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二章
懐かしいドレス
しおりを挟む雪の街を堪能して、私たちは王宮へと戻ってきた。
雪の花に雪の街、なんだか新婚旅行にきたみたいにガレスタ王国を楽しんだ。それに、指輪までいただいてしまって幸せいっぱい。
「数日後には、国境から兵が戻ってくるそうだ」
「いよいよ、皆さんともお別れなのですね」
クリフ様にミリアナ、ルドルフ殿下に王太后様。ついでに、宰相。
仲良くなった方々との別れは、何度経験してもなれそうにない。
「明日、俺たちのためにパーティーを開いてくれるそうだ。この前のパーティーはガレスタ王国を探ることで頭がいっぱいだったから、明日のパーティーは楽しもう」
パーティーはあまり好きではないけれど、皆さんと楽しく過ごせるのは嬉しい。
パーティー開始まであと三十分、ドレスに着替えて鏡の前に立つ。
「私……太ったみたい……」
このドレスは、レイビス様から初めていただいたドレスだ。学園のダンスパーティーで着た時は、もっとウエストがスッキリしていた。それが今は……
「そのようですね。ガレスタ王国に来てから、美味しいものをたくさんいただいたのですね」
メーガンが鏡に映る私の姿を見ながら、大きなため息をつく。美味しいものを、たくさんいただいた自覚はある。ため息をつかれても、なにも言えない。
「レイビス様にこのドレスを着たところをもう一度見ていただきたかったけれど、諦めた方がよさそうね」
「まだ手はあります。もっとコルセットをきつくしましょう」
「え……え? えぇ……!?」
コルセットの紐をギュッとしめられ、息ができなくなる。メーガンの細い腕のどこにそんな力があるのか不思議に思えるほどキツく締め付けられ、終わった頃にはぐったりしていた。
「いかがですか?」
得意げな表情で、私に鏡を見るよう促す。鏡に映ったドレス姿の私のウエストは、ほっそりとしていた。
「……すごい! メーガン、本当にすごいわ! 少し……いいえ、かなり苦しいけれど我慢する」
レイビス様は、覚えているだろうか。あの時は受け取るか迷っていたけれど、今は受け取ってよかったと思っている。
このドレスは、レイビス様が私に似合うものを選んでくださったのだそうだ。あの時のレイビス様の想いが込められている、大切なドレス。
これからも着られるように、ダイエットしなければならない。
支度が整ったあと、レイビス様が迎えに来た。
扉を開けると、彼は驚いて目を見開いている。
「レイビス様?」
「そのドレス、また着てくれたんだね」
覚えていてくれたようだ。
「綺麗だ。とても」
いつも綺麗だと言ってくれるけれど、今日はいつもと違う気がする。苦しいのを我慢して、このドレスを着てよかった。
パーティーが開催されるホールに入ると、私たちに気づいた貴族たちが集まってきた。
「レイビス殿下とセリーナ様がいらしたわ!」
「お二人にこの国は救われました。本当に、感謝しています」
「さすが、セリーナ様ですわ」
この状況は、この国に来たばかりの時に開かれた舞踏会にそっくりだ。
「皆さん、それくらいになさってください。お二人が困っていらっしゃいます」
そういえば、舞踏会の時も同じように声をかけてくれた方がいた。けれど、カシム様はもういない。
声をかけてくれたのは、ルドルフ殿下だった。
「まあ、ルドルフ殿下! お元気になられて、本当によかったですわ」
「弟君を庇うなんて、さすが殿下です」
カシム様とは違って、ルドルフ殿下は上手く交わすことができないようだ。
「え、いや、皆さん落ち着いてください」
レイビス様と私を囲んでいた貴族たちは、ルドルフ殿下の周りに集まりだした。
冷たいと思っていたルドルフ殿下が身体を張って弟を守ったことを知り、殿下への印象が変わったのだろう。
「カシム様とは違う形ですが、ルドルフ殿下のおかげで助かりましたね」
「あいつは、不器用だからな……」
レイビス様はすっかりルドルフ殿下のことを理解しているようだ。二人の間にも色々あったけれど、友人になれたようで安心した。
「セリーナの好きな物ばかり並んでいるぞ」
並べられている料理を見ながら、レイビス様が私に取り皿を手渡す。
どれも美味しそうだけれど、苦しくて食べられそうもない。
「どうした?」
「お昼を食べすぎてしまったのか、まだお腹が空いていません」
「セリーナ、具合が悪いのか? 気づいてあげられなくて、悪かった」
料理を遠慮しただけで、体調が悪いと思われた。なんだか、納得がいかない。
「私は元気です。レイビス様は、たくさん食べてくださいね」
少し不機嫌になる私を見て、わけがわからないという顔をするレイビス様。
レイビス様は、なにも悪くない。心配してくれたのに、変な態度を取ってしまった。自分が大人気ないと、反省する。
「ご心配をおかけして、すみません。少し、ダイエットをしようと思っただけです」
「具合が悪くないのなら、いいんだ。だが、セリーナはダイエットなんて必要ないと思う」
ドレスを無理して着ているなんて言えない。
「お兄様は、本当に鈍感ね。セリーナは、お兄様のために綺麗でいたいと思っているのよ。それくらい、察していただかなくては」
後ろから聞こえたこの声……幻聴?
ゆっくりと振り返ると、そこにはずっと会いたかったシェリルの姿があった。
「シェ……リル? どうして?」
今すぐ抱きつきたい気持ちもあるけれど、驚きが勝ってしまって動くことができない。
「セリーナ、久しぶり! ガレスタ王国まで、来ちゃった!」
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