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34、愛する家族
しおりを挟むお父様と約束した通り、週末に王宮へとやって来た。
「レイチェル! よく来てくれた! どれほど、待ちわびていたか!」
「レイチェル、会いたかったわ! 私も授業参観に行きたかったのに、陛下ったらお一人で行かれたのよ。酷いと思わない?」
いつもは応接室でお会いしていたけれど、今日は王宮の中庭で堂々と家族でお茶が出来るようになった。
お父様もお母様も、素直に愛情表現をしてくれる。以前の国王陛下と王妃様とは印象がだいぶ違うけれど、愛情を知らずに育って来た私には幸せな時間だ。けれどそれはそれ、これはこれ。また学園に来られたら、迷惑極まりない。
「お父様、二度とあのようなことはなさらないでください。お母様も、そのような考え方では困ります! お父様をお止めしてください。お父様がいらしたあの日、授業どころではありませんでした。反省してください」
「……すまなかった」「ごめんなさい……」
二人は、思いっきり落ち込んでしまった。
「まあまあ、父上と母親を許してやってくれ。失った十七年の時を、取り戻したいんだ」
お兄様が、一番大人ではないかと思えたけれど……
「そういえば、ディアムのやつは私の大切な妹に手を出していないだろうな!? 今までは仕方なかったが、これからは目を光らせておかなくては」
そうでもなかったようだ。
「ディアムなら、レイチェルを大事にしてくれるだろう? 私は、賛成だ」
「そうね……ディアムは、レイチェルをずっと守って来てくれたのだし、私も賛成よ」
いつの間にか、ディアム様との話になっている。
「それは光栄です!」
そしてなぜか、ディアム様が王宮の中庭に姿を現した。
「どうしてここに?」
今日はお兄様が寮まで迎えに来てくれたから、ディアム様にはゆっくりしてもらおうと思っていた。
「約束、もう忘れたのか? どんな時も、俺はレイチェルを守り抜く。ずっとそばにいる」
約束は覚えているけれど、そんなにはっきりと家族の前で言わなくても……
「そんな約束をしていたのか!? まだ、レイチェルを嫁にはやらんぞ!」
嫁!?
「ディアム~!? おまえ、レイチェルに近付きすぎだ!」
「まあ! レイチェルが幸せなら、私は嬉しいわ」
なぜか、ディアム様との結婚の話になってしまった。まだ結婚なんて考えられないけれど、ディアム様と結婚したら幸せだろうなと思った。
「クライド伯爵夫妻の、刑が確定した。王女と自分の娘の入れ替え、王女への体罰、王家を欺いた罪、ガードナーとケリーの殺人未遂。どれをとっても、罪は重い。何より、反省もしていない。極刑に処するのが、妥当だろうという結論に至った。公開処刑を望む声も多かったのだが、ケリーの件を考えると、薬殺刑が妥当だろう」
真実を知るまでは、両親だと思っていたのだから正直複雑な気持ちだ。けれど真実を明らかにすると決めた時から、こうなることは予想していた。それに、ガードナーさんとケリーを狙うように仕向けたのは私自身だ。後悔はしていない。私は守りたいものの為なら、悪魔にだってなれる。
「オリビア様と、キャロルはどうなるのですか?」
「オリビアとキャロルは、修道院に行くことになった」
オリビア様は自分が王女ではないと知っていたけれど、それは最近のことだ。それに、反省を口にしているとのことだった。彼女は自分が王女でなかったことよりも、エリック様に捨てられたことにショックを受けていて、今は別人のように大人しくなっているそうだ。
キャロルは私を階段から突き落とそうとしたけれど、未遂に終わった。反省もしていて、更生の余地はあると判断された。
二人が送られる修道院は国の国境付近にあり、隣国との争いがあとをたたない。国境守備兵は毎日のように怪我を負い、修道院では怪我人を受け入れて治療しているそうだ。
『誰かの役に立ちたい』というのが、二人の希望だった。だから、その修道院が選ばれたということのようだ。
ガードナーさんは、私達が入れ替えられた時から真実を知っていて、ホクロのことも黙ってはいたが、全て自白したことを考慮し、むち打ち二十回の刑に処されることになった。
クライド伯爵夫人に雇われた男達は、他の余罪も明らかになり、極刑に処される。
商人は元々あくどい商売をしており、別件の罪が明らかになり、私財を全て没収された。
何だか、長い夢を見ていたような気がする。
全てを忘れられはしないけれど、今は大切な人が周りにいてくれる。生きることが辛いと思っていた昔とは、まるで違う。
その日は王宮に泊まり、翌日に寮に戻った。なぜかディアム様も、王宮に泊まっていたけれど……
驚いたのは、私の部屋がすでに用意されていたことだ。あまりにも素敵な部屋で、王女様にでもなった気分だった。なんて、実際王女になっているのだけれど。
「今日からレイチェル様の侍女をさせていただく、マリーです。よろしくお願いします」
ケリー……いいえ、マリーも戻って来てくれて、いつもの学園生活に戻る。
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