〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな

文字の大きさ
14 / 14

14、甘い生活はまだまだのようです

しおりを挟む


 私達は、正式に婚約することになった。
 好きな人との婚約……嬉しくないはずがない。

 「結局、こうなったか。まあ、最初からこうなる気はしていたけどね」

 オスカー様は、不機嫌な態度を取りながらも、私達を祝福してくれている。

 「オスカー様には、これから山ほどやらなければならないことがあります。女性にうつつを抜かしている場合ではありません」

 真面目な顔でそう言うディーン様を、呆れたように見つめるオスカー様。

 「お前は、私の側近だということを忘れていないか? 私が忙しいということは、お前も忙しい! よって、マディソンとイチャつくのは禁止だ!」

 「な!? それは……」

 自分も忙しくなることを考えていなかったのか、言葉につまっている。たまに天然なところも、彼の魅力の一つだ。それにしてもその反応……イチャつくつもりだったのだろうか……?

 
 取り調べを受けていたオルガ様とスコフィールド伯爵は、ベントン様の命令でオスカー様を亡きものにしようと魔物を操ったことを認めた。オルガ様は、すでに全身を呪いに侵食されていて、今更呪いを解いたところで、命を救うことは出来ない。本来なら実行犯のオルガ様は、王族の命を狙った罪で処刑となるのだが、罪を認め、関わった貴族の名を全て自供したことで、処刑は免れた。だが、オルガ様はあと数日の命だろう。彼は牢獄の中で、生涯を終えることを選んだ。
 スコフィールド伯爵は、今まで搾取して来た領民達に税を返し、子爵へと降格となった。残った財産を孤児院に寄付し、これから毎年孤児院に寄付することを約束したことで、スコフィールド子爵の呪いを解くことになった。
 セイバン公爵は、最後まで罪を認めなかった。認めなかったけれど、罪は明らかだった。公爵は、数日後、処刑されることになる。
 ベントン様は、兄の命を狙い、国民を苦しめて来た罪が明らかになり、国外追放となった。聖女は貴重……つまり、私が解かない限りベントン様も呪われたまま。それでもベントン様は、最後までオスカー様に謝ることはなく、救いを求めては来なかった。
 他の貴族達は、皆降格になり、財産を没収された。スコフィールド子爵とは違い、自らの行いを反省することがなく、「なぜ我らがこんなことに!」と、自分のことしか考えていない貴族達を、呪いから解放してあげるつもりはない。
 ベントン様も、貴族達も、数年の命だ。
 何故か、ロキシー様まで呪われていた。彼女は、オスカー様の件には関わっていない。きっと、私が話したことが原因で、笛を壊した時にオルガ様が恨みを持っていたからだろう。男性を次々に騙してはいたけれど、騙される方も下心があった。死ななければならないほどの罪ではない……そう思った私は、彼女に「呪いを解きましょうか?」と声をかけたけれど、「あなたのせいで、公爵夫人になりそこねたのよ!? あなたの助けなんかいらない!」と、拒絶されてしまった。

 
 「いつも、すまないね」

 スコフィールド子爵は、一ヶ月に一度、治療を受けるために邸へとやって来る。以前とは別人のようになった子爵は、最近は慈善活動を生き甲斐にしている。家族は誰一人、子爵の行いを良くは思っていないが、子爵に逆らったりはしないようだ。変われば変わるものだと、感心する。
 母とはあれから、一度も会っていない。訪ねてくることもなく、生きているのか死んでいるのかも分からない。
 オルガ様から、毎日のように謝罪の手紙が届いていた。私の嘘も分かった上で、これまでの行為を反省していると……その手紙が、昨日から届いていない。つまり、彼はもうこの世には……。


 「ディーン様、今日も遅くなるのですか?」

 解決してから、ディーン様は毎日忙しくしている。

 「すまない。ゆっくり話したいのだが、多くの貴族が降格となり、領地の問題に頭を抱えている」

 ディーン様に、気持ちをお伝えする時間さえない。婚約したのに、前よりも一緒に過ごす時間がなくなっていた。

 少し不貞腐れた顔をした私の頭を、ディーン様は優しくぽんぽんした。

 「時間は必ず作る。マディソンが不足していて、私が限界なんだ」

 顔を上げると、愛おしそうに私を見つめるディーン様の瞳に吸い込まれそうになる。
 そんな顔で甘い言葉を囁かれたら、蕩けそうになってしまう。意地悪な悪魔だった彼が、こんなにも愛しい存在になるなんて……。

 私はそのまま、ゆっくり目を閉じた……



                        
                                             END
しおりを挟む
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

蘭丸
2023.08.03 蘭丸

完結㊗お疲れ様でした👏👏👏👏👏

いつも作者様の作品、読ませて頂き
楽しみにチェックしています💕

今作の最終話は反省して変わる人と
全く反省せず変わらない人、責任転嫁する人と色々な人が溢れていて…
反省しない奴らはいずれ死が待って
いるという、ざまぁが😨✨

いつもありがとうございます💕

2023.08.03 藍川みいな

ありがとうございます( *ˊᵕˋ*)
いつも読んでくださり感謝感謝です♪
今回は、主人公と深く関わった二人だけが反省するという終わりになりました。

こちらこそ、いつもありがとうございますෆ˚*

解除
千夜歌
2023.08.02 千夜歌

素敵なお話ありがとうございました

父親が妻子を捨てた理由が知りたかったです。
新しい女が出来て捨てたのか、妻に辟易してマディソンは巻き込まれただけなのか。
前者なら、貴族同様平民にも腐った者が多いということになりますね。

王子は意外と本気でマディソンを口説いていたのですね(笑)
そんな王子に危惧してさらっと奪った公爵はやり手ですね。

王子が諦めた頃には甘々生活が送れるのでしょうか。

マディソンが幸せになれそうで良かったです。

2023.08.02 藍川みいな

読んでくださり、ありがとうございます♪
母があの性格だったこともあり、他の女性と逃げたけど上手くいかず、魔物に…といったところですね。

そうですね。王子はわりと本気でした笑
王子が早く愛する人を見つけてくれたら、二人の時間が持てるかもしれませんね。

解除
naimed
2023.08.02 naimed

完結おめでとうございます。ここ最近の御作は味のある悪役を書かれているようで。
悪役たるオルガ、彼も被害者だったのか。自分を利用した人間達を道連れにするなどなかなかハードな行動をとる。謝罪の手紙を渡し続けて来なくなった・・・の描写が切ない。
セイバン公爵やベントン殿下、スコフィールド子爵以外の貴族達とロキシー嬢は命よりもプライドを選んだか。この辺は後悔し命乞いをしまくるざまぁものにしては珍しい。
ディーンからの婚約を受けたマディソン、やはり最初の出会いが衝撃的だったか。オスカー殿下の嫌がらせが却って2人の仲を甘あまにしているのでわ??ww

2023.08.02 藍川みいな

ありがとうございます♪
そう言っていただけて嬉しいです。
道連れ呪いは、ベントンについた貴族を全員呪ったことでみんな罰を受け、それぞれの道を選びましたけど、反省したのは一人だけだったという…ちょっと悲しい結末ですね。
二人の甘々生活、オスカーが絶対邪魔してきますね笑

解除

あなたにおすすめの小説

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

王命により泣く泣く婚約させられましたが、婚約破棄されたので喜んで出て行きます。

十条沙良
恋愛
「僕にはお前など必要ない。婚約破棄だ。」と、怒鳴られました。国は滅んだ。

〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?

藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。 セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。 あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。 呪い…解いてもいいよね?

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」 「相手はフローラお姉様ですよね?」 「その通りだ」 「わかりました。今までありがとう」 公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。 アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。 三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。 信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった―― 閲覧注意

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。