【完結】改稿版 ベビー・アレルギー

キツナ月。

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第五章 クリスマスの涙

審判2

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 結局、最後まで何者か分からない存在だった。
 私はその存在に頭を下げる。


 「ルナをお願いします。どうか……見守ってやって」


 涙がどんどん溢れた。
 バカ。自分で決めたことなのに。

 ルナを忘れずにいられるか、この力に抗えるか。確証はない。
 必死で笑顔を作る。これが最後ではないと信じて。


 「絵美……絵美ぃ。ありがとう」


 私たちを囲んでいた光が不安定に揺れ始めた。
 多分、残された時間は少ない。

 私はルナの頬に頬を寄せて、その温もりを確かめた。
 あったかい。



 奇跡は、起きなかったんじゃない。



 「楽しかったよ。認めるの悔しいけど。
 ありがと、ルナ」



 ルナは、確かにここにいた。



 「大好きだよ」



 傘を閉じるように、少しずつ光がすぼまっていく。
 ルナの姿に影がかかる。小さくなる。



 ──絵美ぃ、またね!



 ルナの弾んだ声が、少しだけくぐもって聞こえた。


 「うん、またね! ルナ! ルナ!?」

 
 『──おまえが言った通り、私の役目は見守ること。
 それ以外の存在理由を、私は知らない』


 光が弱まるとともに、『声』もはっきりしないものになってきた。
 何度も夢で聞いたのと同じ、くぐもった声だ。


 『──それでも、私は確かに存在する……』


 光は、完全になくなった。


 「ルナ……どこ!? ルナ!」



 ──きゃははっ!



 聞き慣れた、ご機嫌な声が微かに頭に響いた。



 「ルナ!!」




 ***


 パッと電気がついた。
 ワンルームに、手を取り合った男女が一組──。

 部屋の外は猛吹雪だ。
 ゴウゴウと風が唸る以外の音は無い。

 女が我に返ったように口を開いた。




 「メリークリスマス。佐山さん」
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