【完結】改稿版 ベビー・アレルギー

キツナ月。

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序章

体質3

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 これをやってしまうと、完全に切れることはなくとも男との関係は確実に悪化した。
 そして、大体別の女性と付き合うことになってお別れとなる。
 別れ際の言葉は、判で押したように毎回同じ。

 「酷い女」

 冒頭の男、杉野昌也ともほぼ同じパターンを辿った。
 彼の場合、まだ付き合っている頃から新しい女の気配を隠そうともしなかった。
 私がそれだけ「酷い女」ということか。

 学生時代。
 友人が出産した。授かり婚だった。
 出産後ひと月と少し経った頃、他の友人と一緒に彼女宅を訪問した。
 行き先が変わったことを、私は知らないまま。
 分かり切った反応が出た。彼女たちは、私を非難し否定した。
 
 その後、逃げるように上京。
 単に環境を変えるという甘い解決策は、上京後すぐにくじかれた。
 
 家庭とか子供とか。
 そういうことを考える年代に、とっくに入っているのだ。

 私だけ取り残されてる。
 分かってくれない。誰も。

 ささくれ立った半年間を思い返す。
 昌也と破局してからというもの、負の連続だ。

 あの男と別れてから、仕事が手につかなくなった。
 放心状態だった私は、大人ではあり得ないミスを連発。
 大手食品メーカーとはいえ、派遣の立場は弱い。
 上司は、ストレスのため後退した生え際をヒクつかせながら言った。
 お前の代わりは、幾らでもいるのだと。

 契約期間が満たされる前に、お払い箱となった。

 真っ昼間に窓辺で無為な時間を大量消費できるのは、そのためである。


 私の体質を知っている麻由子は言う。

 「またやったの? バカねえ、あんたも」

 「まだ二人きりがいいの、とか言っときゃいいのよ。
 上目遣いでさ」

 「結婚したら気分も変わるんじゃない? 
 自分の子なら、きっと可愛いと思えるって」

 麻由子とは、上京して初めての派遣先で一緒に仕事をして以来の付き合いだ。
 同い年で気も合った。

 彼女は二十五歳の頃、いかにも尻に敷けそうな彼と早々にゴールイン。
 すぐに子供が産まれた。
 現在、二児の母である。
 今でも頼れる親友だ。しかし。

 彼女は分かっていない。
 あの沸々と込み上げる恐怖感は、抑え切れるようなものではないのだ。

 三つ下に弟が産まれた時の衝撃は忘れられない。
 母に言わせると、生まれたての弟を前にした私の泣き声は尋常でなかったとか。
 弟が三つ下ということは、あの時、私は三歳。
 記憶はおぼろげだが、あれがきっかけだったことは間違いない。
 
 医療にすがろうかと思ったことも一度や二度ではない。
 何しろ、「赤ちゃん」が話題に上っただけでパニックになるのだ。
 しかし、頭がヤバい女扱いされることが恐ろしく、実践はしていない。
 自分なりに分析してみると。



 ベビー・アレルギー。



 こんなところではないだろうか。
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