〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな

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12、パーティーは波乱の予感

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 母が邸を訪れてから一ヶ月後の今日、婚約発表パーティーが開かれる。

 「ディーン様、お話があるのですが」

 その前に私の考えを話そうと思い、執務室を訪れていた。

 「話とは?」

 「オルガ様についてです。私は、勘違いをしていたのかもしれません」

 この前、王宮でお会いした時に奇妙な感覚がした。笛のせいだと思っていたけれど、少し違っていた。そのことに気付けたのは、あの町でのことで力が強くなったからだろう。
 
 「オルガ様を治療していた時、魔物に負わされた傷が、呪いの原因だと思っていました。ですが、あの呪いはもしかしたら……」

 ディーン様は、私の話を黙って聞いていた。
 あの呪いは、傷ではなくあの笛が原因ではないかと思った。三年前から、オルガ様はあの笛を扱うために練習していた……それが原因で、彼は魔物に襲われたのではと考えた。ずっと気になっていた……オルガ様は、魔物に襲われて寝たきりになっていた。傷が治ったとはいえ、そんな目にあった彼を、重要な任務を任せることがおかしい。彼でなくては、ダメだったと考えるのが自然だ。つまり、あの笛を扱えるのは、笛に呪われているオルガ様だけということになる。
 私に治療させていたのだから、笛の呪いにはベントン様もオルガ様もセイバン公爵も気付いていないだろう。呪いが消えてしまったら、笛を扱うことが出来なくなる。あの笛は、オルガ様を選んだ。だから、あの使えそうもないオルガ様を、ベントン様は側近にした。これが、私の考えだ。

 「……筋は通っているな。私も、あのオルガを、ベントン様が側近にしたことが気になっていた」

 ディーン様は、私の話を信じてくれた。私のことを、対等だと思ってくれている。
 彼はしばらく考えた後、

 「私に、考えがある」

 そう言ってニヤリと笑った顔は、悪巧みをしているようだった。そんな悪いディーン様も、愛おしいと思っている私はかなり重症のようだ。

 パーティーが始まる時間が近付くと、次々にお客様がやってくる。
 
 「ダナドア公爵は、気でも触れたの? 平民と婚約するなんて、何を考えていらっしゃるのかしら」
 「お相手が平民だなんて、知らなかったわ。スコフィールド伯爵の養子だったと、聞いたけれど?」
 「伯爵に、追い出されたそうよ。そんな人と、公爵が婚約だなんて……」
 「ダナドア公爵なら、選びたい放題だろうに、なぜ平民なんかと婚約を?」

 会場内は、私の話で持ち切りになっていた。特に悪口が多い。平民と公爵の婚約なのだから、当たり前だ。何を言われても、私は気にしない。

 「気にすることはない。あの者たちの顔は覚えた。その発言、後で後悔するだろう」

 私は気にしていないのに、ディーン様が不機嫌になった。
 私が聖女だということは、知らない人が多い。そのことを知らせるのも、このパーティーの目的でもある。ディーン様が、オスカー様の側近だということを知らない貴族はいない。そのディーン様の婚約者が、聖女であることを皆に知ってもらう。オスカー様に敵対しようと考える者が、減るというわけだ。

 「オルガ様は、来ていますか?」

 ディーン様が招待客に挨拶をしている間、オルガ様と話すのが私の今日の役目だ。ディーン様は自分がやると言ったのだけれど、私がやると説得した。ディーン様は今日の主催者なのだから、目立ってしまう。その点、まだ私を知る人は少ない。私がやるのが、一番だ。

 「右の後ろの壁に近い場所に居ます。今は、スコフィールド伯爵と話しているようです」

 一人では心配だからと、ローラさんから離れないのを条件に、ディーン様は私に任せてくれた。

 「彼の位置を、把握していてください。一人になったら、行きましょう。それにしても、いつもの兵士の格好も素敵ですけど、ドレス姿も素敵ですね」

 怪しまれないように、ローラさんはドレスを着ている。

 「分かりました。
 マディソン様は、いつも褒めてくださいますね。素敵なのは、マディソン様です。お気付きになっていないのですか? 周りの方が、マディソン様をチラチラと見ています」

 ローラさんの方こそ、褒めるのが上手い。チラチラ見ているのは、ローラさんのことだと思う。

 「マディソン様、伯爵が離れました」

 私達は頷き合い、オルガ様の方へと歩き出す。彼に近付くと、私に気付いて睨み付けてきた。私に向ける顔は、いつもこの顔だ。彼ににっこりと微笑んで、話しかける。

 「オルガ様、お久しぶりです。王宮でお会いして以来ですね。婚約者の方は、ご一緒ではないのですか?」

 「お前の婚約発表らしいな。ベントン様に言われて、俺は仕方なく来たが、ロキシーを連れて来る理由はない」

 ロキシー様が、一緒ではないのは好都合だ。

 「そうですか、残念です。オルガ様を騙した理由を、お聞きしたかったのですが……」

 目を伏せながら、ものすごく悲しそうな表情をする。

 「これ以上、黙っていられません! オルガ様に、お話ししたいことがあります!」

 伏せていた目をうるませ、彼の目を見つめる。そして……
 
 「オルガ様の命は、もって後一ヶ月程です!」

 真実を伝える。

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