〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな

文字の大きさ
8 / 42

8、衝撃の真実

しおりを挟む


 「……私の両親は、お父様とお母様ではないとはどういうことなの?」

 どういうことなのか、さっぱり分からない。

 「全てを、お話します」

 ケリーは、覚悟を決めたように話し始めた。
 
 母のサラは昔、王妃様の侍女をしていたそうだ。王妃様はとても気さくな方で、子爵令嬢だった母を侍女としてではなく友人だと思っていた。その後母は父と結婚し、侍女を辞めた。その後も、王妃様と母は仲良くしていたそうだ。王妃様と母は同時期に妊娠し、自分達の子が同級生になると喜んでいた。
 出産予定日が近付いても、母は王妃様を訪ね、王妃様は「もし王宮で出産することになったとしても、サラのお腹の子が無事に産まれるよう主治医にお願いしているから安心してね」と仰っていた。そんなある日、王妃様が先に産気づいた。その後すぐに母も産気づき、王宮で二人の出産が始まった。
 王妃様は何度も、「サラを……サラの出産を手伝って……」と主治医にそう仰っていたそうだ。けれど、王妃様は難産で母子共に命の危険があった。王妃様の側を離れるわけにはいかず、隣りの部屋に運ばれた母の方には誰も来なかった。ケリーはその時母の侍女で、ケリーだけが母の出産を手伝っていたそうだ。母は無事に女の子を出産し、その三十分後に王妃様も女の子を出産した。

 「産気づいて直ぐに、王妃様は意識を失ってしまい、奥様を気にする方が誰もいませんでした。出産した後も、部屋には主治医どころか誰も訪れません。王妃様のお命が危うかったのだから、それも仕方のないことだったと思います。ですが、奥様は王妃様に裏切られたのだと感じたようです。そして奥様は私に、産まれたばかりの子を王妃様がお産みになった王女様と入れ替えるように仰ったのです」

 「つまり、私の両親は……」

 「この国の国王陛下と王妃様です。レイチェル様は、王女様なのです!」

 にわかには信じることが出来ない。けれど、ケリーの顔は真剣そのもので、彼女が嘘をつくとも思えない。

 「入れ替えたことは、気付かれなかったの?」

 「あの日、医師達は王妃様の体調を気遣うことで精一杯でした。幸い、産まれたばかりのレイチェル様は健康で、医師も使用人達も安心していました。私は隙を見計らって、オリビア様とレイチェル様を入れ替えたのですが、王女様の足の裏にはホクロが四つあったのです。気付かれないように、オリビア様の足の裏にレイチェル様の足の裏と同じようにホクロを描きました……。すぐに落ちてしまったでしょうけれど、汚れかもしれないと思われたようです。私があのホクロを描かなければ、すぐに入れ替えたことに気付いてもらえていたかもしれません……私が、余計なことをしなければ……」

 ケリーはその場に膝をつき、泣き崩れた。
 確かに、私の足の裏にはホクロが四つある。そのせいで、ケリーを苦しめてしまったのかもしれない。
 ケリーの話を聞いて、オリビア様の侍女のことを思い出した。命令をされたら、主人に従わなければならない……それなのに、罰を受けるのは理不尽だ。

 泣き崩れるケリーを、そっと抱きしめる。

 「どうして話したの?」

 知らなければ良かったと思えた。

 「……レイチェル様が、王妃様にお会いになったとお聞きした時、全てを知っていただかなければと思いました。レイチェル様は昔の王妃さまに、よく似ていらっしゃいます。最初は旦那様も奥様も、大それたことをしてしまい、いつ気付かれてしまうのかと怯えていました。時が経つと、自分達が王女様をどうにでも出来るという優越感を得るようになり、レイチェル様を冷遇なさるようになりました。大切にするどころか、レイチェル様を虐げ続け、何も知らないキャロル様までレイチェル様を見下すようになっていきました。これ以上は、黙っていることが出来ません。私がしたことを、陛下に全てお話しします。ずっと騙していて、申し訳ありませんでした」

 ケリーが隠し続けて来た真実を、私はまだ受け止めることが出来ていない。けれど、これだけは言える……私はいつだってケリーに守られて来た。

 「今私が生きているのは、ケリーがいてくれたからよ。ケリーだけが、流行病に侵された私を看病してくれた。家族からも使用人からも見放された私の側に、ケリーだけがいてくれた。もういい……もういいから、苦しまないで。それと、このことを陛下にお話しする必要はないわ」

 「レイチェル様!?」

 このことを知られたら、ケリーの死は免れないだろう。例え命令されたことだとしても、大罪を犯してしまったからだ。王妃様とは今日お会いして、お優しい方だということは分かったけれど、陛下とお話したことはないからどのような方か分からない。ケリーを助けて欲しいとお願いしたところで、願いを聞いてくれるかどうかが判断出来ないのだ。
 ケリーを守ることが出来るなら、家族に虐げられようと、私はこのままで構わない。けれど、両親のことは許せない。ケリーが処罰されないような、何かいい方法を考えなければ。


しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

あなたの幸せを、心からお祈りしています

たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」 宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。 傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。 「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」 革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。 才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。 一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。 けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。 「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。 ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。 そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。 学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。 けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。 暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。 ※10万文字超えそうなので長編に変更します。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

処理中です...