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二章
あんなことやこんなこと
しおりを挟むシェリルがここにいることが、夢じゃないかと思える。
「おまえ……こんなところまできて、なにしてるんだ?」
驚き方を見ると、レイビス様も知らなかったようだ。
「私は、外交のためにガレスタ王国に来たの。問題は全て解決されたと報告を受けて、友好関係を結ぶようにとルギウスから頼まれたのよ」
相変わらず、情報を手に入れるのが早い。ルギウス様が、シェリルに頼むのもわかる。彼女は、とても有能だ。
「解決するのを待ってから来るとか、ずいぶん狡猾だな」
「解決されなかったら、ルギウスが許可してくれなかったの。私だって、セリーナの力になりたかったわ」
グルダ王国は大変な時なのだから、他の国のゴタゴタに巻き込まれている場合ではない。
ほんの数日でも、シェリルと一緒にいることができるなんて嬉しい。
「シェリル、少し痩せたんじゃない?」
シェリルの手を取り、彼女の温もりに触れる。とても温かくて、シェリルがここにいるのだと実感できた。
「セリーナは、少しお肉がついたみたいね」
意地悪な笑みを浮かべて、私をからかうシェリル。
「シェリルったら、酷いわ」
酷いと言いながら、顔がにやけてしまう。
「ガレスタ王国は、美味しいものが多いのね。二人で堪能するなんて、ずるいわ!」
先程レイビス様から手渡された取り皿に料理を取り、拗ねた顔をするシェリルに差し出す。
「美味しいから、たくさん食べて。シェリルに会えて、すごく嬉しい!」
「セリーナは、優しい! お兄様なんて、嫌味しか言っていないわ。可愛い妹に久しぶりに会えたというのに、酷いと思わない? ねえ、セリーナ」
頬を膨らませてレイビス様を見ながら、料理ののった取り皿を受け取るシェリル。
「レイビス様、シェリルに会えたことを素直に喜びましょう」
レイビス様も、シェリルのことを心配していた。会えて嬉しいはずなのに、素直じゃない。
「まあ、元気そうでよかった」
照れくさいのか、シェリルと目を合わそうとしない。
「元気ですわ。ありがとうございます」
シェリルも、レイビス様と目を合わそうとしない。この兄弟は、本当に素直じゃない。
「シェリルに会えたから、お腹が空いてきちゃった。スウィーツをいただこうかな」
「大丈夫なの? ドレス、苦しいんじゃない?」
そんなことまで気づかれてたのかと思うと、恥ずかしい。
「だってそこに美味しそうなスウィーツがたくさんあるのに、食べられないなんて悲しすぎる!」
「セリーナらしい。ふふっ」
ダイエットは明日からすると心に決めて、取り皿にスウィーツを数種類のせて食べ始める。
「美味しい!」
「このお肉も美味しいわ!」
「俺も食べる!」
美味しいものを食べながら、今までどうしていたかとか、なにがあったのかとか、たくさんの話をした。
シェリルがいると、昔に戻ったような感覚になる。
パーティーが始まる直前に、シェリルはガレスタ王国に着いたそうだ。このパーティーは、私たちを驚かすのにちょうどいいと思ったのだろう。
「クリフ様の挨拶が始まるみたい」
舞踏会でのクリフ様は、人形のように冷たかった。けれど、今はもう違う。
「皆、よく集まってくれました。この国は何度も危機に晒されましたが、友好国であるグランディのレイビス殿下とセリーナ嬢に救われました。お二人がいなかったら、どうなっていたことか……考えるだけで恐ろしい」
クリフ様の隣には、ホワイトが凛とした姿で立っている。そして、その隣にはミリアナ。ミリアナの隣には、ルドルフ殿下が立っている。
「そのような事態が起きたのは、僕が未熟だったからだと反省しています。僕は、もう迷いません。ルドルフ兄上と共に、この国を守ります! この国の恩人である、レイビス殿下とセリーナ嬢に盛大な拍手をお願いします」
クリフ様は、本当にご立派になられた。クリフ様の目から、力強さを感じる。最初の頃、国王になりたくなかったと言っていた弱い男の子はもういない。
ホール中の貴族たちが、私たちに向かって拍手をしてくれる。けれど、私はクリフ様から目が離せない。
「クリフ様……よく頑張りました」
クリフ様の立派な姿を見たら、涙が溢れて止まらない。
「セリーナ!? どうしたの!?」
涙を流す私を見て、シェリルが驚く。ふと横を見ると、レイビス様まで涙を流していた。
「あいつ、立派になって……」
「お兄様まで!」
シェリルは私たちの顔を交互に見ながら、笑い出す。
「ふふふ……二人とも、まるで自分の子の成長を喜ぶ親みたい」
「仕方ない……ぅぅ……じゃない。クリフ様……ぅぅ……本当に頼もしく……なられたんだもの」
メーガンが気合を入れて頑張ってくれたメイクも、きっとぐちゃぐちゃだろう。
これからのクリフ様を近くで見守ることはできないけれど、この瞬間を忘れることはない。いつかきっと、誰からも認められる王になるに違いない。
「セリーナ、メイクを直しに行きましょう。そんな顔じゃ、皆さん驚いてしまうわ」
まだ泣いているレイビス様を一人残し、シェリルに連れられてメイクを直すためにホールを出る。
「カタリーナも、久しぶりね」
後ろからついてくるカタリーナに、シェリルは笑いかける。
「シェリルに会えて、嬉しい」
「情報、いつもありがとう。おかげで、セリーナとお兄様が七ヶ月前から進展していないこともわかったわ」
そういえば、カタリーナはシェリルにも報告をしているんだった。
「進展はしていないけれど、気持ちは大きくなったわ!」
「セリーナらしい。私なんて、ルギウスとあんなことやこんなことまでしているわ」
「え……!?」
あんなことやこんなことがよくわからないけれど、なんだかすごいことのような気がする。
「シェリル、セリーナをからかうな。早くメイクを直しに行こう」
「だって、セリーナが可愛いんですもの」
私はからかわれたの?
結局、わけがわからないままメイクを直してホールへと戻った。
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