激重最強の精霊聖騎士は悪役令息Switchくんを逃さない

鈴屋

文字の大きさ
5 / 12

交流

しおりを挟む
俺と犬を退かして、とうとう彼だけ人混みで見えなくなった。
子供だけではなく、一目見ようと大人の壁が分厚くて行けない。

犬の方を見ると、俺になにか言いたげな瞳を向けていた。
人混みから離れて、犬と一緒に歩き出した。

この近くに見覚えがなくて、俺がいたベンチまでの道のりは長そうだ。
長くても戻らないと俺と犬は迷子のままになる。
はぐれたところで待っていたら、レインやお婆さんも見つけやすい。

犬と宿屋の前まで来て、犬に下を指差しでジェスチャーでお座りするように伝えた。
しかし、俺の命令は聞いてくれずそっぽ向かれてしまった。

ちょっとショックを受けたが、彼のためなら待ってくれるはずだ。
宿屋から少し離れて、勢いよく壁を蹴り上げた。

無意味に庭を駆け回っていたわけではない。
まさかこんな風に使うとも思っていなかったけど…

半分くらい壁を走り、足に力を入れて勢いよく飛んだ。
少年を囲む中心に着陸して、足の痺れで軽くよろけた。

「…君は」

少年と周りの人達は目を丸くしていて、彼への質問責めが止まった。
その一瞬の隙で、少年の手を掴んで人混みを掻き分けて脱出した。

そのまま走ると、犬も後ろから付いて来て追いかけてくる人達が見失うまで追いかけっこが続いた。

やっと店の影に隠れて、見失ってくれた。

足が痺れながら全速力で走ったから、もう動けない。
汚れるのを気にせず、地面に座って小さく息を吐く。

少年は俺の前にしゃがんで、足を持ち上げられた。

びっくりして慌てていると、靴と靴下を脱がされた。

「引きずりながら歩いていたが、痛むか?」

「……」

「助けてくれてありがとう」

少年は足の裏に触れて、俺に微笑んだ。
足が包み込まれるように温かな光がまとった。

痛みと疲れが吹き飛んで、初めて魔力を見た。

優しい力でCommandのように安心感がある。

靴下と靴を履いて、口をパクパクさせた。

俺の方こそお礼がいいたい、付き合ってくれてありがとうと…
でもその声は相手に届かない。

頭を下げて精一杯お礼を表現した。

少年の視線を感じて、顔を上げた。

俺の喉に綺麗な指を這わせて、触れられたところが熱を持つ。

「……っ」

「Speak(話せ)」

その言葉が耳にスッと入ってきた。
俺は話したくないわけではないから、Commandを使われても話せない。

それでも、今の俺は絶対的Domに逆らう事が出来ない。

小さな声で「俺は…」と声が出た。

あんなに出そうとして出なかったのに、こんなに簡単に声が出るとは思わなかった。
枯れてもいないし、いつも通りの声だ。
喉の痛みもなくなって、不調なところがなくなった。

俺はずっと言いたかった事が、無意識に口から出ていた。

「俺の名前はノワール!改めてよろしく」

「ノワール…」

「ちょっとだけ、覚えてくれたら嬉しいな」

声が出なくて、自己紹介が遅れてしまった。
初めて知り合った人だから、友達になりたかった。
有名人っぽいから友達はダメかな。

だからせめて名前を覚えてほしかった。

少年は小さな声で「ノア」と呼ばれた。

全身の熱が一気に顔に集中したように顔を真っ赤にする。
これってCommandか!?命令された気はしないのに、目が泳ぐ。

もしかして俺、喉じゃない別の病気になったのか?

「ノアと呼んでもいいか?」

「は、はい!お好きに呼んでください!」

「Good boy(いいこ)、俺の名前はルイ…こちらこそよろしく」

確かにノワールは長いから、ノアが丁度いいよな!
自分の名前になにか思った事はなかったけど、彼に言われたらいいもののように思えた。

年上だから「俺もルイさんって呼んでもいいですか?」と言うと呼び捨てでいいと言われた。
少しだけ距離が縮まったような気がする。

犬は別の方向に向かって軽く吠えていて、走って行ってしまった。
行った方向を見ると、お婆さんが探している姿が見えた。

俺とルイは遠くから見て、犬と再会出来たらいいかとお婆さんに頭を下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~

Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい 俺だけに命令して欲しい 俺の全てをあげるから 俺以外を見ないで欲しい 俺だけを愛して……… Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、 でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ 俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です! Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。 こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったら引くほど執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

処理中です...