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愛する人へ
しおりを挟むシエルが邸を出て行き、ウォルシュは手紙に気付いた。封を切り読み始める……
『ウォルシュ様へ
こんな別れ方になってしまい、申し訳ありませんでした。出来ればずっと、あなたのおそばに居たかったけれど、きっともう嫌われてしまいましたね。
ウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われた時、本当に嬉しかった。だって、ずっと好きだったから。でもウォルシュ様が求めていたのは、愛のない結婚……自分の気持ちを知られたら、ウォルシュ様と結婚出来なくなると思って、ずっと愛していないフリをして来ました。騙していて、本当にすみません。
たとえウォルシュ様に愛されなくても、おそばにいられて幸せでした。ウォルシュ様の幸せを、願っています。……本当に、大好きでした。さようなら。』
「シエル……」
ウォルシュは手紙を握りしめ、邸を飛び出した。
「はぁ……実家に帰ることも出来なかった。」
シエルは邸を出た後、丘の上に登り、ずっと空を見ていた。
実家に帰ったら、事情を説明しないといけなくなる。お父様に、なんて言えばいいのでしょう。
それに、実家に帰ってしまったら、ウォルシュ様との過ごして来た時間が、全て消えてしまいそうで……
もっと一緒に居たかった……ウォルシュ様のそばにずっと居たかった……
「うぅ……ヒック……ッ……ぅ……」
「もう泣くな。」
この声……
振り返ると、ウォルシュ様が立っていました。
「どう……して……?」
どうしてウォルシュ様がここに? 私は夢を見ているのでしょうか?
「シエルがどこにいても、必ず俺が見つけるって言っただろ?」
その言葉……あの日、言ってくれた言葉……
「本当にすまない。俺はずっと、勘違いをしていた。君はキールが好きなのだと思っていたんだ。キールが婚約をしても、キールが忘れられないから、縁談を断り続けていると思って、愛のない結婚なら、君が受け入れてくれるんじゃないかと……」
「私がキール様を好きだと思っていたから、愛のない結婚をしようと言ったのですか? でも、どうして?」
「ずっと君が好きだったからだ!」
「……え!? だって、ウォルシュ様は私になんて興味なくて、女性に興味なくて、愛なんて必要なくて、私、私、」
「少し黙れ。」
「……ん……っ……」
ウォルシュ様はいきなり私に口付けし、唇を塞いだ。
そしてそっと唇を離すと、
「愛してる。やっと、伝える事が出来た。」
そう言って、きつくきつく抱きしめた。
私達はお互いに、思い違いをしていたようです。
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