〖完結〗拝啓、愛する婚約者様。私は陛下の側室になります。

藍川みいな

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王妃様

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 お茶会は、王妃様と私を含む側室3人、そして公爵夫人10人で行われるようです。
 王室のマナーでは、王妃様がおひとりで真ん中のテーブルに座り、その隣りにあるテーブルに側室が座るようです。
 私は迷わず、王妃様の座るテーブルの隣りのテーブルに座ろうとしました。

 「そこじゃないわ。あなたはあっち。」

 そう王妃様に言われ、指さされた所を見ると、今にも壊れそうなテーブルとイスが置いてありました。
 このお茶会は、交流の為だと聞いていたのですが、どうやら私を辱める為の会のようです。
 言われた通り、今にも壊れそうなイスにそっと腰かけると……

 ガタンッ!!

 「っ!!」

 イスが壊れ、私は尻もちをついてしまいました。
 その様子を見て、王妃様や側室だけでなく、公爵夫人達もクスクスと笑っている。

 「あら、イスが壊れてしまうなんて!
 ダイエットした方がよろしいんじゃないかしら? 太り過ぎは見苦しいだけじゃなく、体にも悪いわ。」

 どう見ても、体重のせいで壊れたんじゃないことは明らかなのに……

 「そうですね。ダイエットする事にします。
 私の体の事まで心配してくださるなんて、王妃様はなんてお優しい方なのでしょう!」

 私の事が嫌いなら、それでもかまわない。
 王妃様からしたら、私が陛下を独占していると思っているのだから、少しの嫌がらせで気が晴れるなら、我慢いたします。

 「違うイスを用意して、また壊されたら困るから、あなたはそのまま立っていてくれる?」

 立たされたまま、お茶会は始まりました。

 「そうそう、あなたの婚約者は亡くなったそうね。どんな気分? 
 亡くなった婚約者をすぐに忘れて、陛下の側室になった気分を聞いているの。」

 グリグリと傷を抉られているような気分です。
 他のことは我慢出来ますが、カイト様の事に触れて欲しくない。

 「…………」

 私は何も言えずに下を向いた。

 「黙っていないで、何か言ったら?」
 「そうよ! 王妃様が質問しているんだから、答えなさいよ!」
 
 王室といっても、女性というのは皆同じなのですね。王妃様は威厳があり、国民の母のような存在だと勝手に思っていました。
 少なくとも、亡くなった陛下のお母様はそんな方でした。

 「何とお答えすれば満足ですか?
 こんな、子供みたいな虐めをして楽しいですか? 皆さんは、大切な人を失った気持ちがお分かりになるのですか? 」

 反論するつもりなんてなかったのに、カイト様の事を言われて、自分を止めることが出来ませんでした。私も大人気ないですね……
 
 「な!? この私に、なんて口を聞くの!?
 側室ごときが、何様のつもり!?」
 
 王妃様はイスから立ち上がり、私の側までやってくると……

 「陛下に愛されているとでも、思っているの?
 お前は陛下の玩具よ。飽きたら捨てられる、使い捨ての玩具。」
 
 そう耳元で囁いた後、テーブルに飾ってあった花瓶を手に取って花を抜き……

 ジャーーーーーーーーッ!!

 私の頭から、花瓶の水をかけた。

 「お前は私の玩具でもあるわ。
 だから、私がお前に何をしても許される。
 何か言うことが、あるんじゃない?」

 ぽたぽたと、かけられた水が音を立てて髪の毛から滴り落ちる。
 
 「…………申し訳……ありませんでした……」

 学んだ王室のマナーなんて、何も必要なかった。

 「分かればいいのよ。
 では皆さん、お茶会の続きをしましょうか!」

 何事もなかったように、お茶会が続けられる。
 お茶会が終わるまで、私はずぶ濡れのまま立たされていた。
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