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5、軟禁
しおりを挟む「殿下には、公務に関することについての権限がないと申し上げました」
淡々とそう告げるエリアーナに、ラクセルの怒りは更に強くなる。
「ふざけるな!! 私は、この国の王太子だぞ!?」
何も出来ないくせに、主張だけは一人前。
「それではお聞きしますが、この国の財源が不足していることはご存知ですか? 今年は雨があまり降らず、作物が育たなかったことは? 陛下が病にお倒れになったことで、今にも他国が攻め入ろうとしていることはご存知なのですか?」
ラクセルは、言葉を失った。
何も知らず、国の危機を感じて来なかったラクセルに、反論出来るはずもなかった。
「王太子妃ごときが、国を納めているつもりか? おまえにそのような権利などない!」
本性を現した公爵。カッとなりやすいのも、血筋のようだ。
「無礼ですぞ!!」
宰相は、エリアーナを守るように前に立つ。
「構いません。残念ながら、その権利が私にはあるのです。こちらをご覧ください」
エリアーナが見せた書類には、『国王マキエドが決断を下すことが困難な場合は、全権を王太子妃であるエリアーナに委ねることとする』と書かれていて、国王陛下の印が押されていた。つまりこれは、王命だということだ。
マキエドは、自分にもしものことがあった時のことを考え、エリアーナに王命を託していた。
「くっ……」
悔しそうに唇をかみしめる公爵。
王命があるのでは、どうすることも出来ない。
「納得いただけたようなので、これで失礼いたします」
悔しがる公爵、言葉を失ったまま呆然と立ち尽くすラクセル、まだ一人で話し続けるカナリアを置き去りにして、エリアーナと宰相は会議室を後にした。
執務室に向かって廊下を歩きながら、宰相が話し出す。
「あのような王命が出ていたことを、初めて知りました」
エリアーナは、誰にも話していなかった。
「……出来れば、誰にも知られないままにしておきたかったのです。公爵の言う通り、私は王太子妃にすぎません。そんな私が、全権を握っているなんておかしな話です」
国のことを想い、目を伏せて悲しげな表情を見せる。それでも自分がやらなければという思いと、自分が全てをやってしまうことでラクセルをダメにしているのではという思い。何が正解なのか、エリアーナは分からなくなっていた。
「深く考える必要はありません。エリアーナ様は、エリアーナ様のしたいようになさればよいのです」
宰相の言葉に、気持ちが少し楽になったように感じていた。
執務室に戻ると、エリアーナは過去の書類を見直し始めた。あまりにもしつこく執務室に来たがっていたドリクセン公爵の様子が気になっていたからだ。
「やっぱり……」
何かに気付いたエリアーナは、書類を大好きな小説に挟み、侍女のライラに隠すように命じた。
ライラが執務室から出て行った後すぐに、バンッと大きな音を立てて執務室のドアが開き……
「王太子妃エリアーナを、自室に軟禁せよ!!」
王太子ラクセルの声が、王宮に響き渡った。
「殿下!? 何を仰っているのですか!? つい先程、王命をご覧になったではありませんか!!」
ラクセルが連れて来た兵から、エリアーナを守ろうとする宰相。
「その王命は、偽物だ! 父上が、王太子妃などに全権を委ねるはずがない! 王命を騙った罪は重い!」
エリアーナは、マキエドにも王命のことを誰にも話さないで欲しいと頼んでいた。それは、使うつもりがなかったからだ。それが、仇となったようだ。
(私は、判断を誤ってしまった。違和感の正体を一刻も早く調べたくて、ドリクセン公爵と殿下をおいて出て来てしまった。きっと殿下は、公爵に操られているのだろう)
それが分かっていても、どうすることも出来ない。
エリアーナは大人しく兵に捕まり、自室に軟禁された。
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