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ミシェルのお相手

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 「ミシェル、お前はピエール男爵に嫁ぎなさい。」

 「お父様!? 嫌です! 絶対に嫌!!」

 ピエール男爵は確か、58歳で一代限りの男爵。女性好きで、何人もの女性を囲っていると聞いた事があります。

 「ピエール男爵はお前を妻にと、数ヶ月前に言ってきた。一度は断ったのだが、お前を受け入れてくれるそうだ。」

 アンダーソン伯爵は、ケール侯爵からミシェルが噂を流していたことを聞いた後、ピエール男爵に連絡をとっていた。

 「お父様、本気なのですか!? ミシェルとは40も歳が離れてます。それに、子を産んでも爵位を継がせることが出来ません!」

 「お前は優しい子だな。これまで、どれだけミシェルに苦しめられたのだ? これは決定だ。ピエール男爵には、話してある。すぐに嫁ぎなさい。」

 「嫌よ! お母様、助けてください! あんな色ボケジジイなんかに嫁ぎたくありません!」

 「諦めなさい。あなたは、それだけの事をしてきたのよ。何をしているの? ミシェルを連れて行きなさい。」

 命令された使用人達は、ミシェルを強引に馬車へと乗せて、ピエール男爵邸に出発した。

 「お父様……本当にこれで良かったのでしょうか?」

 「仕方がないんだ。何度叱っても、変わる事はなかった。あの様子だと、いつまでもお前の幸せを邪魔するだろう。あの子自身も、幸せにはなれない。」

 だからといって、ピエール男爵に嫁いで幸せになれるとは思えない。色々されてきたけど、さすがに気の毒です。

 ミシェルがピエール男爵に嫁いだ事で、私はケール侯爵との婚約を決めました。愛する人に裏切られた事で、また誰かを愛するようになれるとは思えません。それならば、アンダーソン伯爵家の為に嫁ごうと思いました。
 今の私の正直な気持ちと、それでもよろしかったら申し出をお受けしますと手紙に書いて、ケール侯爵に出しました。返答は、それでいいとの事でした。

 その数日後、ケール侯爵と食事をする事になりました。初めてちゃんとお会いするから、少しだけ緊張しています。イーサン様以外の男性と、二人きりで食事をした事などありませんし、一度もちゃんとお話した事のない方なので、何をお話したらいいのか……。そんな事を考えていたら、あっという間に待ち合わせ場所のレストランへと到着していました。

 「お待たせしてしまい、申し訳ありません。」

 ケール侯爵はすでに席に着いていた。

 「いえ、私も先程着いたばかりです。食事は、おまかせでもいいですか?」

 「はい。お願いします。」

 席に着くと、ケール侯爵はじっとこちらを見てきました。

 「あの……」

 「元気そうで良かった。これでも、心配していたのです。」

 ……イーサン様の事ですね。

 「ご心配をおかけして、申し訳ありません。もう、大丈夫です。」

 イーサン様は、あれから毎日、私を訪ねて邸に来ているそうですが、お父様が追い返しています。
 
 「いきなりですが、すぐに結婚しませんか?」

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