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7、ケリーの告白
しおりを挟むエリック様は、顔を真っ赤にしながら激怒している。彼に激怒される覚えはない。
「レイチェルに、近寄るなと言ったはずだが?」
エリック様から庇うように、ディアム様が私の前に立った。この前の近寄るなという発言は、本気だったようだ。
「君には関係ない! オリビアは、一週間の停学になった! レイチェルが、オリビアに何かしたからだろう!?」
学園長は、オリビア様を停学にしたようだ。オリビア様のことだから、侍女が勝手にしたことだと言い訳しただろう。オリビア様は王女だから、処罰されるのは侍女だけだと思っていた。停学にするとは、意外だ。
「エリック様には、何も見えていないのですね。うわべだけのオリビア様を信じ、中身を見ようともしない。部屋のドアに何度も悪口を書かれたので、その犯人を捕まえて学園長に引き渡しました。犯人は、オリビア様の侍女でした。それでも、私が何かしたと仰るのですか?」
エリック様への気持ちは、すでに消え去っている。それでも、学園に入るまで彼に救われていたのは事実だ。これ以上、幻滅させないで欲しい。
「そ……れが事実なら、その侍女が勝手にやったことだ! オリビアは、きっと知らなかったはずだ!」
「本気で仰っているのですか? オリビア様を大切に思っていらっしゃるなら、叱ることも必要です」
エリック様は納得した様子ではなかったけれど、何も言わずに教室から出て行った。
彼にとって、オリビア様がどんな存在なのかは分からないけれど、盲目的に信じるには危険な相手だ。
その日の放課後、学園長室に呼び出された。学園長室に入ると、そこには……
「失礼します……えっ……王妃様……!?」
この国の王妃様が、なぜか学園長室にいた。
「……あなたが、レイチェル?」
私の顔を見た瞬間、王妃様は一瞬驚いたように見えた。
「は、はい!」
まさか王妃様がいるとは思っていなかった私は、驚き過ぎて声が上ずってしまう。
「緊張しないで? 私はあなたに、謝りに来たのだから」
遠くからお姿を拝見したことはあったけれど、こんなに近くで見るのは初めてだ。すごく綺麗で聡明で、優しそうな方……
「謝る……とは?」
「オリビアが、迷惑をかけたそうね。本当にごめんなさい。甘やかしたせいか、わがままに育ってしまった。本人にも謝らせるつもりだけれど、私が直接謝りたかったの」
王妃様は、丁寧に頭を下げた。
一国の王妃様が、伯爵令嬢に頭を下げるなんて有り得ない。
「おやめ下さい、王妃様!」
慌てて止める私の顔を、王妃様はジッと見つめた。学園長室に入って来た時もそうだったけれど、王妃様の様子に違和感を感じる。
学園長は王妃様の妹君で、直接知らせたのだそうだ。侍女はオリビア様に命じられ逆らえなかったという点は考慮されたけれど、実行したのは事実。学園から追放され、職を解かれたそうだ。
問い詰めた時、オリビア様の命令だとは頑なに認めなかった。主人を守ろうとする侍女が、罰を受けなければならないのは少し可哀想だけれど、仕方がない。
「あなたの婚約者の話を聞いたわ。本当に、申し訳ないと思っているの。あの子はまだ、自分が病弱だと言っているのね……。主治医にも何度も診てもらったけれど、健康そのものなのよ。嫌な思いをさせてしまったわね」
オリビア様が私に嫌がらせされたと言い出してから、病弱だということを完全に信じていたわけではなかったけれど、健康そのものだとは思わなかった。彼女はそうまでして、何がしたいのだろうか。病気だからと誰かを繋ぎとめたところで、愛されているわけではない。
「婚約者のことは、本当の彼を知ることが出来たことに感謝しています。ですから、お気になさらないでください」
「そう言ってくれて、感謝するわ」
王妃様の笑顔は、どこか悲しげに見えた。
寮の部屋に帰ると、一気に気が抜けた。
「はぁ……緊張した……」
「お帰りなさいませ。何かあったのですか?」
「王妃様にお会いしたの。とてもお優しい方だったわ」
『王妃様』と口にすると、ケリーの顔色が変わった。
「……これ以上、レイチェル様を騙し続けることは、私には出来ません!」
騙す? 何のことなのか、私にはさっぱり分からない。
「ケリー?」
「レイチェル様のご両親は、クライド伯爵……旦那様と奥様ではありません!」
思いもよらなかったケリーの告白に、頭の中が真っ白になっていた。
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