恋人が天使すぎて大変です

傘 １

　「うわ～、すごい土砂降りだね。」
「うげ、俺、折りたたみしかないんだけど⋯大丈夫かこれ⋯」
「結構風も吹いてるよ。風引かないようにね。」
「春樹⋯お前、他人事だと思ってるだろ⋯。」
「そんなことないよ～。ね～、優～。」
　３人は靴を履き替え、昇降口に向かう。
「⋯ん。」
　優が持っていた傘を、彰の胸に押しつける。
「ん？いやいや、大丈夫だから。俺一応、傘持ってるからね。」
「ん。」
「え～。優、彰に傘、貸して上げるの～。優しいね～。」
「いや、優しいね～。じゃねえだろっ。こいつの傘どううすんだよ。」
　春樹が応えるより先に、優が春樹の側まで行った。そして優は、春樹の袖を摘み軽く引く。
「うわ～。優も一緒の傘に入りたかったの～？一緒だね～。」
「いや、それじゃあ、濡れるだろ。」
　優が彰をじっと見つめる。
「⋯なっ、なんだよ⋯。」
　彰がたじろぐが、変わらず優は彰を見続けた。
「大丈夫だって～。彰がその傘使えばいいよ。」
「⋯お、おう、そうか⋯ありがとな。」
　優の一歩も引かない様子に、彰が折れる。
　「優はほんとに優しいね～。う～ん、可愛すぎるぅ～。」
　春樹が優に覆いかぶさるようにして抱きつく。それに優は無反応のままだ。優の反応など、気にせずに春樹は頬ずりまでしている。
「いや、ここ公共の場だから。春樹はもうちょっと自重しろ。優も嫌なら振り払え。こいつちょっと殴っても大丈夫だから。」
　彰は呆れた目で２人を見た。