〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな

文字の大きさ
16 / 42

16、本当の父

しおりを挟む


 停学が明けたオリビア様は、すっかり大人しくなっていた。陛下に王宮へと呼び出され、ものすごく叱られたと殿下に聞いた。それでも、エリック様と婚約をしたいと譲らなかったそうだ。

 「セイン侯爵は二人の婚約に乗り気のようだが、父上は許さないだろう」 

 オリビア様が病弱を装い、婚約者のいる男性を誘惑して奪ったことが、陛下は許せないようだ。

 「陛下が反対をなさっているから、オリビア様は大人しいのですね」

 前に殿下が、陛下は厳しい方だと仰っていた意味が分かった気がする。ケリーがしたことを考えると、陛下に許していただくのは難しそうだ。難しいからといって、諦めるつもりはないけれど。私は今まで、何もかもを諦めて来た。それは、私にはそうするしか道がなかったからだ。今思えば、臆病なだけだった。ケリーのことは、全力で守ってみせる。

 「レイチェル、陛下がお前に会いたいそうだ。オリビアがしたことを、謝りたいようなのだが」

 陛下とお会いするのは、もっと先のことだと思っていた。全てが明らかになってから、お会いしたいと思っていたけれど、陛下の申し出を断るわけにはいかない。

 「分かりました」

 初めて私は、本当の父に会うことになる。
 どんな方なのか、想像しなかったわけじゃないけれど、考える度に今の父の顔がチラつく。蔑むような父の視線が、脳裏に焼き付いて離れない。陛下にお会いすれば、父の存在は消えてくれるのだろうか。

 週末、殿下と一緒に王宮へと向かった。

 「どうして、ディアム様まで馬車に乗っているのですか?」 

 迎えの馬車に、なぜかディアム様まで乗り込んで来た。

 「俺は、レイチェルの護衛だ」

 「今日は、殿下がいてくださいます。せっかくのお休みなのですから、ディアム様はゆっくりなさったらいいのに」

 「関係ない。俺は何時でも何処でも何があっても、レイチェルを守ると決めている。異論は認めない」

 「ディアムは、言い出したらきかない。諦めろ」

 殿下が何も言わなかったのは、ディアム様の性格を良く知っていたからのようだ。
 本当はディアム様が一緒に来てくれて、感謝している。陛下にお会いすることを考えていたら、緊張でどうにかなってしまいそうだった。なぜだか分からないけれど、ディアム様がいてくれると気持ちが落ち着く。

 王宮に到着すると、謁見の間ではなく応接室へと案内された。

 しばらくすると応接室の扉が開かれ、殿下に良く似た男性が姿を現した。この方が、国王陛下のようだ。

 「父上、レイチェル・クライド嬢をお連れしました」

 「お初にお目にかかります、レイチェル・クライドと申します」

 「……本当に、そっくりなのだな。かけなさい」

 陛下も、私が王妃様に似ていると思ったようだ。今の言い方は、噂を知っていたのだろう。
 陛下が腰を下ろした後、言われた通り私達もイスに座る。

 「それで? なぜディアムがこの場にいるのだ?」

 そういえば、馬車からの流れで気にしていなかったけれど、この場にディアム様がいるのはおかしい。

 「私は、レイチェルを愛しています! 片時も離れたくないのです」

 予想もしていなかった言葉に、私達は口を開けたままポカンとしてしまう。
 陛下の前で、何てことを言っているの!?

 「……そうか、気持ちは分かった。だが、ここから出ていてくれ」

 陛下が右手を上げると、ディアム様は護衛兵に両腕を掴まれてそのまま部屋の外に引きずられて行く。

 「陛下~! これは、あんまりですよ~!」

 そのまま、部屋の扉は閉められた。

 「全く、あやつは……。昔から、ちっとも変わっておらぬ。だが、そなたは素晴らしい男に愛されているようだな」

 陛下は、とても悲しげな瞳で微笑んだ。
 陛下の心のうちは分からないけれど、私を見る目は殿下と同じような気がした。

 「オリビアのことは、全て聞いた。そなたには、本当に申し訳ないことをしてしまった」

 王妃様もそうだったけれど、陛下まで伯爵令嬢の私に頭を下げた。正直、複雑な気持ちだ。私の本当の両親は、オリビア様の為に頭を下げたのだから。けれど、この国の民としては、お二人がこの国の国王様と王妃様で本当に良かったと思う。

 「陛下、おやめ下さい! 私は、これで良かったのだと思っております」

 「ああ、ディアムのことか」

 「……え? ち、違います!」 

 「違うのか? ディアムが気の毒だな」

 ディアム様のことは、素敵な方だと思う。けれど私はまだ、誰かを好きになるのが怖い。

 陛下と、お会い出来て良かった。
 怖い方なのかと思っていたけれど、とてもお優しい方だった。もしかしたら、ディアム様はわざとあんなことを言ったのかもしれない。


 ガードナーさんの行方が掴めないまま、殿下が学園を卒業してしまった。春から入学する殿下のご友人が、これからはデイジーの護衛をしてくれるようだ。
 何も進展がないまま時だけが過ぎていき、私達は二年生になった。

 「お久しぶりね、お姉様」

 新学期の前日、キャロルが女子寮へと越してきた。
 ガードナーさんに関して進展はなかったけれど、オリビア様が大人しくなりエリック様も私に絡んで来なくなっていたから、平穏な学園生活を送れていた。それなのにまた、嵐がやって来てしまったようだ。

しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...