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愛人はクズでした

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 翌日になると、気持ちは少し落ちついていた。元々一度たりとも、旦那様からまともに顔さえ見られた事もなかったのだから、夫婦とさえいえない関係だった。


 レイチェルはミランダに、マリアナを邸に呼ぶように伝えた。

 「お会いになって、どうなさるおつもりですか!?まさか、殺す……」

 「そんなわけないでしょ!最後に、旦那様の妻として話があるだけよ。」

 「最後……ではもう、お心を決めたのですね。」

 今頃セイバンは会議に出ている。その間に、レイチェルはマリアナを呼び出した。


 「奥様から呼ばれるなんて、思ってもみませんでした。奥様は何も気にしない方だと聞いていたので。」

 気にしない……?旦那様は、私をそのように思っていたのですね。

 「今日来てもらったのは、あなたに伝えたい事があったからよ。」

 「伝えたい事とは?」

 「旦那様……セイバン様とあなたの間には、子供がいるわよね。邪魔なのは愛人のあなたではなく、私の方だった。だから、私はセイバン様と離縁するわ。」

 「な!?それはダメです!!」

 「……へ!?」

 あまりにもびっくりして、変な声が出てしまった。

 「どうして?私が居なくなれば、あなたも嬉しいでしょ?」

 「奥様は、奥様でいていただかなければ困ります!」

 全く理由が分からない。私がいなくなれば、セイバン様と結婚出来るのに……。

 「借金の事ならもう済んだ事だし、返してもらうつもりはないわ。お金はなくても、幸せになれる……」

 「冗談じゃないわ!借金がなくなっても貧乏侯爵じゃない!奥様の実家からの支援なしに、どうやって暮らせばいいの!?」

 あまりにも身勝手過ぎて、返す言葉も見つからない。

 要するに、お父様からお金を援助してもらう為に、私にはそのままお飾りの妻でいて欲しいと?

 怒りがふつふつと湧き上がってきたけど、冷静にならなきゃ!

 「あなたはどうしたいの?」

 「奥様はこのまま、セイバン様の妻でいてください。奥様みたいな方が、セイバン様のような素敵な方の妻だなんてありがたいでしょ?あ、欲をいえば、もっと大きな家に住みたいわ!セイバン様ったらケチで、あんな小さな家しかくれなかったんですもの!」

 え……?私は夫の愛人に、バカにされた上にお金の無心までされているの?

 「という事で、離縁はやめてくださいね!子供を迎えに行かないといけないので、そろそろ失礼します。」

 なんなのこれは!?あの二人は純愛じゃなかったの!?まさか旦那様も同じ考えなの!?

 「……レイチェル様、やっぱりあの女を殺……」

 「さないわよ!でも、考えは変わったわ。ただ身を引くのはやめて、私を金ヅルに選んだ事を後悔させてやる!」

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