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第一部
第三話 念願のドーピングアイテムを手に入れた(ただし効果が判らない)
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村人を手助けしながら賊を切り続けること約一時間。同じ宿に泊まっていた傭兵なども、いつの間にか加勢してくれていたらしく、村から賊は一掃された。
その後も怪我人の搬送及び治療を手伝ったせいもあってか、気が付いたら夜が明けていた。
「あ~、つかれた。ねむい」
宿の女将が持ってきてくれた湯とタオルで戦闘中に浴びた血や土埃を落としていると、静まっていたはずの外の喧騒が再び大きくなった。
汚れた服を着替えて、窓から外を覗くと聖王国の騎士がいた。数からして小隊程度だろうか、賊の出現を聞きつけて駆けつけてきたのだとしたら随分と遅い到着である。
隊長と思しき相手に対応しているのは確か村長の息子だったか。僧侶として修業していたらしい彼がいたおかげで、怪我人の治療がスムーズに進んだのは記憶に新しい。
そしてそこに割って入るかのように、昨夜いつの間にか共闘していた傭兵たちがあらわれる。どうやら彼らは騎士団に文句を言いたいらしい。今更何しに来た、と。
俺も同じ文句を言ってやりたいが、彼らがすでに伝えているからいいかと湯が入っていた桶とタオルを返しに行く。女将さんには呼んでくれれば取りに行ったのにと言ってもらえたが、これくらいは普通にやりたい。昨晩の事もあって女将さんも疲れているだろうし、お手伝いしないとな。
「おにいちゃん、昨日はありがとう」
女将さんと少し話し部屋に戻ろとしたところで、一人の少年に話しかけられた。この子は見覚えがある。ここの経営者夫婦のお孫さんだ。
なんでも昨夜、俺が倉庫に隠れていろと言ったのが功を奏したのか、余り怖い思いをしないで済んだらしい。
「あのね。倉庫にこれがあったから、お礼にあげるの」
そういって少年が差し出してきたのは赤い鉱石だった。なんか見覚えあるんだけど、何かのアイテムだろうか?
少年は俺に鉱石を渡すと、満足したのか笑顔で走り去っていった。
赤い鉱石――これがゲームに出てきたアイテムであれば、ドーピングアイテムの可能性が高い。
原作であるシミュレーションRPG【月虹のレギンレイヴ】に出てくるドーピングアイテムは全部で八つ。その中で石の形をしているのは二つだ。
まず一つはマジックストーン。これは魔力を上昇させるものなので、俺には無用の産物といってもいい。
もう一つは幸運の石。こちらは読んで字のごとく、幸運を上昇させるアイテムである。
しかしゲーム画面ではアイテムごとに小さなアイコンが表示されているのだが、古いハードのゲームだったせいもあってか、容量の関係で同じアイコンを使いまわしているものも少なくはなかった。この二つもゲーム上では全く同じ見た目のアイテムだ。
俺にとって魔力なんて、あってもほとんど役に立たない。まず初期値が0だ。成長率も5パーセントと低い。そしてアイテムで上昇する数値は3だから、魔法の効果を持つ武器を使用する予定でもない限り、他の人に回すべきアイテムとなる。
しかし幸運。こいつはいくらあっても困らない存在だ。幸運が低いと必殺の一撃も出せないし、逆に食らうことになる。そして砂漠で宝探しをする際に、この数値が低いと延々と歩きまわる羽目になる。ゲームならまだしも現実でそんなことはしたくない。
ここで俺が持っている前世の情報から、この石がどちらのアイテムなのか判断する材料を探そうと思う。
ドーピングアイテムは、シリーズを進むうちに名称や形を変えることが何度かあったので、月虹と同じアイテム構成だったシリーズを参考にしよう。
アイテムの名称が同じシリーズは、二作目の【陽炎のレギンレイヴ】と三作目【彗星のレギンレイヴ】の二つだ。このうち陽炎はハードが同じなのでアイコンも同じだから除外、すると残る判断材料は次世代にあたるハードで開発された彗星になる。
こっちでは間違いなく別のアイコンを使用していた。そう、確かマジックストーンが紫で、幸運の石がピンク色をしていた……っておい! なんで唐突に色が変わるんだよ。ちょっと大陸が変わっただけで石の色まで変わんのかよ。どんな化学変化が起きたんだ!
「俺の知り合いにこういうの詳しい奴いたっけ?」
エリアスとしての知り合いを片っ端から辿ると、出てくる人間の八割ほどが傭兵で残りが僧侶や武器屋・修理屋などだ。多分知っていそうなのはマーリンなのだが、こちらからは連絡を取る手段がない。
しかし奴は一方的に、何かあったらテオを寄こすと言っていたので近いうちに会えるかもしれないが、ゲーム通りに進むとしたら五年は先の話になる。あれ? そういやあいつ古の魔女の死は五年隠せって俺にいうの忘れてないか? まあ話す気ないけど。
とりあえず赤い鉱石に関しては、詳しい人に会えるまでは使用を諦めてしまおうか。そう思い立ち、荷物の中から取り出した適当な布で石を包み、傷薬などと一緒に道具袋に入れておくことにした。
「エリアスさん、お休みのところ御免なさいねぇ。騎士様たちがお話をしたいそうですので食堂までいらしてくださいとのことですよ」
もしかしてアレか。もう悪竜を退治した勇者の噂が王都まで届いているのか。だとしたら吟遊詩人連れてワープで王都に行ったなあいつ。
そういえば小説版では、あの街ではなく王都までマーリンが送ってくれていたな。あの野郎、魔力ケチりやがった。
マーリンへの悪態を悟られないよう女将さんには笑顔で礼を言い、俺は騎士たちが待っているという食堂へと移動する。
食堂に入り周囲を見渡すと、先ほど見掛けた騎士たちとは別の騎士たちが、こちらに背を向けてなにやら話し込んでいた。
その中に一人、魔導騎士風の女性がいる。魔導騎士とは、通常の騎士とは違い魔導の心得がある騎士の事だ。腰に下げている魔導書からして炎魔法が得意らしい。
少し癖のある燃えるような真っ赤な髪を、ヘアバンドで邪魔にならないように避けているその横顔には大いに心当たりがある。
ローレッタ聖王国の有力貴族、ロザリー公爵家の令嬢――原作でエリアスの恋人だった女騎士だ。
原作では彼女の兵種は聖騎士のはずだが、目の前の彼女はどう見ても魔導騎士の装備をしている。実際ゲームの中でも、剣を装備できるユニットの中では魔力が高いほうだったので、先ほど挙げた魔法の効果を持つ剣――水晶の剣という武器を使用させるプレイヤーが多かった。
なので、もしかしたら彼女も俺と同じ転生者なのかもしれない。水晶の剣は希少なうえに使用回数も少ない武器だから、魔導方面に鞍替えするというのはありえない話ではない。
少し観察しているうちに、向こうも俺に気が付いたのか一人の騎士が近づいてきた。
「お前が女神とやらから祝福を受けたという勇者か?」
「あぁ。そうだ」
ローレッタ聖王国では、俺に加護をくれた女神は異教扱いなのもあってか騎士も嫌そうな顔を見せてくる。
しかしそんなことをいちいち気にしていては話が進まないので、こちらは気にせず応対する。傭兵稼業やっているうちに鍛えられたのか、自分でも驚くほどに図太い精神を持っているようで騎士に凄まれても全く怖くない。
「ローレッタ聖王国・聖騎士団団長からの書状を貴方に預かってきた。確認なさい」
俺の態度が気に食わないといった様子の騎士を差し置き、ロザリー公爵令嬢――メレディスが一通の書状を俺に渡してきた。
聖騎士団の団長といえば、彼女の父親であるロザリー公爵だ。原作ゲームでは開始前に戦死しているのだが、設定資料集などに書かれている内容からして、聖王国の騎士の中では本物といっていい聖騎士である。
中身にはおおよそ見当がついているが、とりあえず俺は書状の内容を確認することにした。
要約すると、聖王国の騎士団に正式に騎士として迎え入れたい、といった内容だ。
まぁ、俺としても断る理由がないので、ここはまっすぐ王都に向かい聖王国の騎士になろうではないか。そしてミシェルと親友になるんだ!
「悪竜を退治した功績を見込んで、騎士団にスカウトしたいと書かれているんだが、君たちと一緒に王都へ行けばいいのかな?」
その後も怪我人の搬送及び治療を手伝ったせいもあってか、気が付いたら夜が明けていた。
「あ~、つかれた。ねむい」
宿の女将が持ってきてくれた湯とタオルで戦闘中に浴びた血や土埃を落としていると、静まっていたはずの外の喧騒が再び大きくなった。
汚れた服を着替えて、窓から外を覗くと聖王国の騎士がいた。数からして小隊程度だろうか、賊の出現を聞きつけて駆けつけてきたのだとしたら随分と遅い到着である。
隊長と思しき相手に対応しているのは確か村長の息子だったか。僧侶として修業していたらしい彼がいたおかげで、怪我人の治療がスムーズに進んだのは記憶に新しい。
そしてそこに割って入るかのように、昨夜いつの間にか共闘していた傭兵たちがあらわれる。どうやら彼らは騎士団に文句を言いたいらしい。今更何しに来た、と。
俺も同じ文句を言ってやりたいが、彼らがすでに伝えているからいいかと湯が入っていた桶とタオルを返しに行く。女将さんには呼んでくれれば取りに行ったのにと言ってもらえたが、これくらいは普通にやりたい。昨晩の事もあって女将さんも疲れているだろうし、お手伝いしないとな。
「おにいちゃん、昨日はありがとう」
女将さんと少し話し部屋に戻ろとしたところで、一人の少年に話しかけられた。この子は見覚えがある。ここの経営者夫婦のお孫さんだ。
なんでも昨夜、俺が倉庫に隠れていろと言ったのが功を奏したのか、余り怖い思いをしないで済んだらしい。
「あのね。倉庫にこれがあったから、お礼にあげるの」
そういって少年が差し出してきたのは赤い鉱石だった。なんか見覚えあるんだけど、何かのアイテムだろうか?
少年は俺に鉱石を渡すと、満足したのか笑顔で走り去っていった。
赤い鉱石――これがゲームに出てきたアイテムであれば、ドーピングアイテムの可能性が高い。
原作であるシミュレーションRPG【月虹のレギンレイヴ】に出てくるドーピングアイテムは全部で八つ。その中で石の形をしているのは二つだ。
まず一つはマジックストーン。これは魔力を上昇させるものなので、俺には無用の産物といってもいい。
もう一つは幸運の石。こちらは読んで字のごとく、幸運を上昇させるアイテムである。
しかしゲーム画面ではアイテムごとに小さなアイコンが表示されているのだが、古いハードのゲームだったせいもあってか、容量の関係で同じアイコンを使いまわしているものも少なくはなかった。この二つもゲーム上では全く同じ見た目のアイテムだ。
俺にとって魔力なんて、あってもほとんど役に立たない。まず初期値が0だ。成長率も5パーセントと低い。そしてアイテムで上昇する数値は3だから、魔法の効果を持つ武器を使用する予定でもない限り、他の人に回すべきアイテムとなる。
しかし幸運。こいつはいくらあっても困らない存在だ。幸運が低いと必殺の一撃も出せないし、逆に食らうことになる。そして砂漠で宝探しをする際に、この数値が低いと延々と歩きまわる羽目になる。ゲームならまだしも現実でそんなことはしたくない。
ここで俺が持っている前世の情報から、この石がどちらのアイテムなのか判断する材料を探そうと思う。
ドーピングアイテムは、シリーズを進むうちに名称や形を変えることが何度かあったので、月虹と同じアイテム構成だったシリーズを参考にしよう。
アイテムの名称が同じシリーズは、二作目の【陽炎のレギンレイヴ】と三作目【彗星のレギンレイヴ】の二つだ。このうち陽炎はハードが同じなのでアイコンも同じだから除外、すると残る判断材料は次世代にあたるハードで開発された彗星になる。
こっちでは間違いなく別のアイコンを使用していた。そう、確かマジックストーンが紫で、幸運の石がピンク色をしていた……っておい! なんで唐突に色が変わるんだよ。ちょっと大陸が変わっただけで石の色まで変わんのかよ。どんな化学変化が起きたんだ!
「俺の知り合いにこういうの詳しい奴いたっけ?」
エリアスとしての知り合いを片っ端から辿ると、出てくる人間の八割ほどが傭兵で残りが僧侶や武器屋・修理屋などだ。多分知っていそうなのはマーリンなのだが、こちらからは連絡を取る手段がない。
しかし奴は一方的に、何かあったらテオを寄こすと言っていたので近いうちに会えるかもしれないが、ゲーム通りに進むとしたら五年は先の話になる。あれ? そういやあいつ古の魔女の死は五年隠せって俺にいうの忘れてないか? まあ話す気ないけど。
とりあえず赤い鉱石に関しては、詳しい人に会えるまでは使用を諦めてしまおうか。そう思い立ち、荷物の中から取り出した適当な布で石を包み、傷薬などと一緒に道具袋に入れておくことにした。
「エリアスさん、お休みのところ御免なさいねぇ。騎士様たちがお話をしたいそうですので食堂までいらしてくださいとのことですよ」
もしかしてアレか。もう悪竜を退治した勇者の噂が王都まで届いているのか。だとしたら吟遊詩人連れてワープで王都に行ったなあいつ。
そういえば小説版では、あの街ではなく王都までマーリンが送ってくれていたな。あの野郎、魔力ケチりやがった。
マーリンへの悪態を悟られないよう女将さんには笑顔で礼を言い、俺は騎士たちが待っているという食堂へと移動する。
食堂に入り周囲を見渡すと、先ほど見掛けた騎士たちとは別の騎士たちが、こちらに背を向けてなにやら話し込んでいた。
その中に一人、魔導騎士風の女性がいる。魔導騎士とは、通常の騎士とは違い魔導の心得がある騎士の事だ。腰に下げている魔導書からして炎魔法が得意らしい。
少し癖のある燃えるような真っ赤な髪を、ヘアバンドで邪魔にならないように避けているその横顔には大いに心当たりがある。
ローレッタ聖王国の有力貴族、ロザリー公爵家の令嬢――原作でエリアスの恋人だった女騎士だ。
原作では彼女の兵種は聖騎士のはずだが、目の前の彼女はどう見ても魔導騎士の装備をしている。実際ゲームの中でも、剣を装備できるユニットの中では魔力が高いほうだったので、先ほど挙げた魔法の効果を持つ剣――水晶の剣という武器を使用させるプレイヤーが多かった。
なので、もしかしたら彼女も俺と同じ転生者なのかもしれない。水晶の剣は希少なうえに使用回数も少ない武器だから、魔導方面に鞍替えするというのはありえない話ではない。
少し観察しているうちに、向こうも俺に気が付いたのか一人の騎士が近づいてきた。
「お前が女神とやらから祝福を受けたという勇者か?」
「あぁ。そうだ」
ローレッタ聖王国では、俺に加護をくれた女神は異教扱いなのもあってか騎士も嫌そうな顔を見せてくる。
しかしそんなことをいちいち気にしていては話が進まないので、こちらは気にせず応対する。傭兵稼業やっているうちに鍛えられたのか、自分でも驚くほどに図太い精神を持っているようで騎士に凄まれても全く怖くない。
「ローレッタ聖王国・聖騎士団団長からの書状を貴方に預かってきた。確認なさい」
俺の態度が気に食わないといった様子の騎士を差し置き、ロザリー公爵令嬢――メレディスが一通の書状を俺に渡してきた。
聖騎士団の団長といえば、彼女の父親であるロザリー公爵だ。原作ゲームでは開始前に戦死しているのだが、設定資料集などに書かれている内容からして、聖王国の騎士の中では本物といっていい聖騎士である。
中身にはおおよそ見当がついているが、とりあえず俺は書状の内容を確認することにした。
要約すると、聖王国の騎士団に正式に騎士として迎え入れたい、といった内容だ。
まぁ、俺としても断る理由がないので、ここはまっすぐ王都に向かい聖王国の騎士になろうではないか。そしてミシェルと親友になるんだ!
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