恋人が天使すぎて大変です

傘 ２

「え～。ひどいよ～。さすがに殴られたら痛いよ～。主に胸が⋯優限定だけど。」
「だったら、公共の場で抱きつくな。」
「そんなこと言われても、我慢出来ないよ～。それに優も嫌じゃないよね～。」
「⋯」
 　相変わらず、優は無表情、無反応。
「⋯ほら～、優だって嫌じゃないって言ってるじゃん。」
「⋯俺には聞こえなかったけど。お前の改竄じゃね？」
「そんなことないよ。ねっ？」
　優は無表情ので、スルッと春樹の腕から抜け出した。優は、スタスタと１人で昇降口へ先に進む。
「やっぱり、嫌だったんじゃねえの？」
「っそ、そんなことないよ。ねえ～、待って優～。」
　春樹が少し焦った顔をして優を追いかけた。彰も追いかけるように、足速に歩く。
「優、ごめんね？嫌だった？」
　優は無言で、春来を見上げる。後から来た彰が、２人を追越す。
「もたもたしってっと、置いてくぞ。」
「うわ、うわ、今行くよ～。」
　春樹が急いで彰に追いつこうと踏み出す。その瞬間、優が春樹の袖を摘み引いた。
「どうしたの？優？」
　優は春樹の袖摘んだまま動かない。彰が、優から借りた傘を開き歩き出す。次の瞬間突風が吹いた。その勢いで、彰が差した傘がひっくり返る。
「うわー。」
　風がやむと同時に、雨も止みだす。
「あはは、彰、ビショビショだし、傘ボロボロじゃん。」
「最悪だ。この傘、もう再起不能じゃん。ごめんな優。」
「⋯。」
「大丈夫だって。ぶっはは。どんまい。」
　彰は、雨も降っていない中、びしょ濡れで帰宅することになった。