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第二章 十月の修羅場
女子会5
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「んぶっ(ズルい)!」
「あれ。どした、ルナちゃん。
もうお腹減ったの?」
「いい気味だわ、あのババア」
三人とも、それぞれ好き勝手言っちゃって。
私は頭の中がグチャグチャだ。
ベビー。
ユイカさんにはできて、私にはできなかった。
今、どうなってるんだろう。
ベビー・アレルギー。
ルナと生活してけっこう経つけど。
「まぁ冗談は置いといて」
私の心中を察したらしき麻由子が話を切り上げる。
「子供の話は大袈裟だけど、私も佐山さんは良いと思う。
絵美、今の方が楽しそうだもん」
以前の私は表情にどことなく険があり、不健康な印象だったと麻由子は言った。
確かに、あの頃はずっと胃がキリキリしていたと思う。
そっか、私。嫌いじゃないんだ。
今の、こういう状態。
ふいと顔を上げれば、三人が見守るように私に向かって微笑んでいる。
「男はもう懲り懲りよ」
そういう気持ちがまだまだ残っていることも確かだ。
照れ隠しでテレビをつける。
【この地方のニュースをお伝えします。
九月二十七日から行方不明になっている女の赤ちゃんについて、続報です。
本日、赤ちゃんの顔写真が公開されました】
「まだ見つかってなかったんだ?」
指に髪を巻き付けながら、冴子さんがテレビの方へ顔を向けた。
結婚の話題が逸れてホッとしたものの。
このニュース、思い出した。
事件直後にも報道されていた。
【行方不明になっているのは岩崎梨奈ちゃん、行方不明当時生後三ヶ月です。
梨奈ちゃんは九月二十七日、母親に連れられて訪れた『ララマート◯◯町店』内の衣料品店から、何者かによって連れ去られたとみられています】
九月二十七日。
私とルナも、そこへ行っている。
犯人と居合わせた可能性がある。
ユイカさんや昌也に気を取られ、心痛む事件から意識が離れていた。
ここでテレビ画面が切り替わり、行方不明の赤ちゃんの顔が大映しになる。
「ふえぇん」
ルナが身体をよじって愚図り出した。
本格的に腹が減ってきたとみえる。
しかし、私たちは誰一人として身動きができなかった。
冴子さんが声を絞り出す。
「嘘……」
【警察による懸命の捜査が続いていますが、現在のところ手がかりはなく】
今は駅前でビラを配る人々が映し出され、まだ若そうな顔の父親が涙ながらに協力を訴えている。
再び梨奈ちゃんの写真に切り替わると、私たちは異常なくらいそこに釘付けになった。
「うえぇんっ!」
ぷっくりと血色の良い頬。
黒目がちの大きな目が、無邪気にこちらを見つめている。
「ルナ……」
岩崎梨奈ちゃんは、ルナにそっくりだった。
「あれ。どした、ルナちゃん。
もうお腹減ったの?」
「いい気味だわ、あのババア」
三人とも、それぞれ好き勝手言っちゃって。
私は頭の中がグチャグチャだ。
ベビー。
ユイカさんにはできて、私にはできなかった。
今、どうなってるんだろう。
ベビー・アレルギー。
ルナと生活してけっこう経つけど。
「まぁ冗談は置いといて」
私の心中を察したらしき麻由子が話を切り上げる。
「子供の話は大袈裟だけど、私も佐山さんは良いと思う。
絵美、今の方が楽しそうだもん」
以前の私は表情にどことなく険があり、不健康な印象だったと麻由子は言った。
確かに、あの頃はずっと胃がキリキリしていたと思う。
そっか、私。嫌いじゃないんだ。
今の、こういう状態。
ふいと顔を上げれば、三人が見守るように私に向かって微笑んでいる。
「男はもう懲り懲りよ」
そういう気持ちがまだまだ残っていることも確かだ。
照れ隠しでテレビをつける。
【この地方のニュースをお伝えします。
九月二十七日から行方不明になっている女の赤ちゃんについて、続報です。
本日、赤ちゃんの顔写真が公開されました】
「まだ見つかってなかったんだ?」
指に髪を巻き付けながら、冴子さんがテレビの方へ顔を向けた。
結婚の話題が逸れてホッとしたものの。
このニュース、思い出した。
事件直後にも報道されていた。
【行方不明になっているのは岩崎梨奈ちゃん、行方不明当時生後三ヶ月です。
梨奈ちゃんは九月二十七日、母親に連れられて訪れた『ララマート◯◯町店』内の衣料品店から、何者かによって連れ去られたとみられています】
九月二十七日。
私とルナも、そこへ行っている。
犯人と居合わせた可能性がある。
ユイカさんや昌也に気を取られ、心痛む事件から意識が離れていた。
ここでテレビ画面が切り替わり、行方不明の赤ちゃんの顔が大映しになる。
「ふえぇん」
ルナが身体をよじって愚図り出した。
本格的に腹が減ってきたとみえる。
しかし、私たちは誰一人として身動きができなかった。
冴子さんが声を絞り出す。
「嘘……」
【警察による懸命の捜査が続いていますが、現在のところ手がかりはなく】
今は駅前でビラを配る人々が映し出され、まだ若そうな顔の父親が涙ながらに協力を訴えている。
再び梨奈ちゃんの写真に切り替わると、私たちは異常なくらいそこに釘付けになった。
「うえぇんっ!」
ぷっくりと血色の良い頬。
黒目がちの大きな目が、無邪気にこちらを見つめている。
「ルナ……」
岩崎梨奈ちゃんは、ルナにそっくりだった。
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