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守りたい存在
しおりを挟むゆっくり目を開けたマーサの顔は、すっかり生気が戻っていた。
「…なんだか夢の中にいるみたい。もうどこも苦しくない!なんだったら走り回りたいくらいよ!」
「マーサ……うぅ……」
お母さんはマーサを抱きしめ涙を流した。
「リーア、ありがとう!本当にありがとう!」
「落ちこぼれな妹だけど、少しは役に立てたかな?えへへ。」
リーアは恥ずかしそうに笑った。
「あなたは落ちこぼれなんかじゃないわ。こんなにすごい力があるなんて…本当にすごい!私のせいで、やりたくない事をさせてしまってごめんなさい。」
「それは違うよ。お姉ちゃんに甘えてばかりで、自分の事しか考えてなかった。でもこれからは、彼の為に…この国の為に生きようと思う。」
数日前に、リーアはホーク王子と食事をした。ホーク王子が連れて行ってくれたのは高級なお店……ではなく、小さな食堂だった。
「ここの料理は全部美味しいんだ!」
「パク……美味しい!」
満面の笑みで料理を頬張るリーア。
「その笑顔……やっぱり君は、あの頃と変わっていないな。」
「幼い頃一度会っただけなのに、そんなこと覚えていてくださったんですか?」
「忘れるはずがない。あの時、初めて力を使ったと言っていた……自分に力がある事を知らずに、君は見ず知らずの俺を助けに来てくれた。そんな君に憧れ、君のようになりたいと思ったんだ。」
王子様が私のように?
「君にもう一度会うことが出来たことを感謝している。」
ホーク王子……私はそんなに立派な人間ではありません。力を持ちながら、ずっと隠して来た。もしかしたら今までに、私にも出来る事があったのかもしれない。
食事を終えホーク王子と街を歩いていると、皆がホーク王子に話しかけたりお礼を言ったりしていた。ホーク王子が国民をどれほど大切にしてきたか、今日一日で嫌という程わかった。
そんなホーク王子がどうして追放されなければいけないのだろう……。
変わっていないのはホーク王子の方です。私のようになったのではありません。あんなに幼い王子が王妃様のために、命をかけて薬草を取りに来ていたあの頃のまま、心の優しい王子様……。
私はこの方を守りたい……心からそう思った。
「その顔……大切な人を見つけたのね?もしかして、幼い頃に出会った泣き虫君かしら?」
「お姉ちゃん、そんな話覚えていたの!?」
「忘れるはずないわ。リーアが男の子の話をしたのはあれが最初で最後だったもの。ずっと好きだったんでしょ?」
お姉ちゃんの言う通り……ホーク王子が初恋で、あの時からずっと好きだった。
「リーア!帰ってきてたのか!」
お父さんがすごい勢いでリーアを抱きしめる!
「……お父さん、苦しい。」
「す、すまない!久しぶりに愛する娘に会えてつい……。」
申し訳なさそうにリーアから離れた。
「いきなり帰ってくるなんて、何かあったのか!?辛くなったのか!?」
お父さんは昔から心配性だなあ。
「お父さん、お姉ちゃんを見て?」
「ん?マーサをか?」
リーアに言われた通り、マーサを見る。
「久しぶりに妹に会えたからか、顔色が随分良くなったな!」
鈍い……
「お父さん、リーアのおかげで病気がなくなったの。」
「!!!!!」
お父さんはあまりの嬉しさに言葉も出ず、しばらく涙を流し続けていた。
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