幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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二章

人気者のルドルフ殿下

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 たしかに、間違いではない。けれど、私が見た幻はレイビス様だ。それを、ルドルフ殿下はわかっている。
 レイビス様を、からかいたいだけのように思えてきた。

「おまえとセリーナは、想いあっていないからムダだ」

 レイビス様も、ルドルフ殿下の挑発に乗らない。

「だとしても、俺にはセリーナ嬢の幻が見えた。レイビスがこの先彼女を泣かせるようなことがあれば、その時は覚悟しておけ」
「セリーナを泣かせたりしない。約束する」

 いつもの二人の雰囲気とは少し違う。レイビス様も、本気で答えている。この二人は、本当の友人になれるだろう。
 私たちは、山小屋で一泊して山をおりた。翌日には王宮に帰る予定だったのだけれど……

「この雪では、馬車を出せそうにありません」

 ずっと降り続けている雪で車輪が埋もれてしまい、馬車が出せないとのことだった。雪の国には、よくあることだそうだ。

「では、今日はここに泊まりましょう」

 メーガンたちが泊まっていた宿に、一泊することになった。といっても、この街には宿が一軒しかないのだけれど。
 窓の外は一面雪景色。数時間でさらに積雪は増し、歩くのも困難な状態になっていた。

「ねえ、メーガン。みんなは、なにをしているのかな?」

 窓の外を見ていたら、不思議な光景が目に入った。
 宿が雪に埋もれないように雪かきをしているのはわかる。ただ、どんどん人が集まってきている。

「雪かき……にしては、人が多いですね」
「ちょっと見てくる」
「え、セリーナ様!? 積雪が多く、危険です」
「私が行く。メーガンは、クウとここにいてくれ」

 一日中、宿から出られないことに息が詰まりそうだった。走り出した私のあとを、カタリーナが追いかけてくる。
 入口の扉を開くと、街中の人たちが集まっていた。子供も大人も老人までも、みんなが宿の周りの雪かきをしている。

「セリーナ、風邪をひくといけないからこれを」
「ありがとう、カタリーナ」

 持ってきたコートを、カタリーナは私の肩にかけてくれた。

「この街の人たちは、助け合っているのですね。素晴らしいです!」

 周りを見渡しながらそう言った私を、街の人たちがくすくすと笑い出した。なにか変なことを言ってしまったのかと考えてみたけれど、なぜ笑われているのかわからない。

「お姉ちゃん、内緒だよ。これはね、ルドルフ殿下のためなんだ」

 そう話してくれた女の子に、詳しく話を聞くことにした。
 どうやら街の人たちは宿のために雪かきをしているわけではなく、ルドルフ殿下のためにしているようだ。
 私たちはお忍びで訪れていて、レイビス様もルドルフ殿下も身分を明かしてはいない。けれど、ルドルフ殿下は何度もこの街を訪れていて、すぐにわかったのだそうだ。
 この街はほかの地より積雪量が多く、観光客も少ない。雪の花も見れた者は少なく、集客効果はあまりないそうだ。そんな街を心配して、殿下は何度もここに訪れていた。
 どんな街でも見捨てることなく、殿下は改善策を探す。ルドルフ殿下に救われている街は、いくつもあるのだとか。
 そんな殿下に少しでも恩返しをしたいと、こうして宿の周りの雪かきをしに街中の人が集まっていた。

「私も手伝うわ!」
「セリーナ、本気か!? 雪は重いのだぞ!?」

 カタリーナは、私に力がないと思っているようだ。貧乏子爵家の私を、甘やかされて育った貴族令嬢と一緒にしないでもらいたい。

「こんなに小さな女の子だってできるのだから、私にだってできるわ!」

 スコップで雪をすくい、その雪を台車にのせる。カタリーナも手伝ってくれて、ひたすら同じ作業を繰り返す。

「セリーナ!? なにをしているんだ!?」

 メーガンに聞いたのか、レイビス様も合流する。

「雪かきです。案外難しくて、コツがいるみたいです」
「止めても無駄なんだろ? だから、無駄なことはしない」

 レイビス様もスコップを持ち、雪かきを始める。
 そして、ルドルフ殿下にも見つかった。

「セリーナ嬢!? なにをやって……」
「殿下、はいどうぞ」

 いい終わらないうちに、スコップを手渡す。

「……本当に、変わった人だ」

 苦笑いを浮かべながら、素直に雪かきを始める。
 あれ? みんな殿下のために雪かきをしているのに、本人にやらせるのは間違っていたかな?
 そんな疑問も浮かんだけれど、誰も殿下に触れないし、みんな楽しそうに作業をしているから気にしないでおこう。
 殿下がお忍びで訪れているからか、知らないフリをしようとしているようだ。
 そんな街の人たちも、街の人たちに慕われる殿下も素敵だと思う。この国と友好関係を維持できたことは、本当によかった。

「みんな、ご苦労様。食事の用意ができているから、食べていって」

 宿の周りがすっかり綺麗になったところで、中から出てきたおばさんが笑顔でそう言う。おばさんは雪かきをしてくれている街の人たちのために、あたたかい食事を用意してくれていた。

 宿の一階は食堂になっていて、たくさんのテーブルが並んでいる。そのたくさんのテーブルいっぱいに、美味しそうな料理が並べられていた。

「うわあ! これ、食べていいの?」

 説明してくれたさっきの女の子が、目をキラキラさせながら並べられた料理を見ている。

「もちろんだよ! さあ、遠慮しないで食べておくれ!」

 街の人たちが楽しそうに食事を始める。

「レイビス様ですよね?」
「なんのことだ? セリーナも食べないと、なくなってしまうぞ」

 認めようとはしないけれど、この料理を用意させたのはレイビス様だろう。彼が、こっそりおばさんと話していたのを知っている。
 この街にはお金がない。それは、さっきの女の子が説明してくれた。雪かきのお礼だからと、こんなにたくさんの料理を無料で出してしまったらお店が潰れてしまう。
 レイビス様のそんな優しさに、心があたたかくなるのを感じた。
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