確なサイズを聞き込んできたかと思うと、さっそく大きなサイズのコーナーでメルシャに似合いそうなブラを物色し始めている。
 手早く数点選ぶと、店員さんと入れ替わりに試着室へと入っていく。
 征矢がつぶやく。
「馬子はマメだな」
 冷めた口調でアルルが応える。
「あれは女の子の裸を見たり触ったりしたいだけなのですねー」
「むう。欲望に忠実なやつだ」
「なのです」
 試着室から、そのユニカが顔を出した。
 表情がこわばっている。声は小さかったが、ただごとではない雰囲気。
「征矢! たいへん! ちょっと来て!」
「ど、どうした」
 思わず征矢は試着室へ近づく。アルルとポエニッサ、ミノンも続く。
「おい馬子! まんち子! なにがあった?」
 しゃっ! いきなりカーテンが中から引き開けられる。
「じゃーん! どうだ!」
 ユニカが両手でメルシャを示す。
「うわわ!」
 征矢は悲鳴のような声を上げる。
 シンプルな白のブラジャーを着けたメルシャが、恥じ入るようにもじもじと立っていた。なぜか下半身も脱がされ、こちらは椿にもらった自前ぱんつ。
 さらになぜか、ユニカまで服をすっかり脱いで下着姿である。
「ど、どうだろう……似合うだろうか?」
 目を伏せたまま、震え声で訊くメルシャ。
「知らん! 自分で選べ!」
 征矢はすぐさまカーテンを閉めようとするが、ユニカがすごい力でそれを許さない。
「だーめ。ちゃんと見たげて。そして感想言ったげて」
「ていうかなんで君まで下着姿なんだ!」
「ついでだからわたしも試着しちゃった。あ、気になる? わたしのサイズは65Dだよっ。うっふーん」
 ユニカはピンクのノンワイヤーブラを見せつけるポーズ。
「聞いてない! つーか君は恥ずかしくないのか、男に下着姿見られて!」
 あっけらかんとユニカはうなずく。
「うん、全然平気。わたし男子は性の対象に入らないから」
「女子の前でも平気じゃないか!」
「女の子にはむしろ余さず見せたい! なんなら下着の奥の奥も! 見て欲情してもらいたい!」
「清々しいまでの変態だな!」
 横でメルシャが苦悶の声をあげる。
「オレは恥ずかしいー! も、もう許してくれ……!」
「だからここを閉めろって!」
 ぎぎぎ。カーテンを閉めようと、征矢は必死に引っ張る。ユニカは必死にそれに逆らう。間に置かれて、ただ羞恥に悶絶するメルシャ。
 何事かと店員さんや他のお客さんまでこっちを見ている。征矢の全身を冷たい汗がつたう。
 ユニカがにっこりと繰り返す。
「ご感想は? 言ったら閉めてあげる」
「はいはい可愛い可愛い! 似合うから!」
「カ、カワイイって言うなあ! 征矢どののおたんちん!」
 メルシャは赤面しながら怒鳴る。
「どうしろと!?」 
「はいよろしい。次も見てもらうから、そこを動かないでね」
 しゃっ。ようやくカーテンが閉まった。
 ああ。背後にひしひし感じる店員さんの冷たい視線。
 恐ろしくて征矢は振り返ることもできない。
 征矢はその後四回ほど、メルシャのランジェリーファッションショーを見せられることになった。
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