激重最強の精霊聖騎士は悪役令息Switchくんを逃さない

鈴屋

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迷子を追いかけて

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やがて犬の姿も見えなくなり、足を止めた。

周りを見渡しても、ここが何処なのか分からなくなった。
街の中なのは分かるが、完全に迷子になってしまった。

来た道を戻ろうにも、何処から走ってきたのか分からない。
レインか心配している、早く戻らないといけないと歩く。

人に道を聞く事も出来ず、ギュッと手を握りしめた。
声を失ったDomに、どんな価値があるんだろう。

こんな俺を必要としてくれる人はいるのか?

身体が震えて、目元が熱くなるのが分かる。
こんなところで泣くわけにはいかないと、グッと堪える。

陽が落ちる前にレインを探さないといけないのに、マイナスな事ばかり考えてしまう。
もし見つからなかったら、俺は野宿をするのかな。

そう思ったら、お腹も空いてきた…腹を撫でながらその場でしゃがんだ。
せめてお婆さんの犬を連れて帰りたいけど、今日はお祭りで人も多い中探すのが難しい。

人に犬の目撃情報を聞く事が出来て、その場にしゃんで目蓋を閉じた。
ジッとしていたら、人の足音や話し声が気にならなくなる。

その時、小さな犬の鳴き声が聞こえてそちらに視線を向ける。
あっちにいる、行き損になるかもしれないが何もしないよりいい。

犬は飼い主の場所に戻るかもしれない、そうしたら元のベンチに戻れる可能性が高い。

薄暗い路地裏を通り、歩いて路地裏を抜けた。

「ワンッ!」

「Kneel(お座り)、いい子だな」

犬の他に誰かの声が聞こえてきて、犬の頭を撫でていた。
まるで飼い主が彼だと言いたげに懐いている。

あの人、さっき街にいた少年だ…今は一人みたいで他には誰もいない。
まさかまた会うと思わなかった、しかもこんなに短時間に…

さっきは人混みで少し離れていたけど、今は近い。
気のせいではなく、まっすぐに瞳を向けられている。

熱い燃えるような瞳に全身が焦げてしまいそうだ。

俺も負けじと少年を座りながらジッと見つめていた。

「なんで君まで座ってるんだ?Commandに反応したのか」

「……」

少年に言われて、やっと座っている意味が分かった。
急に力が抜けたけど、俺が彼のCommandに反応したから?

さっき彼を初めて見た時も思ったが、俺はDomだ…Subじゃない。

これはお座りじゃなくて、腰が抜けただけだ。

言いたいのに、声が出なくてもどかしい気持ちになる。

それに息も苦しくなり、服を強く握りしめる。
苦しい、頭も痛くて視界がぐにゃりと歪む。

これって、まさか話に聞いていたSub drop?

DomがSub dropになる事なんてない、なのに…なんで…

不安と戸惑いで、これは俺と彼のPlayだと思いたくなかった。

こんな気持ち、初めてだ…嫌だ…痛い、苦しい…助けて…誰か……

「Come(おいで)」

その優しい言葉に導かれるように、少年の腕の間に入る。
スムーズに言葉を聞き入れていて、まるで自分ではないようだ。

頭を撫でられて「Good boy(いいこ)」と言われるだけで、安心する。
さっきまであんなに自分の事が分からなくてパニックになっていたのに…

どのくらいそうしていたのか、落ち着いてきて少年から離れた。
犬は少年の足元にいて、大人しくしていた。

そうだ、俺は犬を捕まえにきたんだ…お婆さんが心配してるはずだ。
犬のリードを掴むと、暴れ回って俺を振り下ろそうと走った。
俺も逃さないようにリードを強く握りしめる。

少年が「Come(おいで)」と言うと、俺と犬は同時に近付いた。

「君は、Subなのか?」

俺と犬の頭を撫でて、そう少年が言っていた。
普通ならCommandに反応したと思うだろう。

でも俺は首を横に振って、地面に「Dom」と書いて自分を指差した。
なにが原因か分からないが、今は本調子じゃないから可笑しくなっていたんだ。

少年は変なものを見るような顔をしていた。

俺が喋れないからではなく、自分をDomと呼んでいるからだろう。
俺が喋れない事には触れなくて、その優しさがありがたかった。

これは嘘ではなく、大真面目で言っているんだ。
俺はDomなんだ、今までSubだった事なんてない。

喉が治ったらまた元のDomに戻るから、その時にちゃんと証明してみせる。
Domとしては、かなり未熟でダメダメだけど…

少年は深くは聞く事がなく、犬を撫でていた。

「君の犬か?」

「……」

お婆さんの説明が難しくて、とりあえず頷いた。
犬に案内してほしかったが少年に懐いていて動きそうにない。

少年は俺に「何処に行きたいんだ?」と聞いてきて、少し困った。
元の場所、お婆さんがいた場所が分からない。

場所を書く事が出来ないから、ベンチの絵だけを書いた。
あの時、周りをよく見ていたら良かったのに…今更後悔しても遅い。

何の特徴もないベンチ、街には沢山同じのがある。

とりあえずウロウロするしかない、もしかしたら運良くレイン達に出会えるかもしれない。

少年には犬を足止めしてくれてとても感謝している。
お礼が言えないから頭を下げると、少年は近くにあった自分の私物なのかローブを掴んだ。

素早く着替えて、フードを深くまで被ると少年の顔が分からなくなる。

「家に帰るまで送る」

「……!?」

街で見た時は綺麗だけど冷たい印象だった。
意外と面倒見が良かったんだな。

俺がお願いする立場なのに、ありがたく好意に甘える事にした。
今日はいろいろと甘えっぱなしだ。
そこまで歳が離れていないみたいだけど、兄がいたらこんな感じなのかな。

俺達はとりあえずベンチの場所を巡って歩いた。
少しでも見た事がある場所なら分かりやすいが、人が多いとよく分からない。

それに彼は目立つみたいで、変装をしていたがすぐにバレていた。
あっという間にいろんな人に囲まれてしまい身動きが取れなくなった。

「ルイ様、今日は一人でお出かけですか?」

「なにかお手伝いする事はございますか?」

「申し訳ないが、そこを退いてほしい」

少年はいろんな人に声を掛けられて、顔が険しくなっていた。
俺が見えていないのか、彼が一人で出歩いているように見えたみたいだ。
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