60 / 130
第三章 十一月の受難
仮想新婚、からの1
しおりを挟む
「まったく。
あなたは仕様がない人ですね」
ルナを抱っこした佐山が、私の横に並ぶ。
二人して、あるものを覗き込んでくる。
「何をどういった割合で配合したら血のように赤いシチューができるのです?」
「その表現、やめてもらっていいですか」
「う……うえぇん」
「ルナ!?
何でコレ見て泣くのよ?」
ワンルームの一角の、小さなキッチン。
佐山は、結局ここに残ってくれた。
助けてもらったお礼も兼ねて、夕食をふるまうことにした。
しかし、出来上がったビーフシチューは……。
ルウを割り入れるだけじゃ味気ないと思ったのだ。
麻由子から、色々混ぜるとコクが出ると聞いていたのだが。
やっぱり私、センスない。
味見をするため、グツグツと煮えたぎる赤い液体を小皿によそう。
チラリと隣の気配をうかがうと。
改めて。
背、高いな。
横から手が伸びて来る。
佐山は指先で小皿のシチューに触ると、それを口に運んだ。
長くて真直ぐな指。
どぎまぎして視線を落とすと、目の前のシャツにはまだシワが寄っている。
自分の行いが思い出されて無駄に心拍が上がる。
あったかかったな、佐山の身体。
私、赤面していないだろうか。
カラダとかそんな……何を考えてるんだろう、私。
思案顔でシチューの味を確かめていた佐山が言った。
「凄いな、食べられますよ!」
「食べるものを作ってます!」
ボコボコと沸騰する鍋の中身を見下ろす。
確かに赤い。
「はいはい。
もう見るのは止めておきましょうね」
佐山は、まだぐしゅぐしゅと愚図るルナの背をさすりながらキッチンを離れていく。
また恥をさらしてしまった。
どうしよう、まだドキドキしてる。
佐山は、さっきのことを何とも思っていないのだろうか。
振り返ると、佐山はルナをあやしつつソファに座っている。
私は、できたての食事を出そうとしている。
なんか一緒に住ん……駄目だ駄目だ、余計なことは考えない!
***
「うーん。不思議な味だ。
何故か後を引く」
午後八時過ぎ。
色々あった割には早めの夕食となった。
ローテーブルに食事を並べ、私たちは向かい合って座っている。
「な、なかなか斬新でしょう?
予定通りだわ」
「しかし、これはビーフシチューではないですね。
宮原さん、あなた」
佐山は真っ赤なシチューをすすった。
「料理ができない人ですね?」
「……」
「やはりな。
初めから怪しいと思っていましたよ」
ルナがけたけたっと笑った。
あなたは仕様がない人ですね」
ルナを抱っこした佐山が、私の横に並ぶ。
二人して、あるものを覗き込んでくる。
「何をどういった割合で配合したら血のように赤いシチューができるのです?」
「その表現、やめてもらっていいですか」
「う……うえぇん」
「ルナ!?
何でコレ見て泣くのよ?」
ワンルームの一角の、小さなキッチン。
佐山は、結局ここに残ってくれた。
助けてもらったお礼も兼ねて、夕食をふるまうことにした。
しかし、出来上がったビーフシチューは……。
ルウを割り入れるだけじゃ味気ないと思ったのだ。
麻由子から、色々混ぜるとコクが出ると聞いていたのだが。
やっぱり私、センスない。
味見をするため、グツグツと煮えたぎる赤い液体を小皿によそう。
チラリと隣の気配をうかがうと。
改めて。
背、高いな。
横から手が伸びて来る。
佐山は指先で小皿のシチューに触ると、それを口に運んだ。
長くて真直ぐな指。
どぎまぎして視線を落とすと、目の前のシャツにはまだシワが寄っている。
自分の行いが思い出されて無駄に心拍が上がる。
あったかかったな、佐山の身体。
私、赤面していないだろうか。
カラダとかそんな……何を考えてるんだろう、私。
思案顔でシチューの味を確かめていた佐山が言った。
「凄いな、食べられますよ!」
「食べるものを作ってます!」
ボコボコと沸騰する鍋の中身を見下ろす。
確かに赤い。
「はいはい。
もう見るのは止めておきましょうね」
佐山は、まだぐしゅぐしゅと愚図るルナの背をさすりながらキッチンを離れていく。
また恥をさらしてしまった。
どうしよう、まだドキドキしてる。
佐山は、さっきのことを何とも思っていないのだろうか。
振り返ると、佐山はルナをあやしつつソファに座っている。
私は、できたての食事を出そうとしている。
なんか一緒に住ん……駄目だ駄目だ、余計なことは考えない!
***
「うーん。不思議な味だ。
何故か後を引く」
午後八時過ぎ。
色々あった割には早めの夕食となった。
ローテーブルに食事を並べ、私たちは向かい合って座っている。
「な、なかなか斬新でしょう?
予定通りだわ」
「しかし、これはビーフシチューではないですね。
宮原さん、あなた」
佐山は真っ赤なシチューをすすった。
「料理ができない人ですね?」
「……」
「やはりな。
初めから怪しいと思っていましたよ」
ルナがけたけたっと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい
葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。
絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。
過去の後悔を拭いたい。
誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる