〖完結〗旦那様は私よりも愛人を選ぶそうです。

藍川みいな

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偽物の指輪

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 「シャーロット様、これからどちらへ?」

 「王都に行こうと思う。」

 邸を出て、街中を歩いていると……

 「シャーロットだわ。追い出されたそうよ。」
 「やっとか! 何が聖女だ! あいつなんかいなくても、この街は平和だ!」

 どうやら街の人にも、私は嫌われていたみたい。

 「シャーロット様が、この街を守って来たのに! お前ら! いい加減にしろ!」

 「トーマス、やめて。仕方ないよ。私は孤児だったから、よく思われない事はわかってた。聖女の数は少ないから、聖女が信じられない人もいるだろうし。」

 この国で、孤児は最も嫌われている。貴族は平民をバカにし、平民は親のいない孤児をバカにする。人間て、なんて醜いんだろう。
 だから、孤児の私を愛していると言ったルーク様に惹かれてしまったのかもしれない。

 「そういえば、トーマスは平民だよね。孤児だった私に仕えるなんて、嫌じゃなかったの?」

 「そんな事を気にした事はありません。シャーロット様はシャーロット様ですし、どんなに頑張っていらしたかは、俺が一番知っています。」

 バカな質問しちゃったな。

 「ごめん。ねえ、この辺に、指輪を買い取ってくれるお店はないかな?」

 「そうですね……この先に、宝石店があるので買い取ってくれるか聞いてみましょう。」

 宝石店に入ると、早速交渉してみる。

 「すみません、この指輪を買い取っていただけませんか?」

 「少々お待ち下さい。………これは、買取はできませんね。」

 「え……? どうしてですか!?」

 「偽物だからです。」

 ありえない……偽物ですって!? 
 この指輪は、ルーク様からいただいた唯一のものだった。結婚した時に貰った結婚指輪……もう必要ないから、売って旅の資金にしたかったのに、指輪まで偽物だったなんて……なんてやつなの!

 「これは、結婚指輪ですよね? 偽物だなんて、旦那様は最低の人間ですね……」

 「はぁ……仕方ないわ。行きましょう。」

 宝石店を出て、食品店でパンと水を買い、次の町へ向かう事にした。

 お金は少ししかないけど、食べ物を買わないわけにはいかないし、とても王都までお金がもちそうにない。これからどうしよう……

 次の町へ行こうと歩いていると、

 「おじいちゃん! しっかりして!」

 女の子の声が聞こえて来た。
 声がした方へ急いで向かってみると、ケガをしたお爺さんの横で、女の子が心配そうにお爺さんの体を揺らしていた。

 「大丈夫ですか!? 何があったんですか?」

 「ドウェイ爺ちゃん!?」

 「トーマス、知ってる人なの?」

 「同じ村に住んでいました。」

 「おじいちゃんが……ぅぅ……荷馬車から落ちた荷物を……ヒック……拾おうとして……足を踏み外して落ちちゃったの……」

 「ちょっと見せてもらってもいい?」

 「ぅぅぅぅ……」

 とても痛いのか、お爺さんはうめき声をあげている。

 荷馬車から落ちた時、骨を折ってしまったのね……
 
 シャーロットがパンパンに腫れているお爺さんの足に触れると……

 スゥーーーッと、足の腫れがひいた!

 「……痛く……ない……? これは、いったい……」

 「爺ちゃん、大丈夫か?」

 「トーマス? トーマスじゃないか!?」 

 「もう年なんだから、気を付けろよ。」

 「もう大丈夫ですよ。荷馬車から降りる時は、気を付けてくださいね。」

 「おじいちゃんの足が……治ったの? よかった……本当によかった!」

 「あなたは……もしかして、シャーロット様ですか?」

 「どうして私の名を?」

 「私共は、シャーロット様が救ってくださったダナ村の者です。」

 ダナ村は、シャーロットが3年前に救った町だった。

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