〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな

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13、呪い

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 「そ、れは、どういうことだ……?」

 悲しげな表情が効いたのか、反論して来ない。死は真実だから、思い当たる節があるのかも。

 「やはり、ご存知なかったのですね。オルガ様には、呪いがかかっています。あの笛が、原因です。それを分かっていて、ベントン様は笛をオルガ様に……。セイバン公爵は、オルガ様を救おうとして私を婚約者にした。私には、呪いを解くことが出来ます。ですが、ベントン様はそれを恐れて、ロキシー様にオルガ様を誘惑させたのです! あの笛は、呪われたままのオルガ様にしか使えないのです!」

 半分位、作り話だ。
 ベントン様は、呪いのことには気付いていない。ロキシー様も、公爵令息のオルガ様を手に入れたかっただけだろう。けれど、それはオルガ様には分からない。もっともらしい嘘で、オルガ様を動揺させるのが目的だ。

 「俺は……死ぬのか? 皆が、俺を騙していたのか!? ……マディソン、これを見てくれ!」

 左腕の服の袖を上げ、見せて来た。
 オルガ様の腕は紫色に染まり、黒い鎖のような模様がある。確実に、呪いは全身を蝕んでいた。

 「こんなになってまで、ベントン様を信じるのですか?」

 少しだけ、胸が傷んだ。私は今、オルガ様を操ろうとしている。彼が、ベントン様を裏切るよう仕向けようとしている。酷い扱いを受けたとはいえ、オルガ様はもうすぐ死ぬ。そんな人に、私は酷いことをしている。けれど、やり切ってみせる。それが、この国の平和のためなのだから。

 「……許せない。俺を利用した、ベントンもロキシーも許せない!」

 オルガ様の、目の色が変わった。怒りに支配され、復讐を誓った目だ。

 「ベントン! ベントンは、どこにいるんだ!?」

 大声でベントン様の名を呼ぶオルガ様を、周りの招待客は何事かとざわつき始める。
 オルガ様の近くから離そうと、ローラさんが私の手を引く。
 ベントン様を見つけたオルガ様は、笛を目の前で真っ二つに割って見せた。そのままオルガ様は兵に取り押さえられたが、私には見えていた。笛から、禍々しい物が出てくるところが。その禍々しい物は、ベントン様、セイバン公爵、スコフィールド伯爵、そしてベントン様についている貴族達の身体へと入っていった。オスカー様を亡きものにするために、笛を使って魔物を操ることに関わった人達だろう。あの笛はその件に関わった者達全てを呪った。

 「なんだ……これは?」

 ベントン様は自分の手の甲を見て、驚いている様子。
 呪われた人達に痛みなどの自覚症状はないが、身体のあちこちにあざのような物が浮かび上がる。

 「その折れた笛を利用していた方々が、いっせいに呪われてしまったようです。元々、その笛自体呪われていたのですから、仕方がないのかもしれませんね」

 魔物を操ってまで、人を殺めようとした報いだ。

 「呪いだと!? 何をバカなことを言っているのだ!? 私は笛のことなど、何も知らん!!」

 ベントン様は、認める気がないようだ。認めなくても、構わない。

 「マディソン! 頼む! 助けてくれ! お前なら、これを治すことが出来るのだろう!?」

 私を役立たずだと言ったスコフィールド伯爵が、一番に助けを求めて来た。

 「スコフィールド伯爵、お久しぶりです。私は役立たずなので、伯爵を救うなんて出来ません。全てを話して、罪をお認めになるのでしたら、神が慈悲を与えてくださるかもしれませんね」

 伯爵は観念したのか、その場に崩れ落ちた。たとえ呪いを解いたとしても、オスカー様暗殺に関わった貴族達は、重い罪を問われるだろう。
 こんなことになるとは思っていなかったけれど、これで全て解決することになりそうだ。
 
 オルガ様は、王宮の取り調べ室へと連行された。全てを話すと決めたスコフィールド伯爵も、自ら王宮へと向かった。
 ベントン様とセイバン公爵は、話す気はないようで、そのまま会場から去って行った。けれど、二人が全てを話したら、罪があかるみになるだろう。

 「大変お騒がせして、申し訳ありません。私の婚約者を、ご紹介いたします。聖女マディソンです!」

 聖女と聞き、会場に残った貴族達はどよめく。さっきの私とスコフィールド伯爵との会話の意味が、ようやく理解出来たようだ。けれど、なぜディーン様は、私を婚約者だと紹介したのだろうか? 
 今回の件で、ベントン様にはもう何も出来ない。オスカー様も、私も、危険なことはなくなったのだから、婚約をする必要などない。

 「マディソン、こちらへ」

 手を差し出され、戸惑いながらその手を掴む。

 「あの……私達、婚約する必要があるのでしょうか?」

 「嫌か?」

 また、その聞き方……

 「嫌じゃないです」

 その言葉を聞いたディーン様は、優しく微笑み……

 「それなら、マディソンは私の妻になってもらう」

 そう、耳元で囁いた。

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