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愛する人の為に
しおりを挟むウォルシュ様に嫁いで、三ヶ月が経ちました。日に日に強くなる、爆発しそうな気持ちを隠しながら、ウォルシュ様の理想の妻を演じています。
週に一度の子を作る時間以外は自由時間で、パーティーやお茶会がなければ、ほとんどやる事がありません。
そこで、気持ちがバレずにウォルシュ様の為に何か出来ないかを考え、料理をする事を思い付きました。正直、料理が得意かと聞かれれば、得意ではありません。少しでも、ウォルシュ様をお支えしたい……そう思ったのです。
「奥様は健気ですね。旦那様を、本当に愛していらっしゃるのが伝わって来ます。」
料理を教えてくれている料理長が、いきなりそんなことを言ってきた。
「違いますよ。私はただ、する事がなかったので、料理に興味を持っただけです。」
使用人に気づかれてしまうようではダメですね。もっと気をつけなくては……
ウォルシュ様は女性に興味がないと、皆が思っています。私もそのうちの一人です。
ウォルシュ様はとても美しい容姿で、クーパー侯爵家の跡取り。そんなウォルシュ様には、ものすごい数の縁談が来ていました。その全てを断り、寄ってくる令嬢達にも冷たくする彼は、女性嫌いなのでは? と噂されていたのです。
よく考えたら、そんなウォルシュ様が、私を好きになるはずなんてなかったのに、求婚された時に舞い上がった事が恥ずかしい。
「奥様は器用ですね。繊細な飾り包丁がとても素晴らしい。」
「ありがとう。昔から細かい事が得意なの。」
ウォルシュ様、喜んでくれるかな?
夕食の時間ぴったりに、ウォルシュ様は席に着く。私も席に座ると、料理が運ばれて来る。
「今日のお料理は、奥様がお作りになりました。」
「シエルが?」
「はい。自由な時間を沢山頂いているので、料理にも挑戦してみようと思いまして。」
綺麗に飾り付けされた料理、味だけでなく見た目も美味しい。
「さすがだな。君は昔から、細かい事が得意だった。」
覚えて……いてくれたのですか?
「うん、上手い。まさか、シエルの手料理を食べられるとは思ってもみなかった。」
嬉しい……
「沢山召し上がってください。」
こんな風に普通に会話が出来たのは、何年ぶりでしょう。私が作った料理を、美味しいと言ってくださった事も嬉しいですが、幼い頃の事を覚えていてくださったことも、会話が出来たこともすごく嬉しくて……ずっとこんな日が続いて欲しいと思いました。
「明日はハリジール侯爵の邸でお茶会が開かれるのだが、行きたくないのなら無理はしなくていい。」
ウォルシュ様も、お父様達と同じで、私がキール様を好きだと思っているようです。誤解なのですが、誤解をとかない方が気持ちを隠すのに都合がいいので、このままにしておきます。
「大丈夫です。キール様にお会いするのは何年ぶりでしょうか。3人揃うのは久しぶりですね。」
「ああ……そうだな。」
この時、なぜかウォルシュ様が不機嫌になったような気がしました。
ウォルシュ様は、キール様がお嫌いなのでしょうか?
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