幻獣カフェのまんちこさん

高倉宝

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あなたをずっと見てたくて

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 ベッドに入った途端、征矢の携帯が鳴った。
 光莉だった。そういえば昨日、半ば強制的に番号を交換させられたのだった。
『こんばんは。光莉です。夜分におそれいります』
 征矢はベッドの上で半身を起こす。
「どうしました?」
 電話の向こうの光莉は、少しためらうように口ごもった。
『その……征矢さまのお声が聞きたくなって……今日はお店が定休日だったもので……ご迷惑だったでしょうか』
 急を要する用事とかではなさそうだった。征矢はまたごろんと横になる。
「いいですよ。そちらは今日、なにしてたんですか?」
『私は、いつもどおりです。取材したり、されたり。さっきおうちに帰ってきました』
「ああ、有名人はたいへんですね。遅くまでお疲れさまでした」
『ありがとうございます……征矢さまは、お休みどう過ごされましたか?』
 征矢は、ついさっき幻獣娘たちからもらったプレゼントに目をやる。
「店の子たちと、ちょっと買い物に行きました」
『まあ、すてきです。征矢さまとお買い物デートだなんて、私、ちょっとやきもちです』
 くすっと笑って、征矢は言う。
「そんないいものじゃないですよ。ずっと大騒ぎでもうへとへとですよ。見せたかったくらいです」
『ほんとに、見たかったです……あ、申し訳ありません。征矢さま、お疲れなのに私ったら長々と。もう切りますね』
「かまいませんよ」
『お声が聞けて、嬉しかったです』
 征矢はちょっと、耳がこそばゆい。
「こんな声でよければいつでもどうぞ。じゃあ、おやすみなさい」
『はい、おやすみなさいませ。どうぞいい夢を』
 通話が切れた。寝付きのいい征矢は、すぐに眠りに落ちた。


 奥屋敷光莉は携帯端末をそっとポケットに入れた。
 片手には小型の双眼鏡。そのレンズは、ずっと征矢の部屋の窓に向けられている。
 カーテンは閉まっていたけれど、光莉はちっともかまわない。その向こうに征矢の気配が感じられるだけでじゅうぶんだった。
「いいんですよ征矢さま。私、本当は全部見てましたから。今日一日中……私、征矢さまのこと、全部、全部、全部知りたいのです。ふふふ」
 奥屋敷光莉は、
 征矢との距離、わずか十メートルあまり。
 生け垣で囲まれただけの、セキュリティなど無いに等しい家だ。侵入するのは簡単だった。
 もちろん、昼間はショッピングモールにもいた。
 一日中、片時も征矢から目を離さずにいた。誰にも気づかれずに。
 征矢の部屋の灯りが消えた。
 夢見るような目つきで暗い窓を見つめたまま、光莉は呪文のようにつぶやき続けていた。
「今度は、征矢さまが私のおうちに来てくださいね。こんな家なんかより、ずっとずっとすてきなおうちなんですから。征矢さまもきっと気に入ってくださいます……私と征矢さまと二人で、ずうっと、ずうっと一緒に暮らすんです。ずうっと、ずうっと、ずうっと、ずうっと、ずうっと……」
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