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6、犯人は
しおりを挟む「ふぁ~あ……」
デイジーが、貴族令嬢とは思えないくらい大きな口を開けて欠伸をした。あれから三日、ほとんど寝れていないのだから仕方がない。
「デイジー、大丈夫? クマが出来てる」
待っている時は、全く来てくれない。さすがに、私も眠い。
「私達を待たせるなんて、頭に来る犯人よね! 人数が多い方がいいけど、夜更けの女子寮にディアム様を呼ぶわけにいかないし」
デイジーと私、ケリーとデイジーの侍女のカーリーの四人で交代しながら見張っているけれど、今の所何も起きていない。さすがに疲れがたまってきて、今日は授業中に居眠りをしてしまった。
「付き合わせてごめんね」
「私から誘ったの、忘れた? 捕まえるまでは、絶対に諦めないからね!」
デイジーは全然ない力こぶを見せて、やる気満々アピールをした。可愛くて笑ってしまうと、「緊張感が足りない」と怒られてしまった。
「どうして私の為に、ここまでしてくれるの?」
今まで、友人と呼べる存在はいなかった。
妹のキャロルはたくさんの友達に囲まれていたけれど、私はいつもひとりぼっちだった。ケリーが両親に内緒で買ってくれた本を、毎日少しずつ読むのが唯一の楽しみで、読み終わるとまた新しい本を買ってくれた。そんな毎日を送っていた時、エリック様と出会った。今思うと、ひとりぼっちの私が可哀想だっただけなのだろう。
学園に入学しても、友達は出来なかった。話しかける努力はしてみたけれど、『エリック様の婚約者』の私と仲良くしてくれる人はいなかった。
「私ね、オリビア様に酷い目にあわされて以来、友達を作るのが怖かったの。また嫌な思いをするくらいなら、友達なんていらないと思っていたんだけど……レイチェルと出会えて、もう一度誰かを信じてみたいと思えた。上手く言えないけど、レイチェルには人を惹きつける何かがあると思う」
そんなこと言われたのは、初めてだ。自分ではそんな風には思えないけれど、デイジーの気持ちは素直に嬉しかった。嬉しくて涙ぐんでいると……
「あと、オリビア様に復讐するチャンスだもの! ふふふっ」
悪い顔になってる……
デイジー、私の感動を返して。
「……今の、聞こえた?」
ドアの向こう側から、カタンという音が聞こえた。私はトレイを持ち、デイジーはほうきを持って、ドアを勢いよく開いた。
「きゃっ!」
いきなりドアが開いて驚いたのか、女性が尻もちをついている。
「あなた、オリビア様の侍女ね……」
ドアに悪口を書きに来たのは、オリビア様の侍女だった。
侍女は認めなかったけれど、オリビア様の命令で私の部屋のドアに悪口を書いていたようだ。内容から、オリビア様が関わっていたことは分かっていたから驚きはしない。侍女の身柄は寮長に預け、寮長は学園長に知らせた。
翌朝、学園長室に呼ばれて事情を話すと、学園で起きたことだから侍女の処分は学園側に任せて欲しいと言われ、それを承諾した。
「犯人捕まって良かった! 今日から、ぐっすり眠れるわねー!」
「その前に、授業があるけどね。付き合ってくれて、本当にありがとう」
二人共酷い顔だけれど、気持ちはスッキリしていた。その後、一時間程睡眠をとってから学園に登校した。
「……顔が、死んでるぞ?」
私達の顔を交互に見ながら、ディアム様がそう言った。睡眠時間が一時間では、全然足りなかった。気を抜いたら、今にも眠ってしまいそうだ。
「ディアム様の肌は、ツルツルピカピカで血行も良さそうで羨ましいです。ぐっすり寝たのですね」
「なんだか、憎たらしい……」
なぜかデイジーは、ディアム様を睨み付けている。何も悪いことはしていないのに、少し可哀想だ。
まだオリビア様は登校していないのに、エリック様だけ教室に姿を現した。そのままこちらに向かって歩いて来た。
「レイチェル……君は、オリビアに何をしたんだ!?」
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