〖完結〗私は誰からも愛されないと思っていました…

藍川みいな

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優しい旦那様


 ティナの父セルドアが亡くなったという報せを受けたボーメン男爵は、この事をティナにどう伝えようか悩んでいた。あまりにも残酷な最後……しかも、セルドアは妻と義理の娘を火だるまにし、殺したという……。
 こんなことを伝えたくはない……だが、この事は既にサチアーナ国中に知れ渡り、ティナが知るのも時間の問題だった。
 それならば自分で伝えようとボーメン男爵は思い、ティナを書斎へと呼んだ。

 「旦那様が改まってお話だなんで……何かあったのですか?」

 ボーメン男爵は辛い事や悲しい事、嬉しい事や楽しい事全てをティナと共有していきたいと思い、何かあればすぐに話し、何もなくても毎日ティナとの会話を楽しんでいた。
 そんなボーメン男爵がわざわざ書斎へと呼び出し、難しい顔をしているのだから、何かあったのだろうとティナが考えるのも無理はなかった。

 「ティナ、ここに座ってくれ。」

 ティナをソファーへと座らせ、その隣りに自分も腰掛け、ティナの手を握りながら話し始めた。

 「君のお父上が亡くなられたそうだ……」

 「お父様が……?」

 ボーメン男爵はセルドアがした事やロザリアとイライザの最後をゆっくりとティナを気づかいながら話した。

 お父様が隣国の王子様を怒らせ、国王様に国を追放された事は知っていました。
 あの邸の使用人から、仕事を失ったからボーメン男爵家の使用人にして欲しいとミルダに手紙が届いていたのです。
 旦那様のお話は、その事だと思っていたのですが……まさかお父様がお義母様とイライザを殺害し、亡くなってしまったなんて……。
 
 「旦那様……私はどうやら冷たい人間のようです。」

 「ティナ?」

 「お父様やお義母様やイライザが亡くなったと知っても、全然悲しくないのです。」

 お父様がした事はとても恐ろしい事……それなのに何故か他人事のようで。
 お父様が亡くなったと知っても、涙一つ出て来ません。

 「……君が冷たいなど、ありえない事だ。それほど……クーバー家で酷い扱いを受けて来たのだな。」

 「旦那様は、ご存知だったのですか?」

 お父様は私の事が恥ずかしいと思っていたから、私の話をする事はなかったはず……。
 私があの邸でどんな扱いを受けていたかを知っているのは、使用人くらいだと思っていました。

 「詳しく知っていたわけではないが、君の父上が娘の話をしない事に違和感を感じていた。それで調べたんだ。」

 それで旦那様は私の事を不憫に思って婚姻の申し込みをしてくださったの?

 「旦那様は私に同情してくださったのですね……」

 「それは違う。愛する人が酷い目にあっている事に耐えられなかった。こんなおじさんで、しかも男爵ごときの私が、君と結婚出来るとは思ってもいなかったが、考えるより先にクーバー公爵に君と結婚させて欲しいと頼んでいたんだ。」

 「愛する人……? 私を……愛していたのですか?」

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