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しつこい愛人

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 グリーン侯爵邸を出て、馬車に揺られながら今日の事を考えた。
 親友だと思っていたマリーに裏切られ……いいえ、マリーは最初から私を騙していたのでしょう。そんな事も知らずに、ライナス様が抱いてくれないと相談してしまった。
 
 「結婚しよう。」

 「はい……………………へ!?」

 思わず返事しちゃったけど、いきなりとんでもない事を仰いましたよね??

 「あの、えっと、な、な、いきなり何を!?」

 「動揺し過ぎ。」

 「いきなりそんな事言われたら、動揺しますよ!! 」

 「俺とじゃ嫌?」

 な、なんですか、その子犬みたいな目は!!
 可愛い……可愛すぎる……じゃなくて!!

 「嫌なわけないじゃありませんか。ですが、私は一度離婚していますし。」

 「その事なんだけど、これから役所に行こう。君達は白い結婚なのだから、離婚ではなく婚姻無効に出来る。あ、それと、テイラー侯爵からは、俺達の結婚の許しをもらったよ。」

 「お父様が許したのですか!? やる事が早くないですか!?」

 「早くない。むしろ、遅かったから君が結婚してしまったんじゃないか。」

 ロディアル様の目が、急に悲しみに包まれました。

 「3年前、君にプロポーズしようと、一度帰って来たんだ。だけど君にはすでに婚約者がいて、もうすぐ結婚する事を知った。俺は何も出来ずに、そのまま留学先へと戻った。もう、あんな思いはしたくないし、君を他の誰かにとられたくない!」

 まさかロディアル様が、ずっと私を想っていてくださっていたなんて……

 「分かりました。私、ロディアル様と結婚します!」

 「しゃーーーーーーーーッ!!!」

 相当嬉しかったのか、ロディアルはものすごく大きな声で、喜びの雄叫びをあげた。

 そのまま役所へ行き、婚姻無効の手続きを行うと、すでに役所の人達にまで白い結婚であった事が知られており、すぐに申請は受理された。

 「すぐに受理してくれたのは嬉しいですけど、こんなところにまで広まっているなんて、何だか複雑です。」

 噂を広めたのはマリーですね……

 「それにしても、男を見る目がないな。」

 「ごもっとも。」

 真面目で誠実で、何より私を愛してくれているライナス様とだったら、幸せな家庭を築けると思っていました。まさか、あんなに愛人を作るような最低な方だったなんて……

 もうすぐ邸に到着するというところで、女性の怒鳴り声が聞こえて来ました。

 「さっさと中に入れなさいよ!! ライナス様!! 中にいるのでしょう!? 私です! ロクサーヌです!!」

 門番が女性を必死に止めています。
 あれは、先日押しかけて来たライナス様の愛人の1人“名前なんてどうだっていい”さん。

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